元勇者様の仲間たちは戦う
遺跡の奥深くで銀狼の牙のメンバーは、死闘を繰り広げていた。
「障壁展開」
「「「『障壁』」」」
掛け声とともに白い幕のような障壁が展開され巨大な炎の塊を防いだ。
「雷魔法」
「「「『雷魔法』」」」
「撃てー!!」
今度は掛け声とともに集団による強力な雷魔法が放たれる。
だが目の前の壁型ゴーレムには効き目がなかった。
彼等が戦っているのは古代文明の遺跡の最奥で財宝を守る守護者。
古代の技術で作られ、壁に埋め込まれた形をした強力な金属の白いゴーレム。
動くことは出来ないが鉄壁の守りを持ち強力な魔法を侵入者に放ち続ける。
その体長は巨大の一言で15mの巨体を誇る。
このゴーレムの名は『ガーディアン』
遺跡にガーディアンが存在するということは当たりくじを引いたような物だ。
なぜならガーディアンは莫大な財宝を守る存在なのだから。
だが命を大切にしたいのなら銀狼牙は貧乏くじを引いたともいえる。
ガーディアンは強大すぎる存在だから。
このチームのリーダーであるクルスは撤退を考えていた。
冒険者は生きてこその仕事だ。
戦士のように闘いに生きているわけではない。
騎士のように誰かを守るために生きているのでもない。
引き際を見定めることこそ一流の冒険者に求められる技能だ。
だが、逃げるのは難しそうだった。
逃走の為にはガーディアンの強力な攻撃を防げる人数を残し撤退をする必要がある。
だがそれは残された冒険者を生贄にするようなもの。
非常な判断が必要となる時もあるが、ガーディアンは強すぎた。
非情な判断をしようとも生き残れる者は0という可能性が高かった。
少しの判断ミスで全滅の恐れすらあるほどに…
不運だったのは銀狼の牙は若いクランであったことだ。
熟練者といえる冒険者が少なかっためガーディアンと戦った者がいなかった。
このためガーディアンの強さをクルスに教えてくれるような先輩もいない。
だからガーディアンの力を軽く見てメンバーを危険にさらす結果を生んだ。
前線で戦闘パーティーと支援パーティーが共闘している。
ガーディアンの攻撃により多くの負傷者が出たためだ。
最初の段階でガーディアンの巨大な炎の塊を放ってきた。
予想外の威力を持った攻撃により戦闘班の冒険者たちを一撃で吹き飛ばされた。
この攻撃により多数の負傷者を出し銀狼の牙は身動きが取れなくなっている。
負傷者の中には足を怪我して動けない者が多くいた為だ。
回復魔法を施すにも使用者の魔力はすでに尽きかけている。
僅かな判断ミスが命取りとなる強敵との戦い。
魔法を使うタイミングを見誤るのは危険だった。
だから残り少ない回復魔法の使用は慎重にならざる得ない。
アイテムに関しては既に尽きている。
もはや魔力を回復する手立ては無い状態だ。
前線のメンバーたちはガーディアンの放った強力な雷魔法を障壁で防いでいた…
しかし!
「「「がっ!!」」」
「「「ぎゃあ!」」」
「「「くうぅぅぅ」」」
魔力が尽きかけ、集中力が弱ったため障壁に綻びが生じる。
更に今の攻撃を受けたことで
銀狼の牙が攻撃の手を緩めてしまいガーディアンは攻撃を妨害されなかった。
このためガーディアンは次の魔法を妨害されることなく放てる状態にあった。
そしてガーディアンは膨大な魔力を集め魔法を発動させようとする。
「全員で障壁を貼れ!」
銀狼の牙のメンバーは次の魔法に対して前衛、後列全員で障壁を張る。
次の瞬間!
辺り一面に閃光が走り目が眩むほどの雷魔法がガーディアンから放たれた。
ドドドオォォォォォォォォォォ
銀狼の牙側は残り少ない魔力を障壁につぎ込み身を守っている。
ガーディアンの眩い雷光と銀狼の牙側の白い膜のような障壁がぶつかり合う。
鳴り止まぬ轟音。
障壁を張る銀狼の牙は、ただ障壁に魔力を込め続けるしかない。
一瞬でも気を抜けば原型すら残さぬほどの雷に体は喰われることだろう。
ガーディアンの放った絶望的な力を防ぐことしかできない銀狼の牙。
だれもが命を削る思いで障壁を展開し続けた。
魔力を使い果たし倒れそうになるも堪え魔力を絞り出す者も多くいる。
だが徐々に魔力を使い果たし仲間が倒れて行き誰もが心が折れそうになる。
(このまま倒れれば楽になれる)
ガーディアンの攻撃に耐える者達には死の囁きが聞こえていた。
だが、突如としてガーディアンの雷は止んだ。
遂に永遠のようにも感じられたガーディアンの雷は耐えきったのだ。
疲れ果てた銀狼の牙のメンバーは汗に濡れた顔を上げガーディアンを見る。
ガーディアンは動きを止めていた。
クルスは思い出していた。
ガーディアンは己の機能を限界まで使用する魔法攻撃を持っていると。
その魔法攻撃を使ったガーディアンは一時的に機能を停止することも。
この場にいた冒険者たちもまたクルスと同じことを思い出していた。
これは共有できたガーディアンの数少ない情報。
彼等はガーディアンの脅威を経験した者がいないが故に判断ミスをした。
だが準備が100%整った状況など存在しないことを彼等は知っている。
彼等は未知な領域に挑み続ける冒険者なのだから。
全員が武器を手にしていた。
先ほどの障壁に魔力は使い切り、すでに魔法を使える者はいないだろう。
だからガーディアンの強固な体を自分たちの武器だけで壊さないとならない。
絶望的な賭けだった。
だが他に生き残る道がない以上、彼等がこの賭けを降りることはない!
全員が最後の力を振り絞り武器を構えたとき…
「あれは敵だよね?」
1人の青年が、この場所に追いついていた。
その青年はAランクの冒険者であり殺戮の風という二つ名を持つ。
彼は2年前に突然スクエイドの街に現れた。
そして圧倒的な刀術と魔法で冒険者のトップに上り詰める。
彼こそが銀狼の牙における最強の冒険者 ユウ・ヒウラ。




