元勇者様は監視対象中
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かつて人々は魔王に怯えていた。
強大な力を持つ魔物を率いる魔王に人の軍隊はかよわい存在にすぎなかった。
だが魔王に対抗しうる力を持つ者達が現れる。
その者達を率いていたのは大賢者ウォーレン。
彼は多くの犠牲を払いながらも魔物達を退けていった。
最初は小さかった希望の火。
しかし、時がたつにつれウォーレンの下で大きく燃え盛るようになった。
だが大賢者ウォーレンは病により旅の最中倒れ帰らぬ人となる。
ウォーレンの死に多くの者達が涙を流す。
それでも彼の残した希望の火が消えることはなかった。
彼の死後、多くの志ある者達が立ち上がり魔物と戦うようになる。
この頃から弱き人の力は結集され魔物の進行を大きく阻み始めた。
そんな中、ウォーレンの志を娘である賢者と名高いフィアナが受け継ぎ、遂に魔王討伐を成し遂げる。
世界は歓喜に沸いた。
これまで暗闇に閉ざされていた未来に光がさしたのだ。
その喜びがどれほどの物だったか……
だが世界で歓声が沸き上がる中、姿を消した者達がいた。
光の勇者トワと聖女アリシア。
魔王討伐の中心にいた2人の消失。
一時は世の中を騒がす。
しかし脅威が去ったことへの歓声に2人の噂は埋もれていった。
~魔王討伐から2年後~
姿を消した光の勇者の名はトワ。
彼は女神イシュルテによって作られた存在だ。
現在『光の勇者 トワ』はスクエイドの街にて生きている。
今は本来の名である『ユウ・ヒウラ』として。
スクエイドの街に生きるユウ・ヒウラは錬金術師だ。
街はずれにある一軒の家が彼のアトリエとなっている。
彼は心の中で『残念女神』と呼ぶ女神により、この世界に呼び込まれた。
そして廃プレーヤーに片足を踏み入れていたゲームのスキルを与えられてもいる。
いくつかの使命を果たすために……
その使命の一つは大賢者の一行に同行して魔王討伐に協力すること。
この魔王討伐には後から使命への悪影響があると考えトワと名乗り同行する。
ついに魔王討伐を達成して、あとは錬金術師としての使命だけ!
と思ったところで大きな問題に出くわした。
旅を終えようとしたトワ(ユウ・ヒウラ)の扱いに国は悩んだ。
何故ならトワという勇者は規格外すぎたからだ。
トワの勇者という名声が高すぎて下手な扱いをすれば国民からの支持を失う。
トワの戦闘力が高すぎて不幸な事故扱いに失敗すれば国が危ない。
トワの功績が高すぎて敵対すれば世界中から敵視されかねない。
トワを外交カードとして使えばカードとして強力すぎて脅迫になりかねない。
国には勇者以外にも悩みがあった。
それは大賢者と共に魔王討伐に参加した聖女の存在。
彼女もまた魔王討伐の達成を区切りとして旅を終えようとしていた。
こちらも名声と戦闘力が高すぎトワと同様に国は扱いに悩んだ。
国が悩み抜いた末に出した結論。
どうせ一人だけでも手に負えないのなら2人をまとめて監視しよう!
そんな自棄ヤケを起こしたような案だった。
勇者トワは本来の名前であるユウ・ヒウラと名乗ることに。
聖女アリシアはティナ・ヒウラと名乗ることに。
こうして2人は義姉弟きょうだいとして一緒に過ごすことになった。
好意を持つ異性と一緒に過ごせることが、すごく嬉しい元勇者ユウ・ヒウラ。
しかし数年後、聖女との関係が本当に義姉弟のようになり始めたことにユウ・ヒウラは悩み始めていた。
元勇者ユウ・ヒウラは思う。
(ティナ……僕を本気で義弟だとしか思っていないよね……)
次話:勇者誕生の話です
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本編に行っても大きな問題は無い…ハズです。