元勇者様は宿敵という字を『とも』と読む
読み飛ばしても全く問題はありません。
僕は長刀を振るい敵を斬る。
でも、敵の傷跡は一瞬でふさがる。
僕は火の魔法を放つ。
でも焦げ跡一つつかない。
どれだけ、この戦いを続けているのだろう?
徐々に僕は追い詰められている。
僕が疲れる一方で相手は疲労という言葉が関係がないかのようだ。
相手は攻撃の手を一切緩めず僕は徐々に追い詰められていく。
「はあ、はあ」
このままでは圧倒的に不利な消耗戦になりかねない。
僕は、そう判断し逃げることにした…ヤツから。
~~
「はあ、はあ、はあ」
ヤツは、どこまでも追いかけてくる。
「はあ、くっ」
僕は足がもつれてしまった。
時間も分からないほど走り続けて僕の体力は限界に達していた。
地響きを立てながらヤツは僕に追いついてきた。
体力の限界という言葉とは無縁の相手との鬼ごっこ…
最悪の判断ミスをしたのかもしれない。
ヤツの巨大な影は僕の視界から太陽の光をさえぎる。
そして絶対者としての存在感を示していた。
僕に近付いたヤツは僕を巨大な口ばしで…
最期のとき、ヤツの姿がハッキリと見えた。
ヤツは巨大なピンク色のヒヨコ。
……Pちゃん…
「うわーーー」
僕は跳ね起きた。
周囲は暗い…どうやら夜のようだ。
僕は周囲を見渡す。
夢とは違う場所にいることを確認すると…
「夢…か…」
僕の体は寝汗で濡れていた。
ときどき僕は宿敵の夢を見るようになった。
「完全にトラウマになっているな」
まだ僕の心臓は鼓動が早いままだ。
僕は心を落ち着けようと深呼吸を始めたとき…
トントン!
僕は部屋のドアをノックする音に驚き一瞬警戒する。
(いや、宿敵の大きさでは、この部屋には入れないか…)
自分に対して言い聞かせる。
そして警戒しながらもドアを開けた。
開けたドアの先にはティナがいた。
「ユウ君、大きな声がしたけど大丈夫?」
「少し悪い夢を見ただけだから」
「そう?…」
ティナは心配そうな顔をしながら僕の頭をなでようとた。
でも僕はその手を掴み。
「ティナ…僕の気持に気付いているんだろ?」
「ユウ君…でも私たちは…」
「君の気持を知りたい」
「………」
「ティナ?」
「………」
「………」
「私もユウ君のことを…」
そして僕はティナを、そっと抱き寄せ…
………
……
…
と、妄想の世界に現実逃避をしていました。
今? 絶賛Pちゃんと追いかけっこ中だ。
ギルドでPちゃんの生態調査の護衛依頼があった。
生態系の調査のための護衛で、そういった研究機関からの依頼だ。
で、しばらく調査して終わりにさしかかった頃、羽が欲しいと頼まれたんだ。
Pちゃんが住んでいる神殿を調べたけど羽なんてどこにも落ちていなかった。
当然、森の中も調べたけど、そちらにも無かったんだ。
仕方なく研究機関の方々を先に帰して…僕はPちゃんから羽をむしった。
羽をむしられたのがすごく痛かったようで激怒した。
そして追いかけっこが開始されたんだ。
前回の追いかけっことは違って僕が囮になる必要もなかったから楽かな~
…と思ったのは甘かった。
なんとPちゃんは空間を捻じ曲げて僕が森を出られないようにしてきた。
その事実を知ったときに、先ほどの現実逃避が始まった。
雑念が入るとは僕も修行が足りないようだ。
Pちゃんに顔を覚えられたと思うのは、ただの勘違いだよね♪
………
……
…
ちなみにPちゃんの空間を捻じ曲げた能力は結界を使ったものだった。
だから結界を斬り逃走は成功した。
結界が破られたPちゃんの怒りに満ちた声はいつまでも森に響いていたとか。
さらばPちゃん!また会う日まで♪




