元勇者様の宅配便 3 錬金術師の過去
僕達はグレーテさんのご好意で、拠点としてる建物に宿泊できることになった。
グレーテさんの父であるメイヴィスさんは、古代文明の研究をしている。
今回は洞窟の奥に古代文明があった痕跡があり、そこで調査をしているらしい。
でも当初の予想よりも調査対象が多くなり、調査期間を延長した。
このため追加で物資を必要として僕達に仕事が回って来たわけだ。
ところで貴重な物が多いはずの拠点の建物に、なんで僕達が泊まれたのか理由を並べると……
1.現在の拠点は助手の方達も洞窟の方に行っているため、部屋が余りっている状。
2.調査した資料や発掘した物などは、物資と交換という形で運ぶことになっている。
3.調査の道具なども全て洞窟に持って行っている。
これらの理由から拠点は人も少ない。
さらに貴重品も資料などが無いので宿泊可能だったんだ。
僕達が拠点に泊まった夜、僕の部屋がノックされた。
僕は部屋のドアを開けて2人を部屋に入れる。
部屋を訪れたのはクルスとリーザだ。
2人は僕がトワだということを伝えるために呼んだ。
「ユウ。話って何だ?」
「…ドキドキ」
「リーザ。ドキドキとか言うのは……やっぱりいいや」
「…ほ~う」
リーザに馬鹿っぽいというのは踏みとどまった。
その目付きは燃やす口実を期待していたな。
「話に入っていいかな?」
「ああ、大丈夫だ」
「…問題ない」
僕は2人にどう話すか考えていた。
もし『僕がトワだ~』といったら、リーザにからかわれるのは目に見えている。
証拠も無しに有名人だって名乗ってもね~~
だから証拠となるであろう物から見せることにした。
これでダメならグレーテさんに説得を頼もうと思う。
僕はアイテムBOXから紅い長刀『桜花』を取り出した。
桜花はトワの象徴といえる刀だ。
「これが何か分かるかな?」
「紅い刀だよな」
「…見事な逸品」
2人は一般的な回答をしてきた……リーザは微妙だけど。
「コイツの名前は『桜花』 ヒヒイロガネで作った長刀だよ」
「桜花か」
「桜花はトワが振るっていた刀なんだ」
「? トワ……! 勇者トワか!」
「…おお、金目の物」
リーザ、君は全く驚いていないだろ。
「……」
「…ユウの強さも関係しているの?」
リーザがまともな事を言った。
なんか感動したよ。
「…………」
「杖を向けるな!」
「…失礼な事を考えた」
いつも通りのリーザだった。
「トワというのは僕が使っていた昔の名前なんだよ」
「…ふ~ん」
「リーザ!驚けよ!!」
クルス。見事なツッコミだ。
それにしてもリーザの反応で、何を言うべきか分からなくなってきたな。
リーザの反応に合わせるべきか。
クルスの驚きに合わせるべきか。
「ユウ。リーザはいいから話を続けてくれ」
「あ、うん。でも、もういいかな?話すのが馬鹿らしくなってきたんだけど……」
「…頑張れ」
「「…………」」
僕とクルスは沈黙せざる得なかった。
僕達は『誰のせいだ!』と言うべきだったのだろうか?
色々と覚悟を決めていたのに残念なことになっている。
もう、本気で話を切り上げたい。
「もう、いいかな」
「…了解した」
僕はリーザを睨んだが、僕の目には涙が溜まっていたと思う。
「一つ聞いていいか?」
「…うん?」
クルスが打ちのめされている僕に質問してきた。
「何で俺らに話そうと思ったんだ」
「ああ、うん。冒険者として続けて行くには仲間が必要だからね。そして……」
「そこじゃない」
「?」
「どうして話すのが俺達だったんだっていう事を聞きたい」
「…………」
「…………」
「……さあ?」
そういえば、他の人に話すことは考えたこと無かったな。。
「お前!そんな重要なことを何も考えず話したのか?!」
「2人に話すことしか考えていなかった」
「他のヤツに話そうとか考えなかったのか?」
「話す相手がいないんだけど」
「…………」
「…………」
僕とクルスは目を合わせて沈黙していたが……
「……クッ」
「?」
「……クックック」
「???」
「……ハッハッハッハッハッハ」
「…クッ クルスが狂った」
「誰が狂っただ。笑いこらえながら憎まれ口を叩くな」
2人が笑いだした。なに、この疎外感?
「わりい、真剣に聞いていたのが馬鹿らしくなってな」
「…ユウ。寂しいヤツめ」
話そうと決めた僕の覚悟って何だったんだろう……
「まあ、これからもよろしく頼む。元勇者様」
「…これからも遊んでやろう」
「まぁ よろしく?」
………
……
…
「…ユウ」
「?」
部屋を出て行こうとするリーザは、思い出したかのように声をかけてきた。
「…ナイス トークだった」
なぜか僕の話を高く評価してくれた。




