元勇者様はヒヨコに食べられなかった
どうやら危ないところで間にあったみたいだ。
「オイシイ所を持っていきやがって」
「…あとでお仕置き」
クルスとリーザが毒づくと他のメンバーの顔が綻ぶ。
「カッコ良すぎるタイミングだったかな?」
「「「いいから、早く倒してこい!」」」
カッコ良さげなこと言ったら銀狼の牙全員に怒られてしまった。
なんか凄く恥ずかしい…
僕が彼らの方を見るとメンバーはニヤニヤしている。
思いっきり期待されているみたいだ。
まあ、カッコつけるのは後回しにしよう。
(神気発動)
僕は切り札の一枚である神気を発動させた。
身体能力が爆発的に向上するのを感じる。
手にした長刀にも神気が宿り結界を斬り裂く能力などが付与されていく。
(始めるか…)
僕は一方的な破壊を開始する。
僕はガーディアンに対し凍魔法を無数に放ち氷の塊をいくつもぶつけた。
氷の塊はガーディアンを傷つけることなく砕け散るけど…
(足場は出来た)
僕は砕けて散る氷塊を足場にしながらガーディアンの頭部に駆け上っていった。
神気を使ったユウは超高速での移動が可能となる。
ユウは散る氷塊の上に一瞬だけ残像を表し次の瞬間には消える。
そして別の氷塊の上に再び姿が現れたと思えば、すぐにまた消える。
次々に現れては消える氷塊の上に映る残像。
ユウは残像だけを残しながら舞落ちる氷塊を足場にガーディアンの頭部へ疾った。
宙を舞う氷の欠片が地に落ちぬうちに彼はガーディアンの頭部にまで行き…
白刃を振るいガーディアンの頭部を縦に斬る。
世界最高度の金属であるオリハルコン。
その金属を世界最高の技術で作り上げた長刀『黄昏』
更に人外のスピードに加え人間の持ちえる最高の刀技。
ガーディアン風情の装甲では防ぎようもない。
次にガーディアンの左肩部分にユウが姿を見せるも、すぐさま姿は消える。
姿が消えた瞬間、彼がいた左肩部分には遅れて火花が散った。
ユウは夢幻のごとき光景を作り出しながらガーディアンを切り刻んでいく。
ある時はゴーレムの近くに現れ、また次の瞬間には宙を舞う氷塊の上に現れる。
ユウは人外のスピードを持ってガーディアンの装甲を斬り続けた。
ユウがガーディアンと戦いを始めて僅か1分程度。
ガーディアンの装甲には役目を果たせないまでの深い傷が無数に刻まれていた。
一通り斬り終わったから仕上げに入ろうと思う。
魔法効果を減少させる装甲は傷だらけだ。
だから傷から内部に大きな魔法を打ち込み完全に破壊することが可能となっている。
金属製ゴーレムに効くのは…
僕はガーディアンの胸部を蹴り後ろに跳んだ。
最後の仕上げとして魔法を放つために。
宙で僕は右手に長刀を持ちながら、ガーディアンに左手を向ける。
(…雷龍…)
僕が心で念じると左手に蒼い雷が集まる。
眩いほどの蒼い光が集まり…龍の姿となりガーディアンを襲う。
蒼く光り輝く蛇のような胴を持つ龍はガーディアンを飲みこんで蒼く染めた。
切り刻まれた装甲の隙間から強力な電気が流し込まれ内部から破壊される。
ガーディアンから立ちこめる黒い煙と爆発音が破壊の終わりを告げていた。
………
……
…
僕達の遺跡探索は終了だ。
ガーディアンが守っていただけあり、なかなかの品が大量に置かれていた。
Pちゃんが疲れて森で眠っているから起きる前に帰ることを提案した。
今日の夢はヒヨコとの追いかけっこになるだろう。




