元勇者様の宅配便 1
今日は冒険者として、砂漠の街エイシャールに来ている。
シェルファ王国は広大な土地を持っていて多種多様な地形がある。
今来ているエイシャールの街はシェルファ王国の南側にある街だ。
今回の仕事は物資の運搬と魔物退治。
依頼主はトワとしての僕を知っている人物だ。
「それにしても暑いな」
「…燃やしたい」
「なんで僕に杖を向けているんだ?」
僕達は強い日差しにヤケドしないように砂漠でおなじみの服装。
僕達は全身を布で覆い尽くした格好だ。
砂漠の日差しはヤケドするから大変だね。
トワとしての僕を知る人間の依頼に2人を連れてきたのには理由がある。
その理由というのは、トワとしての僕を教えてもいいと思ったからだ。
冒険者の仕事は1人で行動すればあっさり死んだりする。
だから1人で行動するわけには行かない。
かといってトワであることを隠して行動するのも大変だ。
仲間と活動をするのも秘密がばれないようにするため行動が制限されるからね。
だから冒険者として一緒に行動でき秘密も共有できる人間を作る必要があった。
「あそこだな」
「そうみたいだ」
僕とクルスは依頼主と待ち合わせ場所にした食堂を発見した。
「いらっしゃい!」
この店のカウンターから威勢の良い声が聞こえた。
「待ち合わせをしているんだが」
クルスが店員に伝える。
「じゃあ、中にどうぞ」
僕達は店の中に入る。
店に入った僕達は砂漠でおなじみの服装を外した。
そして下に着用していた、いつもの装備になる。
クルスとリーザには昔の知り合いだと言ってある。
だから依頼人には最初に僕話しかけることになった。
僕は依頼主の方へ歩いて行く。
「お久しぶりです。グレーテさん」
「えっ!!!! ト「ユウです」」
僕をトワと呼ぼうとしたグレーテさんの言葉に僕は今の名前を被せて隠した。
「今はユウ・ヒウラと名乗っていますので」
「そうなのですか。ではユウ様とお呼びしても」
「できれば、『さん』とかで……」
「いえ!ト、ユウ様をさん付けなど出来る筈がございません!」
「そ、そうですか」
僕はグレーテさんの迫力に押し切られる形で呼称が『ユウ様』になった。
クレスとリーザに僕がトワだと伝えるのは、もう少しタイミングを見てからにしようと思っている。
「今は冒険者と錬金術師をやっております」
「そうだったのですか。では、今回の依頼を受けてくださったのは?」
「ええ、僕……というよりも僕達になります」
「そうですか!良かった。ト……ユウ様なら安心できます」
「では、僕の仲間を紹介します」
「よろしくお願いいたします」
僕はクルスとリーザを呼んで2人をグレーテさんに紹介した。
そして依頼内容の確認に入った。
「お願いしたいのは父の元への物資運搬と魔物退治です」
「運ぶ物資は現物を見せて頂くとして魔物についてお伺いしたいのですが」
「はい」
僕達が倒すモンスターは洞窟の奥にいる。
そのどうくルハグレーテさんの父であるメイヴィスが調べている。
モンスター退治の依頼を出しら理由はモンスターに困っているから。
街の出て被害を出すうえ、メイヴィスも洞窟の奥に行けいそうだ。
このような事情から街とメイヴィスは共同で出資して魔物討伐を依頼したらしい。
魔物による被害が小さいため騎士団も動かない。
だけど最近は少しずつ被害が大きくなっている。
だから早めに退治しようというのが街の指針らしい。
その魔物は5mの体長を持つランダーという魔物。
ぶっちゃけ恐竜だ。
コイツは大きめの洞窟に住みついて他の魔物を追い出す。
そして追い出された魔物は洞窟内や洞窟周辺の生態系を変えてしまう。
そんな困った魔物でもある。
「魔物の方は分かりました。次に物資の方を見せて頂きたいのですが」
クルスはリーダーシップを発揮している。
このリーダーシップで先日は僕をいたぶろうとしやがった。
(ティナに女遊び疑惑を持たれたのは泣きかけたぞ)
なんかムカついてきた。
「ユウ、なにを怒っているんだ」
「女遊び疑惑について思い出していた」
「すまん」
「いや、もういい」
「そうか」
「ただ、レイナ周辺20mに2週間立ち入り禁止」
「ちょっ 待て」
「レイナに女遊び疑惑を吹き込まれるのとドッチがいい?」
「ぐっ 2週間立ち入り禁止で……」
冒険者には拠点を持っている冒険者もいる。
僕達も拠点持ちの冒険者だ。
拠点があっても依頼によっては数日間は拠点を離れるということが多い。
よって1週間では少ない。
でも3週間とかになるとチェックする僕が大変になる。
だから2週間にした。
ヌルすぎる処分だが仕方がない。
「ウフフフ」
「どうしました?」
「いえ、ユウ様がそのような事をおっしゃるのが意外で」
「へ~ 昔のユウって、どんな奴だったのですか?」
「それは……」
グレーテさんの笑いにクルスが喰いついた。
一方でクルスの質問に対して、グレーテさんは僕の方を見ながら困っている。
「それについては後で話そうと思っているから」
「ん……ああ?」
「…ユウの嬉し恥ずかしい過去が明らかに」
「リーザ。変な方向に話を持っていかないでね」
2人なら話しても大丈夫だろう。
もし2人が誰かに話したのなら、そのことを納得してもいいと感じていた。




