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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
第一章 街はずれの錬金術師は元勇者様
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元勇者様と黒の魔導士…って誰?

魔王は倒された。

だが世界では魔族と人間の戦争は続いている。


力ある魔族は次の魔王となるために動いていた。

魔王が率いていたときのような統率力はないが魔族は強力な力を持った魔物で軍隊を作れる。

このため魔王死後も魔族は人類の脅威といえる存在であり続けた。



そんな魔族の中に、強大な魔物の軍隊を率いる者がいた。


その魔族の名前は『アルビド』

3mほどの体に鳥のような頭部をもち体は赤い羽毛で包まれた魔族。


アルビドの軍は多くの街を制圧している。

そして今もイルモアという街を後少しで落とそうという段階まで追いつめている。


アルビドの軍はイルモアの街の兵を容易く蹴散らした。

陸上にいた兵士たちは全て死体となり後は街を守る防壁を破壊するだけの状態だ。


人間の側は防壁の上から弓矢や魔法を放ち最後の抵抗を行っている。

だが攻撃はアルビドの兵たちに届くも威力が弱く敵に大きな損害は与えられずにいた。



アルビドは既に勝利を確信していた。

街の攻略は時間の問題であり面白味のない展開しかないと…


これはアルビドの油断。

しかしその油断に付けいる術は、もう人間にはなかった。



人間は街の防壁の上から死力を尽くし魔族の軍に抗い続けた。

地上の兵士達は、もういない。


強力な魔法を使える魔法使いも戦争の始まりのころに魔力を使いきってしまった。

魔力を回復させようにも回復させるアイテムは既に尽きている。


このため戦力となる魔法使いは経験の浅いものたちしか残っていない。

矢もまた、いずれ尽きることだろう。


だが魔族に降伏することは絶望しかない。

だから降伏した者の未来を聞いたことがある者であれば決して受け入れられない。


兵士たちは分かっている。


戦況を覆す決定打を持たない自分達は時間を稼ぐぎ援軍の到着を待つしかないことを。

だが現状を退けられるような援軍を期待できるのか?


そして援軍が来るにしても、その時まで街を守り切れるか…

疲労と共に気力は萎え兵士達も不安に押しつぶされそうになる。


それでも街と大切な物を守るには絶望的な持久戦を耐えるしかない。

生き残った兵士たちは捨て身の思いで戦い続けていた。


~避難所~


兵士たちが絶望的な戦いを繰り広げるなか街の中では人々が恐怖に怯えていた。

街の外へ避難できなかった人間も多い。

このため避難誘導された場所には、女、子ども、老人の姿が多かった。


男や戦えるものの多くは戦場へと向かった。

だから、ここに集まっているのは戦い方の知らない者達。


魔物が街の防壁を乗り越えれば抗うことすら出来ないだろう。


この場所にいる者たちは街の外から響く悲鳴や爆発音を恐怖に耐え聞き続けることしかできない。


ある母親は子どもを強く抱いていた。

強く抱きしめて子どもの不安を和らげようとしている。

子どもも母親を不安にさせまいと泣くのを懸命にこらえている。


母に抱かれた子どもは胸に一冊の絵本を抱きしめていた。

本に描かれているのは、あかい剣を持った勇者の物語。


その勇者の名前は…


~戦場~


戦場では大きな動きがあった。

街を守る防壁の一部が崩されたのだ。


膠着状態に飽きたアルビドが前線に立ち自らの魔法で壁を破壊した。


崩れ落ちた街の防壁には魔物の侵入を防ごうと多くの人が集まる。

兵士だけでなく民間から集まった民兵も。


崩れた防壁に巻き込まれながらも命をとりとめた弓兵も起き上がり戦いに備える。

どんなに気力を振り絞ろうとも、もはや絶望しかない。


それでも戦うしかない状況。

兵士たちは覚悟を決め剣を構えていた。



崩れた防壁部分には人間以外にも魔物達が集まっている。

集まった魔物の目には獲物を狩る肉食獣の如き獰猛さが見られる。


だが獰猛な眼に混じり喜色を浮かべる眼もあった。


赤い魔族アルビドだ。

アルビドにとって戦場の最前線はショーを特等席で見るのと同じ。


人間達の絶望に染まる顔…

無駄なあがきを踏みにじられる姿…

死の間際の断末魔…


全て自分が強者であると感じさせてくれる最高のショーだ。

そんなショーが見られるからこそアルビドは戦場を好む。


このショー最大の見せ場に移ると期待しながらアルビドは指示を出そうとする。

そのとき強大な魔力を感じ一瞬、指示を出すのを忘れた。


そして辺りが暗くなる。


この現象に違和感を覚え空を見上げると巨大な魔方陣が黒い雲を吐きだしていた。


(マズイ!)


アルビドが危険を察知するも遅すぎた。


いかずちよ」


この一言がアルビドの耳に聞こえた瞬間、無数の雷が大地に降り注ぐ。



降り注ぐ雷は天を裂き、大地を抉り、暴虐の力は魔物達を蹂躙していく。

魔物達は逃げ惑うものや身がすくみ動けなくなる者など反応は様々だ。


暴虐の力は全ての魔物を等しく飲み込んでいく。


雷が止んだ後は暴虐の傷跡ととして大地には数多くのクレーターができていた。

そして魔物達の陣営には焼け焦げた死体が数多く転がっている。


僅かな時間で蹂躙するはずだった者たちは、蹂躙された者へとなった。


地獄の去った大地にアルビドは立っている。

アルビドは障壁で雷を防ぎ難を逃れることに成功していた。


そして目の前の人物を睨みつける。


その人物は右手に紅い刀を持ち黒いローブと黒いマントを身につけていた。

容姿に関しては紅い仮面をつけており分からない。


この人物が地獄を作り出した存在だとアルビドは理解する。


「何者だ」


紅い仮面の人物は答える。


「黒の魔導士」

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