元勇者様は恋を応援する?
僕は作成した『ファイアーソード』を店?で依頼主に渡している。
なぜ店?と?が付くのかというと僕の店には名前がないからだ。
もともと自分の店で商品の受け渡しをする気はなかった。
だけど親しい相手の特注品を受けているうちに僕の家が受け渡し場所になっていた。
店の名前も無く、『ユウの店』で仲間内ではとおっている。
でも未だに正式な名前は付けていない。
(このため取引は個人名で行っている)
ちなみに『ユウのアトリエ』として宣伝しようとしたこともある。
美少女以外は手を出さない方が良い名前だと判断し諦めたけど。
「ユウ、それがそうなのか?」
目の前にはファイアーソードの作成を僕に依頼した茶髪黒目で短髪の青年がいる。
彼はクルス・フォーエンス。
僕が組むことの多い冒険者メンバーの一人だ。
「重さや魔力の質も調整したから試して欲しい」
僕はこう言って店の裏の練習場に連れていく。
「じゃあ、魔力を通してみて」
「おう」
練習場でクルスがファイアーソードに魔力を通すと赤い剣が火をまとう。
そしてクルスは構えて剣を軽く振るう。
「相変わらず、腕がいいな」
「プロだからね」
クルスからのお褒めの言葉を僕は当たり前のこととして返す。
そんな、たわいもない会話をしながら僕はクルスの様子を観察している。
(魔力も馴染んでいるし、剣自体も問題なさそうだ)
などと考えていると、練習場にレイナがやってくる。
「師匠~ 紅玉石の合成終了しました」
僕はレイナの作業がクルスが練習場にいるうちに終わるように調整した。
だから練習場にレイナが来るのは予想できたことだ。
なぜ調整したのかというと…
「レ、レイナ」
「おはようございます。クルスさん」
「お、おはよう」
動揺する彼から察することができるように、クルスはレイナに惚れている。
クルスに目を向けるとクルスと僕は目が合う。
僕達はアイコンタクトで全てを伝えあった。
アイコンタクトの内容はというと…
『僕のサプライズはどうだった?』
『よくやった!』
死線を共に潜り抜ける冒険者仲間であればアイコンタクトぐらいたやすい。
「クルス、ポーションなんかは足りている?」
僕がこういうと再び目が合いコチラの意図にクルスが気付く。
「いや、これから補充しようと思っていたところだ」
「じゃあ、ついでに買っていく?」
「そうだな、頼む」
「レイナ、ポーションのあまりはあるかな?」
余りなんて、あるはずがない。
僕の店では注文されてから作るから余計な在庫は滅多に出ない。
仮に在庫が出たとしても回復アイテムは僕がアイテムBOXに入れて冒険で使用する。
だから今すぐ出せる商品は店に存在しないはずだ。
「いえ、無いと思います」
予想通りの答えだ。
「クルス、少し時間がかかって良ければ用意できるけど、どうする?」
少し時間がかかるという部分を強調したらクルスは意図を理解したようだ。
「時間は大丈夫だから頼めるか?」
クルスは僕が待っていた返答をした。
だから僕は用意しておいた言葉をレイナに伝える。
「レイナ、ポーションの作成を頼んでいい?」
「はい」
そしてクルスに対しては…
「ポーションの作成に興味があるのなら見ていってもいいけど、どうする?」
「あ、ああ!頼む!」
「じゃあ、レイナ、ポーションの作成を見せてあげて」
「わかりました♪」
レイナは腕が上がっており誰かに見せたかったんだろう。
とても嬉しそうだ。
僕は最後に…
「もし他にも必要な物があったらレイナに作ってもらって」
この一言を伝えてから、僕はその場を去った。
………
……
…
あとでレイナが自作のアイテムををたくさん買ってくれたと喜んでいた。
予想通りクルスはポーション以外も沢山買ってくれた。
毎度あり♪