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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
第二章-B 元勇者様に迫る影
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元勇者様は喧嘩の仲裁が遅かった(表)

僕はクランと冒険者ギルドの仕事を二股している。

と、いうよりも冒険者ギルドとクランは、両方で働くと言うのが冒険者の基本。


今日は冒険者ギルド前に来ているけど…野次馬が沢山いる。


これってデジャヴュ?



野次馬を眺めていると、


「ユウさん!」


「喧嘩なら止めないよ!」



僕は反射的に答えていた。

やはり、僕の名前を呼んだのは冒険者ギルドの受付嬢で猫耳獣人のリスティ。


やっぱりデジャヴュ?


「ハァ~」


うわっ 今後の冒険者ギルド使用で嫌な雰囲気になりそうな溜息が出た…

やっぱりデジャヴュだった。


「でっ?今日のケンカ相手は?」


「止めて下さるんですか?」


「…」


「…」


僕が何も言わず見つめているとリスティは頬を赤らめて目をそらした。


「ケンカ相手は?」


「えっ スルーですか?」


「なんか疲れたから」


「私、人気あるんですよ」


「ケンカ相手は?」


「う~」


なんというか相手にするのが疲れた。


「すっごくキレイな女の子でした」


「キレイね~」


「ふふふ、興味あります?」


「こんなこと言っている間にケンカが終わるんじゃあ」


「あっ!」


やっと気付いたか。


「行ってくるよ…」


「ナンパしちゃあ、ダメですよ~~」


「ハァ~」


なぜだろう。凄く疲れた。

まだケンカの仲裁すらしていないのに。



僕が人混みをかき分けて行くと…

すでに倒れた男が5人。


そのうち一人は相手の前で尻餅をついている。


過去に見たヒャッハーな方たちだ。

で、ヒャッハーな方たちがケンカを売ったのは思いっきり僕の知り合いだ。


金色の髪は腰まで伸びており途中からウェーブがかかっている。

金色の瞳は純粋な光を宿し見ているだけで吸い込まれるかのようだ。

赤いフリルが多くついた服は彼女の美しさに可憐さを与えている。


彼女はエリー。

真祖のヴァンパイアだ。


いつの間にかうちの地下に住みついた少女で僕を(食料として)深く愛している。


よりによって真祖のヴァンパイアにケンカを売るとは…

ヒャッハーな方々は人?を見る目がないようだ。



エリーは左手に斧の刃を握っている。

その斧に一度視線を向けたあと、目の前で尻餅をついている男に目を向けた。


そして首をかたげるが関心を失ったのか手元の斧に再び目を向ける。

エリーは興味深そうに斧を眺めていた。

だが周囲に砕ける音が響いたと同時に斧の刃が砕けて足元に落ちる。


ゴオォン


足元に落ちた斧は重量感のある舗装された地面にヒビを入れる。


「ヒッッ」


エリーの目の前に座りこんでいた男は落ちた斧を見て声を引きつらせた。

男のあげた声が気になったのかエリーは瞳を座り込んだ男に向ける。


男は足を一生懸命に動かしその場を離れようとする。

だが腰が抜けているのか足をバタつかせることしかできない。


そんな男に関心を無くしたのか今度は自分の握りしめた左手に視線を移す。


そして握った左手を開くと、粉砕され砂となった斧の欠片が見えた。

開いた自分の手を見ながら首を再びかたげる。


そして重力に引かれた砂が手からこぼれ始めたのに気付く。

手元から零れ続ける金属を、美しい微笑みを浮かべながら眺め続けた。



…怖っ


エリーって、でたらめな強さだ。

斧を素手で握りつぶすって凄すぎるだろ。


周囲の野次馬を見ると…


恐怖している人間の目ではなく魅了されているっぽい目なんだけど…


目の前の光景が非現実的過ぎて恐怖に気付いていないのか?

それとも魅了の魔法でも掛けられたか?


「あっ ユウ~」


恐怖の権化…じゃなくてエリーさんがコチラに気付いた。

今の光景を見たあとだと名前を呼ばれただけで冷や汗が出るんだけど。


こっちに走って来た。


「帰ろ♪」


手を掴まれ僕は歩かさせられる。

先ほどの斧を思い出すと握られた手から嫌な汗が止まらない。


先ほどまでエリーの前で尻餅をついていたヒャッハーな方は…


…気絶している。


あの光景を見れば無理はないか…僕も怖いぐらいだし。

周囲の野次馬は、なんか凄い妬ましそうな顔で睨んでいる。


うんっ?コレって殺気じゃない?


ココにいてはヤバい!

僕の生存本能が、そう伝えている。


「か、帰ろうか?」


「うん♪」



僕は背中に冷たい視線を感じながら帰宅した。


………

……


2日後、冒険者ギルドに行ったらエリーの依頼を見つけた。

依頼内容は『食べ物を下さい』


僕は、すぐに依頼を取り下げさせた。

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