元勇者様と死者の村 7 ラスト・バトル
僕は長刀を一時的にアイテムBOXにしまう。
そして目の前の壁を強く蹴り落下する位置をずらす。
落下している最中はデモンズ・ハートを右手に持つ。
そして左手でドヴェルマンに光魔法を連続で放ちながら教会の床へと落ちる。
「クッ」
対応の遅れたドヴェルマンは結界を張り光魔法を防いでいた。
仲間のいる位置の近くまで移動した僕は風魔法で落下の勢いを弱めた。
落下の衝撃は抑えられたが少し足が痺れた。
ここは平然とした顔でやり過ごそうと思う。
僕は再びアイテムBOXから長刀を取り出す。
そしてドヴェルマンと僕達は睨みあった。
「その程度のことで、有利になったと思っているのか?」
「何のことだ?」
「フンッ!とぼけおって。」
「ああ、結界のことか?」
僕が奪ったデモンズ・ハートを使ってドヴェルマンは結界を張っていた。
そんな重要なアイテムが奪われたんだ。
平静を装いながらも相当いら立っているのが分かる。
「ソイツを破壊すれば、お前らは異次元に飲み込まれる」
「知っているさ」
「ホウ。なら何故、奪った?」
大方、デモンズ・ハートを砕き、道連れにされるのを恐れているんだろう。
でも、そんな勿体ない事をする必要はない。
結界の主導権があれば手を抜く必要もないのだから。
僕はリーザにデモンズ・ハートを渡して言う。
「全力で結界を維持してくれ!」
「…!…」
リーザは僕のやろうとしていることに気付いたようだ。
「…ミア、パトラ手伝って!」
リーザの元にミアとパトラも集まり3人でデモンズ・ハートに魔力を注いでいる。
僕は結界の破壊を恐れて全力で戦えなかった。
でも、結界の破損を直しながらなら全力で戦える。
結界は作るのには高度な技術が必要だが維持だけなら多くの結界で共通している。
だから結魔法を得意とするリーザなら結界の維持ができるはずだ。
リーザは、いつも通りの上司目線で…
「…安心して行って来い」
そんなリーザが今は心強い。
神気は結界そのものを破壊しかねないので、まだ使うのは危険すぎる。
だから今回は極大魔法を使うことにした。
極大魔法は効果の広さゆえ味方を巻き込まない調整に時間がかかる。
このため術の準備から発動には多少の時間が必要になるけど…
死霊を浄化する魔法なら問題ない。
「極大光魔法 聖炎の鎮魂歌」
僕は光属性の極大魔法 聖炎の鎮魂歌を発動した。
魔法の発動共に黄金の炎が教会全体に広がる。
「…っう、キツイ」
リーザは結界の維持を頑張ってくれているが負担は大きいようだ。
教会の祭壇も椅子も天井も黄金の炎に包まれていく。
「グアァァァァァ」
ドヴェルマンも全身を黄金の炎に焼かれている。
黄金の炎は死霊の魔力を喰らう炎だから生者である僕達を焼くことはない。
だから僕の仲間達は魔法の威力に茫然としているだけだ。
聖炎は村の方にも広がっていると魔力の流れで感じられた。
この村には死霊の魔力が満ちている。
聖炎は際限なく死霊達を喰っていくことだろう。
ドヴェルマンは全身から黄金の炎が吹き出ている。
「キ、キサマ」
「終わりだ。ドヴェルマン」
僕は長刀をドヴェルマンに向けて言った。
そして最後の攻撃を行うために聖剣術を発動する。
(聖剣術 聖霊)
聖剣術 聖霊は聖炎を武器に集める特殊な聖剣術。
聖霊を使うと長刀は教会に広がっていた炎を集め始めた。
そして黄金の炎を纏った長刀が眩いほどに輝いたと同時に…
僕は黄金の炎が踊る教会を駆け抜けた。
………
……
…
「終わったな」
「…なんとか」
クルスとリーザが話している。
僕は村のあった方向を眺めている。
僕達が元の世界に戻った時、夢…いや悪夢を見たかのように村は消えていた。
「最初から何もなかったみたいだな」
ダイクが僕に話しかけてきた。
「ええ」
本当に何もなかったように感じられた。
村のあったはずの場所には草が広がっているだけだ。
でも右手に持つデモンズ・ハートの冷たさは現実。
(久しぶりに前進できた…か)
長い道のりだったと僕が溜息をして空を眺める。
視線の先に広がる空の青さが、いつもよりも深い色のように感じた。
リッチに苦戦した理由
1.魔王を倒した時には優秀な仲間がいました。
2.リッチ戦では魔王戦よりも強力な魔法と神気が使えず、
勇者の戦力が落ちていたました。
1.魔王を倒した時には優秀な仲間がいました。
2.リッチ戦では魔王戦よりも強力な魔法と神気が使えず、
勇者の戦力が落ちていたという設定です。
※魔王戦で使ったのは、
正確には神気ではなく神気を応用したスキルという、
使っていない設定がありますが…




