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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
第一章 街はずれの錬金術師は元勇者様
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元勇者様は魔法使い(紫)のオモチャ

2人組の新人冒険者と5人組の冒険者のケンカを1人の少女が中断させた。


「…そこまで」


少女はローブを着て魔法使いでお馴染の三角帽子を被っている。

ローブも三角帽子も同じ深い紫色だ。


更に黒髪蒼眼で髪は腰まで伸びている。

肌は文科系少女という感じの白に近い色だ。


そして僕は知っている。

彼女の前でロリだとか胸のサイズを口にしてはいけないことを。


言えば燃やされる。なぜ知っているのかって?

彼女は僕が一緒に組むことの多いメンバーの一人だからさ。


彼女の名前はリーザ・ウォレンスタイン。

容姿と体形からマニアな冒険者のファンが多い。



ケンカも仲裁され僕という存在は必要なそうだ。

だから人込みに隠れて消えようとコッソリと後ろに下がろうとする。


「…ユウ、手伝って」


指名を受けてしまった…

ここで出て行ったら新人を見殺しにしていたようでカッコ悪すぎる。

できれば、やり過ごしたいけど…


こっちを思いっきり見ている。

諦めるしかなさそうだ。


僕が前に出ようとすると野次馬は道を空けてくれた。

彼らの視線が凄く痛い。



僕がリーザの近くに行くと火魔法を撃ってきた。

が、何とか僕は避けた。


「おい!」


「…失礼なことを考えていた」


僕は何も言い返せなかった。


先ほどの胸のサイズの話で焼くという部分で怒っているんだろうか?

それとも一部のマニアに人気という部分で…


「うおっ」


「………」


リーザは再び火魔法を放ってきた。

今度は手に魔法をまとわせて火魔法を殴り消した。


リーザは体形の話、限定で読心術を使えるのだろうか?


「………………………」


さっきよりも明確な殺意を持って僕を睨んでいる。

からかうのは、やめようと思う。



先ほどから5人組が大人しい。

見ると顔は青ざめており少し震えている。


リーザの火魔法に恐れをなしたか?


「さ、殺戮さつりくの風」


恐怖は僕に対してのようだ…

殺戮の風というのは色々と殺りすぎて付いた僕の2つ名。


光の勇者→殺戮の風


凄いビフォー&アフターだね…


「…ユウに殺られたくなかったら大人しく帰りなさい」


リーザが放った一言で5人組は帰って行った。

なんか半泣きになっていた…たぶん気のせいだ。



あとは新人2人についてなんだけど…

倒された方の怪我は大したことはなさそうだ。


骨にヒビが入っていた。

でも回復魔法をかけておいたから大丈夫なはず。



問題は新人君達の行動だ。


冒険者は危険が伴う仕事。

判断ミスが命の危険に結びつくことも多い。


今回の2人で5人を相手する行動は無謀としか言えない。

そして一目で経験差があると分かる相手にケンカを吹っ掛けた。

ケンカをするのなら自分と相手の実力差を考え別の手を考える必要があった。



彼らは判断力に欠けていたとしか言いようがない。

ここは2人に先輩として言っておく必要がある!


このように考えているとリーザが口を開いた。


「…2人は無謀だった。」


「そんなことは!」


「…でも、もう少しで大ケガをしていた」


「………」


リーザの説得が効いているようだからココは任せよう。

説得の言葉が全く思い浮かばないからではない…本当に。


「…殺戮の風って知っている?」


「噂は聞いたことがあります…」


「…殺戮の風は、ユウの二つ名」


話がおかしな方向に向かい始めていないか?


「…もしユウと戦うことになったら、どうすればいいと思う?」


「それは全力で逃げるしか」


「…それじゃあダメ」


「………」


なんか新人2人が物凄く真剣にリーザを見ている。

と、いうか僕はドコまで怖がられているんだ?


「…ユウと戦うことになったら諦めるしかない」


「なっ」


「…世の中には、どうしようもない理不尽もある」


「………」


新人2人!そこで黙らないでくれ。

その沈黙は僕が理不尽な存在だと肯定しているのかい?


「…でも、ユウのような酷い人は他にいない」


「はい…」


なんか感動したような目でリーザを見はじめた。


「…今回、あなた達は無謀なことをした」


「はい…」


「…ユウと戦うのと違って選択肢は沢山あったはず」


「はい……」


なんか感動的に終わらせようとしている。

でも僕が物凄い悪者になっていない?


「…これからは、しっかりと考えなさい!」


「っっっ」


「…プロの冒険者は、どんな最悪な状況からでも希望を見つけ出すものだから!」


「ハイ!」


そこに結び付くのか。


「…ユウを相手にするような最悪の事態なんてない!」


「ハイ!」


「…今回の失敗を教訓として考え抜く冒険者になること!」


「ハイ!」


新人2人が感動して涙ぐみはじめた。


「…きっと、貴方たちならユウのような間違いをせず立派な冒険者になれる」


「…ハイッ…」


新人2人が本気で涙を流し始めた。

と、いうか『ユウのような間違い』って何!?


「…頑張りなさい」


「ありがとうございます!」


パチッ!


パチッ!パチッ!パチッ!


パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!パチッ!


へっ?


周囲から拍手が送られている。

しかも喧嘩の野次馬をしていた人たちの何人かが泣いている!?




………



……





リーザが新人二人を説得した。

このまま育てば二人は優秀な冒険者になるだろう…


僕は思いっきり晒しものにされた。

更に聞きたくなかった周囲の評価を聞かされて色々と燃え尽きた。


「…ユウも、たまには役に立つ」


「………」


僕は言い返す気力すら既になかった。

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