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街はずれの錬金術師は元勇者様  作者: 穂麦
第一章 街はずれの錬金術師は元勇者様
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元勇者様の強敵

ついに16歳編スタートできました。

広大な国土を持つシェルファ王国。

この国には歴史上類を見ないほど急速に発展する街があった。


その街に2つあるダンジョンは多くの冒険者達を集めている。

巨大な闘技場は己の力を試そうとする猛者を集めている。

多くの娯楽を発表し続けて退屈に飽きた権力者から注目を集めている。

そして人が集まる場所であるため一層多くの人間を集めている。


この街の名はスクエイド。



一見すると人が集まり騒がしいという印象のあるスクエイド。

だが街の中心から少し離れると喧騒とは無縁の穏やかな風景が広がっている。


そんなスクエイドの街はずれに一軒の家があり、錬金術師が住んでいた。


錬金術師の名は『ユウ・ヒウラ』


彼は世界でも8名しかいない最上級錬金術師。

しかし周囲が騒ぐのを嫌うため、そのことを知っているものは少ない。


そして彼は行方不明とされる勇者トワでもある。

彼が勇者トワであることも一部の人間しか知らない。



今、最上級錬金術師で元勇者という肩書を隠して生きるユウは強敵に挑んでいた。



~ユウの自宅にて~


「ユウ君、男の子なんだから沢山食べてね♪」


「…う、うん…」


そこには金髪蒼眼に透けるような肌の誰もが見惚れるような美少女がいる。

その少女が黒髪黒目の少年に語りかけていた。


金髪蒼眼の少女の名前はティナ・ヒウラ。

過去に聖女と呼ばれていた少女。


黒髪黒目の少年はユウ・ヒウラ。

彼は最上級錬金術師で過去に勇者と呼ばれていた少年。



今、ユウもティナもテーブルを囲み席に座っている。


そしてユウの前には大量のパスタが盛られている。

このパスタはティナが茹でたものだ。



ティナは魔王討伐のあと料理に情熱を燃やすようになった。


腕は上達し続けた。


ティナは塩と砂糖を間違えることはない。

料理から未知の生命体を生みだすこともない。


だが…


彼女の作る料理は量が半端ではない。


ユウの目の前にあるパスタは文字通り目の前にある。

彼の対面の人物から見ると、ユウの顔が隠れるほどに盛られている。

料理の迫力は元勇者であるユウを圧倒するほどだ。



そんなユウとティナのやり取りを生温かい目で見る少女がいる。

ユウの右手の側に座る彼女は最上級錬金術師ユウの弟子 レイナ・フォルカ。


決して彼女はユウを山となった料理から救うことはない。

彼女にとってユウとティナのやり取りは最高の娯楽だから。



レイナの右手側、ユウの正面には銀髪に黒い瞳のイシュルテという女性がいる。

彼女はユウが残念女神と呼ぶ女神。


ユウがホットケーキをあげた翌日から食事時(しょくじどき)に来るようになってしまった。

権力者に弱いユウは女神か疑いつつも追い返せず食事を与え続けた。

この結果イシュルテがユウの家で食事をすることが日常の風景と化した。


だがイシュルテに関してユウは昔の自分を褒めたい気分だ。

おかげでティナが作る大量の料理と、自分一人で戦わずに済んだのだから…と。


イシュルテは沢山食べる。

だからユウにとって貴重な戦力といえる。


だがユウは気付いていない。

ティナの料理はイシュルテを基準に量を決めた。

その結果、とてつもない量になっているということを…


そんなイシュルテは満面の笑みでティナの料理を食べている。

ユウとティナの会話は全く耳に入っていないようだ。



ユウの左手側、イシュルテの右手側に、ティナが座り4人で食事をしている。

美しい女性達に囲まれ普通の男なら悦ぶのが普通だ。

だがユウは脂汗をかいている。


(どうやって、この強敵りょうりを攻略しようか…)


ユウは料理との対戦で手一杯だ。

周囲の様子すら考える余裕はない。


義理の姉弟という設定で住んでいるのだがティナはユウが好意を持つ相手だ。

ティナに嫌われるのを恐れ食事の量について言い出せずにいた。

そして大量の料理が当たり前になっていた。


かといってティナの料理は人間の胃袋の限界を超えている。


元勇者といっても胃袋は常人のものだ。

とてもではないが勝ち目はない。


だから元勇者ユウは勇気を振り絞りティナに言う、

「少し量が多いから、アイテムBOXに入れて後で食べていいかな?」


この言葉こそが、元勇者ユウが自分を守るために編み出した言葉。

この言葉を使うようになり、ユウに出される料理の量は少し減ったような気がする。


…まだ人外の胃袋でないと収まる量ではないが…


ユウは料理の大半を別の皿に移し替えて、皿をアイテムBOXに入れる。


ユウは冒険者もしている。

アイテムBOXにしまった料理を冒険者仲間に食べてもらうのが習慣となっている。


しかしティナは目の前で大半の食事を移し替えられても料理の量が変わらない。


彼女には天然が入っている。

ユウの言動に対して義弟という安心感から深くは考えたことはない。

彼の言葉を、そのままの意味で受け止めている。

だから彼女が察して料理の量が変化することはない。



別の皿に料理を移し替えたユウが、食事たたかいを開始しようとしたところで…


「ユウ、少し分けて」


と、間の抜けた声が響く。


声の主はイシュルテ。

すでに女神の威厳は彼方に消えている。


ユウは、この女神の降臨を待っていた。

イシュルテは食事のたびに自分の分を食べ終わった後ユウの料理を狙ってくる。


ティナに内心の喜びを隠しアイテムBOXから食事をとりだす。


量としては、全体の3分の2程度。

今日は冒険者仲間と会うので、与える料理は半分に抑えた。


(いつもは5分の4近く渡すんだけどね…)


この強敵との戦いは女神の降臨により戦況は大きく傾いた。

そして元勇者の食事たたかいは勝利に終わった。

イシュルテにホットケーキを食べさせたのは0章の『勇者様と残念な女神様』

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