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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
第二章-B 元勇者様に迫る影
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元勇者様は取り調べられる

クラン 銀狼の牙。


比較的、若いクランだが多くの実績を出し注目を浴びているクランでもある。

だが、銀狼の牙でも様々な考えを持った者がおり、問題もときおり起きている。


そんな問題行動を起こした者は、クランによる調査の後に処遇が決まる。

これは銀狼の牙という組織を維持するためには当然ともいえる。

組織として当然のことだから、調査が行われても誰もが気にとめない。


しかし、その日の調査は違っていた。


調査対象者が銀狼の牙でトップと呼べる人物だったからだ。

そして調査内容も注目される理由となった。


調査内容は、『ユウ・ヒウラ 複特定多数 不純異性交遊疑惑』



僕は今、執務室にいる。

赤い絨毯じゅうたんに木でできた高そうな机やテーブル。

花を描いた大きな絵もあるな。


僕は部屋の真ん中でソファーに座り調査官と対峙している。

僕の左右にはクルスとヴェルタがいて、変な行動をとらないように見張っている。


そして調査官を行うのは…ティナだった。



そんな周囲を観察するユウの近くにいるクルスは、心の中で叫んでいた。


「(勘違いだった~~~~~~~!!!)」



~数日前~


クルスとヴェルタは酒場から、酔った勢いもあり勇んでユウの店まで行った。


だが、あることに気付く。


「なあ…」


「うん?」


「俺らで、ユウをなんとかできるのか?」


「……出来ると思うか?」


「…」


「…」


「人間には不可能…かもな」


「…」


自分達の身に惨劇が振りかかる前に気付けて良かった…

2人は、酔いが覚めて冷静な判断ができるようになったことに心底感謝した。


だが、このまま引くわけにはいかなかった。


クルスは愛するレイナがユウに奪われたために…

ヴェルタは金色の髪をした女性のために…


どちらも勘違いなのだが…



物理的な手段では倒すのが不可能なユウをどうするか?

クルスとヴェルタはその晩は寝ずに考え続けた。


その結果でたのが『ユウの取り調べ』


ユウが黒となることは無いだろう。

しかしユウがティナに特別な感情を持っているとクルスは知っていた。


だから複特定多数の女性と遊んでいるという疑惑をかける。

その疑惑を使いティナに問い詰めさせればユウを精神的になぶれると考えた。


そしてクランの調査を利用しようと言いだしたのはヴェルタだ。

正式な手続きの上での調査ならユウも拒めないと考えた。



この案が出てから、早速2人は行動を開始する。

嫉妬をエネルギー源とした2人の行動力は迅速そのものだった。


銀狼の牙内ではユウを妬む者もいる。

ユウの活躍は他国にも知れ渡るほどとなっている。

だが全ての人間が称賛しているわけではない。


当然、ユウに敵対感情を持つ、冒険者や職員達もいる。

2人は、そのような者達の取り込みから始めた。


次に他の冒険者やクラン職員に声をかけた。

ユウに好意的な人物の多くが面白がって賛同した。

彼等はユウに対するイタズラ程度に考えていたのだ。


「ユウ…愛されているな…」


ヴェルタのこの言葉にクルスは、ユウが可哀想になったが口にしなかった。



このあと調査の実行をクランのマスターであるモリアスに申請する。


モリアスは調査対象者がユウであることに顔を引きつらせていた。

更に調査内容が明らかな嫌がらせだと気付き言葉を失った。

だが賛同者が多いことなどを理由に調査指示は発動されることになる。


これまでの過程で、クルスのリーダーシップが無駄な方向に発揮されていた。



そしてユウの『複特定多数 不純異性交遊疑惑』の調査が始まった。


多くのクラン職員や冒険者達の働きがあり、多くの情報が集まり始めた。

ただユウがスクエドに来る前の情報は、全く手に入らずにいる。

このことに多くの者は不気味さを感じることとなる。


だが、調査をした者達からは…


「過去が、ここまで分からない人がいるなんて…」


「ユウを調べるのってマズいんじゃない?」


「……でも、ユウだぞ」


「…ええ、ユウなら大丈夫でしょ」


「そうだな。ユウなら大丈夫か」


ユウの人物像は良好な評価を受けているようだった。

このやり取りにクルスはなぜか目頭が熱くなってしまった。



多くの情報が集まるが、ユウに関する恋愛関係の情報は全く存在しない。

このことに2人には焦りを感じた。


「あいつって、恋人いない歴が年齢と…」


「それ以上言うな!」


「でもな街に来る前は分からんが…」


「あれだけ活躍して恋人を一度も作ったことがないわけないだろ!」


「そ、そうだな」


2人は後に引けない場所まで来ていた。



調査資料をまとめ終えるクルスとヴェルタ。

彼らは最後の仕上げを始めた。


調査がユウをイタぶる儀式となる仕上げ…

公式の場でティナにユウの疑惑を問い質させる(といたださせる)という仕上げを。


愛するティナに恋愛にだらしないと思われた宿敵(ユウ)が、どんな顔をするのか…

2人は邪悪な笑みを浮かべた。



ティナに話すため、ユウが冒険者の仕事でいないタイミングで2人はユウの店まで行った。

対応に現れたレイナにクルスは悲しい思いを抱いた。


(レイナ…ユウのことを…)


そこでクルスは我に返った。


(愛する女性が愛した男を罠に嵌めるようなことを俺はするのか!!)


嫉妬に狂い見えなくなっていた自分の誠実さ。

クルスはレイナに向けていた想いとともに思い出した。


「ヴェルタ、少しいいか?」


「なんだ」


「ちょっと2人にしてもらえるか?」


「まあ、いいが」


「わるい」


「イヤ。用がすんだら呼んでくれ」


ヴェルタは店の外に出て行った。

自分の色恋沙汰を他人に知られたくないという気持ちでの行動だった。


クルスはヴェルタが外に出て行ったことを確認すると、レイナに話し始める。


「レイナ…聞きたいことがあるんだ」


「はい?」


「レイナはユウのことを、どれだけ愛しているんだ?」


これはクルスなりの覚悟だった。

レイナの気持ちを聞いて身を引こう…

そして2人の幸せを願おうという決別の言葉だった。


「愛し?えっ? ? は… 何言っているんですか!」


「えっ」


「愛してって、男女の…ですよね」


「あ、ああ」


「それは無いです」


「で、でもな…」


「でも…なんですか!」


「2人が手を握りあって嬉しそうにしていたって…」


「誰が、そんなことを言ったんですか!」


「冒険者ギルド前で先日見たって…」


「私は、最近は冒険者ギルドの方には行っていません!」


「えっ…じゃあ、間違い…」


ここでクルスは、自分の間違いにやっと気付いた。


「師匠のことは技術とか凄いと思いますよ」


「あ、ああ」


「それに人間としても悪い人じゃないと思います」


「ああ」


「ですが、私にとって師匠とティナさんのやり取りを見るのは、最高の楽しみなんです!」


「はぁあ?」



「師匠もティナさんも子どもで、すれちがったり、勘違いされたり、2人の関係を見ているとゾクゾクするんです」


「そ、そうなのか…」


レイナは目を輝かせながらウットリしている。

その目には多少の狂気が見えるのは気のせいだろうか?


そんなレイナにクルスは心の中で、(やっぱり、無茶苦茶カワイイ…)


クルスは重傷だった。



「なあ、もういいか?」


「え、ああ」


すっかりヴェルタのことをクルスは忘れていた。

待ちくたびれたのかヴェルタは大きめの声で呼んでいた。


「レイナちゃんって言ったかな?」


「はい。」


「ティナさんと取り次いでもらえるかな?」


「少々お待ち下さい」



この時のやり取りをクルスは覚えていない。

ユウとレイナが師弟関係でしかないと知り、安堵感で頭が一杯になっていたから…



「初めまして、ティナ・ヒウラと申します」


ティナに見惚れるヴェルタに苦笑するクルス。

その後、ユウの複特定多数の不純異性交遊疑惑をティナに伝いえる。

すると義姉としてユウに問いただしたいとティナは申し出てくれた。


と、ここまでのいきさつをクルスは思い出していた。

視界にはソファーに座ったユウの姿が見える。


それにしてもレイナのことが間違いで良かった…?…!!


この瞬間、重要なことに気付いて青ざめることとなる。


勘違いだった~~~~~~~!!!


クルスはレイナのことが勘違いだと分かった。

その後は安堵しきって他のことが全て上の空だった。


そして今更、勘違いに気付き青ざめていた。

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