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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
真章2 元勇者様の宅配便
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元勇者様の宅配便 6 訪問者2

無念。猫との会話だけになってしまいました。

広げられた素材の中に求め続けていた物があった。


それは『精霊の雫』


精霊の雫は霊薬エリクサーを作るのに必要な素材だ。

一見すると透明な水晶のようだが光の当て方次第では虹色の光に包まれる宝石。


10年以上探し続けたアイテムの一つで、すぐにでも欲しい所だ。

でも、こんなアイテムを持っている相手に油断するのは危険だろう。


目の前の猫は危険な交渉相手として扱った方が良さそうだ。


「確かに面白い物が揃っているね」


「お気に召したようだな」


「ただね君の目的が分からないんだよ」


「俺の目的?」


「君は自らを魔神と名乗った。そして高濃度の魔水晶を求めた」


「ああ。そうだな」


「魔神が魔水晶を手に入れるとどうなるんだい?」



これで答えてくれれば助かるんだけど。


「俺の延命が可能になる」


「延命?」


「ああ、俺は死にかけているのさ」


「…」


「正確には、この体から俺が消えてタダの猫になっちまう」


「猫にね~」


タマやんは普通の猫になるのか…その方が世の中的には良いんじゃないか?

でも精霊の雫だけは残していってくれないかな~。



「だがな勘違いすんじゃねーぞ。この体は奪ったのではなく元々俺の物だ」


「…」


「魔神の力を失くして少ない力で維持できる猫の形状をとったんだが…」


「…」


「力が流出し続けているせいで知性の部分が消えかけているのさ」


「じゃあ、魔水晶を使えば魔神の力を取り戻すわけだ」


「そうだが…腹の探り合いもまどろっこしくねえか?」


「?」


「俺をテイムして逆らえば死ぬようにすればいい」


テイムというのはモンスターを仲間にするスキルだ。

信頼関係で成り立つテイムもあるけど制約を与えて仲間にする場合もある。

それを求めるということは抜け道を持っている可能性があるけど…よい取引かもしれない。



「ずいぶん必死だね」


「お前以外にも依頼したが、役立たずばかりで寿命を無駄にしちまったんだよ」


「そう…」


「だから今まで普通の奴に出来なかったから、今回は普通ではない奴に依頼した」


「僕が普通ではない?」


僕の返答に一瞬タマやんの目が光った気がした。

そして目を見開き言う。


「お前は、おかしな魂を持っているうえに体もタダの人間の物ではない…」


「へー。分かるんだ」


「ああ、わかるぜ。ついでにお前が化け物だってこともな」


「じゃあ、無駄口は寿命を縮めるっていうのは分かっているかい?」


「それは、悪者のセリフだぜ。ユウ」


「善人を気取った覚えはないよ」


「よくいうな。クックック」


僕とタマやんはお互いの目を見て邪悪な笑みを向けあっている。

一瞬、猫と同じ立場で話す自分が可哀想に感じたのは内緒だ。



「まあ、俺も必死なわけだ。化け物に頼りたくなる程な」


「…」


「…」


「…わかった。魔水晶は作ってから渡す。そのときに君の宝を受け取りテイムも行う」


「ああ、それでいい」


「ただ明日は仕事があるから取引は少し先になる」


「…いいだろう。ただし遅くなりすぎれば取引は中止だ。俺の時間は長くないからな。」



『精霊の雫』を思わぬ所で手に入れるチャンスが訪れた。


リスクは未知数だけど取引を避けるわけにはいかないだろう。

十年以上求め続けた素材が、今後手に入る保証なんてないのだから。

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