元勇者様は新人冒険者の武器作成を頼まれた
「専用の武器ね~」
「はい!ぜひユウさんにお願いしたいのです」
今、僕は1人の新人冒険者に武器の作成を依頼されている。
彼の名前はバルト。
少し前にリーザが冒険者ギルド前で助けた新人君の1人だ。
バルトはダイクの紹介で専用の武器を作りたいと依頼をしに来た。
ただ新人が専用の武器を持つのはお勧めできない…主に金銭的な問題で。
「上級者になる前に専用武器を作るのはやめた方が良いと思うよ」
「どうしてですか?」
「お金の問題や素材の問題が色々とあるんだ」
「お金と素材ですか…」
「うん…」
コレがバルトに伝えた内容だ。
お金の問題
1.製作費用
2.手入れの費用
素材
1.素材次第では自ら獲りに行く必要があるかも
2.修理の時にも珍しい素材が必要な場合も自ら獲りに行く必要が出るかも
「他にも色々とあるんだけどね」
「そうなんですか…」
「昔、知り合いにもいてね…名前は言えないけど」
その知り合いというのはダイク。
彼は新人に同じ道を歩ませる気なんだろうか?
「ダイクさんから聞きました」
「?」
「一流の冒険者になりたければ働く理由を作れと」
「はっ?」
それって会社で先輩社員が後輩にいうあのセリフでは?
『必死になって働けるように車を買え!』
日浦 悠の記憶では本当に買って後悔した後輩の記憶があるんだけど…
「バルト…それを本気にしたら後悔すると思うよ」
「ですが、俺もダイクさんみたいになりたいんです!」
ダイクが気の良い人物なのは認める。
でも尊敬できる人物なのか?
「ダイクの、どんな所を尊敬しているのか聞いていいかな?」
「はいっ」
バルトの目が凄くキラキラしている。
これは本気で尊敬しているな…
「俺が本格的に冒険者をやる前なんですが…」
「…」
「ダイクさんに助けてもらったことがあるんです」
「そう…」
このパターンは説得が不可能なパターンだ。
相手を神格化して盲信している状態。
ダイク…どれだけ罪作りなんだよ!
「それはモンスターに襲われてっていうことかな?」
「はいっダイクさんは…」
それから30分間、バルトの熱弁が始まった。
暇だった僕は適当に相槌を打ちながら夕飯について考えていた。
「だから俺はダイクさんを目指したいんです!」
「そう、わかったよ」
本当は話を聞いていなかったから何も分からないんだけどね。
「ところで武器についてなんだけど…」
「はいっ」
「何でダイクは僕にバルトの武器を作らせようと紹介したか分かるかな?」
「ええ、ユウさんの腕が良いからだそうです」
(妥当な説明かな?)
「それと…」
「それと?」
「弟子のユウさんなら俺の戦い方も分かるだろうって…」
「……………………」
「ユウ…さん?」
「なんでもないよ」
僕は平静を演じながら思った。
絶対にバルト以外にも弟子だって嘘を吹き込んでいるな。
ダイク…ちゃんと覚えておくよ。
「バルトの武器なんだけど…」
「はい」
「市販品を加工する形をとろうと思う」
「市販品ですか?」
「これは中級者に多い方法でね…」
これは市販されている剣に術式を込めたり特別な加工を施す方法。
短所は専用の武器よりも品質が落ちること。
でも手入れの費用や加工費用などが少なくて済むという長所がある。
だから値段や性能のバランスから中級者の冒険者が好む。
「そうですか…聞いたことがあります」
「折角の報酬が武器に全部消えるなんて馬鹿げてるんじゃないかな?」
「確かにそうですね」
「と、言っても高い買い物だしダイクと相談してみてはどうだろう?」
「ダイクさんとですか?」
「ダイクも色々な選択肢があることを教えたかったのかもしれないしね」
「そ、そうですよね」
こうしてバルトはダイクと相談して武器について決めることになった。
この後、僕はダイクを探しだし少し相談した。
特に、いつ僕が彼の弟子になったのかという点を。
………
……
…
数日後、僕の店にバルトとダイクが一緒に来た。
「それで決まった?」
「はい!市販の武器を加工する形でお願いします」
「そう、じゃあ準備をするよ」
僕は、そういった後にチラッとダイクを見た。
「俺も少し費用を出すぞ」
「え、ですが…」
「気にするな弟分への祝儀みたいなものだからな」
「分かった。じゃあ少し高価な加工方法を行うことにしようか?」
「ああ、それで頼む」
「ダイクさん。ありがとうございます!」
「…気にするな…ハッハッハッハ…」
ダイクと僕はバルトが来た日に話し合った。
特に、僕がいつ弟子になったのかという点を。
その結果、バルトの武器加工を援助するからとワンランク上の加工を頼まれた。
なんと弟分想いの男なんだろう!
彼は、これからも僕の財布を温め続けてくれるに違いない。




