元勇者様は無料で魔法を教える
警備兵は街を守っている。
街に入る人間をチェックしたり街のトラブルを解決したりする。
少し前にはヴェルタのことをお願いした…
ただスクエイドでは警備兵に特別なお願いをしている。
そのお願いというのは子どもたちに戦い方を教えること。
スクエイドの街は冒険者や観光客なども多い。
このため問題のある人間も入り込みやすく犯罪も起きやすい。
だから戦い方を教えて身を守るすべを覚えさせる。
護衛兵は国が採用した戦い方を使う。
このため体系的な戦闘術を子どもに教えることができるんだ。
今回、僕は警備兵が子どもを訓練している広場に向かっている最中だ。
広場に近づくと子どもたちが訓練で発する声が周囲に響いている。
僕が訓練している広場に向かっている理由は魔法を教えるためだ。
魔法は色々な利権がからんでくるから国の人間が教えると問題がある。
そんなわけでボランティアとして教える人間が必要となってくるんだ。
で、僕が広場に足を踏み入れると…警備兵達がガッカリした。
ガッカリした理由は分かっているんだ。そして納得もしている。
ガッカリとした理由はティナがこなかったからだ。
頻度は多くないけどティナは魔法を教えるため広場を訪れる。
ティナが来る日というのは訓練を受ける子ども(男子)が1.2倍に増える。
しかも訓練を見学する警備兵も多くなる。
気持ちは分かる。
…でも警備兵!お前らをティナに近づけさせる気はないぞ!!
と、いうことで僕はティナの代わりに魔法を教えによく来る。
「ティナちゃんじゃないのか…」
「残念ながらね」
あからさまな不満を言っているのは警備兵のカイル。
独身の21歳…ティナに近づけたくない警備兵の1人だ。
「魔法の的になってくれないかな?」
「なんで、そうなるんだ!」
「…訓練のため?」
「なんで疑問形なんだよ!」
「イラッとしたから なんて言えない」
「言っているだろ!」
不満があるようなのでカイルを的にするのはやめた。
チッ! ティナを狙う男は全て滅ぼしておきたいところだけど…
「変な事を考えていないか?」
「…」
「おいっ なに考えていたんだ…」
「魔法の練習を始めようか」
「おいっ」
僕はカイルを無視して魔法の訓練を始めた。
………
……
…
「「「ありがとうございましたー」」」
「お疲れ様」
魔法の訓練が終わると子どもたちの声が広場に響いた。
広場の片隅には焦げたカイルが休憩している。
手が滑った僕の雷魔法で焦げてしまったんだ。
まったく運のない男だ…
本当に運がない…
こうして今日も平穏な時が流れていった。
魔法を教えるボランティアは数人の持ち回り制です。
今回はティナの番をユウが変わりに来ました。




