勇者様は学院生活に敗北した
シェルファ学院。
シェルファ王国の名前を冠する学校。
国家に貢献できる優秀な人材の育成を至上目的としている。
年齢を問わず優秀さを示すことさえできれば入学可能な実力主義だ。
このため幅広い年齢の学生が在籍している。
リーザと僕は、ここで出会った。
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僕達の前に、3人組のパーティーが歩いてきた。
1人は知り合いの冒険者で後の二人は僕と同年代ぐらいかな…?
「よう!」
知り合いの冒険者が僕達のメンバーに声をかけてきた。
彼はダイクという冒険者で普段の彼はボサボサの黒髪に茶色の瞳だ。
ちなみに剣を使うタイプの戦士系冒険者。
クルスと仲が良いため食事などを一緒にすることも多い。
でも今日は服装に気合が入っていたのでダイクだと気付かなかった。
「おう!」
クルスが挨拶を返す。
「お疲れ」
「…どうも」
僕とリーザも挨拶をした。
「相変わらず、リーザはちっちゃ…うおっ」
「………ちっちゃくない」
あ~あ、火球の被害数が増えちゃったか。
ダイクは僕の次にリーザの火球の餌食になっている人物だ。
それにしてもダイクよ、二言目で言う言葉じゃないだろ…
「あ~。ところで今日は仕事か?」
「あ、ああ。今日は、シェルファ学院から実習する生徒の護衛を受けた」
シェルファ学院に限らず、この世界の学校では必ず実習が行われる。
その実習というのはモンスター退治という場合が多い。
これは魔物や犯罪から身を守る術を身につけるため。
戦い方を学ぶことは治安が悪いから必要な事なんだ。
「そんで魔物退治を終えて、スクエイドに帰るところだ。」
「ほ~う、どの辺まで行ってきたんだ」
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などとクルスとダイクが話している間、リーザと学院生徒達も会話を始めていた。
リーザが僕について何を話しだすか分からず怖い。
だからコチラの話に参加することにした。
「リーザさんは、冒険者をしているのですか?」
「…冒険者で実践を積みながら魔法の修業をしている」
リーザは後輩であるミアという少女と話している。
ミアは赤髪のショートヘアで蒼い瞳
槍を持っているから戦士系かな?
もう一人はミアの双子の弟でパトラというらしい。
パトラは少し長めの長髪で蒼い瞳。
コチラも槍を持っている。
見た感じ二卵性双生児だと思う。
パトラはリーザとミアが話しこんでいて居心地が悪そうだ。
凄く親近感を感じるよ。
「ところで、あちらの方は…」
「あれは、ユウといって私の部下…」
「ちょっとまて…」
僕はリーザの言葉をさえぎり会話に参加する。
「初めまして。僕はユウというリーザの冒険者メンバーです」
「あ、初めまして。私はミア・コーネルといいます」
「私はパトラ・コ-ネルといいます」
パトラ君が、さりげなく会話に入ってきて自分の存在をアピールした。
よほど居心地が悪かったんだろうな~。
それにしてもミアとパトラは動きが洗練されている。
ひょっとすると貴族階級かもしれない。
まあ、気軽な挨拶には慣れていないみたいだけど。
(貴族相手だから、ダイクの服装は気合が入っていたんだな)
「あの、失礼ですが名字は…」
「…」
「…」
「…ユウ・ヒウラが名前と名字」
リーザが僕の代わりに名前と名字を伝えて僕の方を見てニヤッとした。
リーザが、この表情をするということは、多分ミアは知っているんだろうな~
「ユウ・ヒウラ………どこかで?」
嫌な沈黙が流れている…
「…神童…」
「神童…っ あっ 神童ユウ・ヒウラ」
リーザは無表情だ。
でも『やってやったぜ!』というような空気を全身から放っているのが分かる。
コイツ…余計なことを。
僕は1年と少し程度だけどシェルファ国立学院に通っていた。
世界の常識や魔法の基本などに疎かった。
だから僕は学校のような場所で学ぶ必要があったんだ。
チート補正のある僕は学園に合格して入学許可が下りたけど…ヤリすぎた。
僕が入学してから、しばらく経ったころテストが行われた。
でも、このテストは普通のテストではなかった。
テストには解読されていない古代言語が大量に含まれていたんだ。
このテストの目的は、作った教授の言を借りるのなら…
『未知なことが世の中にはたくさんあると知って欲しかった』だそうだ。
でも僕は古代言語関連のテストを古代言語スキルもカンスト済み。
このため解けないはずのテストの問題をあっさりと解いてしまう。
テストが採点されると学園の偉い人達が教室に駆け込んできて…
実力が証明したとされて研究室をくれた。
当時はリーザも生徒として学院に通っており僕の研究室に何度も訪れていた。
だからリーザは学院での僕を詳しく知っている。
で、話を戻すんだけど…
チート補正された人物が研究を行ったらどうなるか?
結果は想像したとおり称賛の嵐。
そして僕は神童と呼ばれる程になった。
でも僕がやりすぎた結果、敵が多く出来た。
周囲の大人から見れば10歳にも満たない子どもの活躍を面白くないと感じるだろう。
それに自分が望んでいる名誉や実績を子どもが手に入れたんだからなおさらだ。
妬むを通り越して怨むというレベルに至っていた人が多かったように思う。
それに新しい理論が生まれると困る人もいた。
これらのことから僕の周りでは様々な妨害が行われた。
研究結果を握りつぶされたりとかね。
そして僕は学園を去ることに…
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と、いうのが世間で知られている表向きの情報だ。
実際のところは僕の良心が罪悪感で押しつぶされそうだった。
僕の出した成果というのは…
ゲーム知識で作ったアイテムの発表
ゲームスキルによる古代言語の解読
ゲームスキルで成績は常に上位
………
こんな感じでズルいことをしまくっており当時は良心が痛かった。
だから僕への嫌がらせを口実にして学園を去ることにしたんだ。
学院をやめてからの解放感といったら…
………
……
…
で、どうしてミアに僕のことを知って欲しくなかったのかというと…
「申し訳ございませんでした!」
「君たちのせいじゃないよ」
「でも…」
こんな感じで謝罪されるから。
僕が学園を追い出されたという話は学園にとって最大の汚点と呼ばれている。
さらに優秀すぎるブレインのアレフ君が知らないところで色々としたらしい。
このため学院関係者や生徒の中には僕のことで物凄く謝る人がいる。
謝られるたびに良心がチクチク…
リーザは謝られて困る僕を見て笑いをこらえている。
もう少し後輩を大事にしような…




