第二十九話 白と黒の狐
「…化け狐は、アナタの方よ」
静かに鈴が言い放つ。ぴくりとカズハの肩が揺れた…気がした。
「アンタら、破門者は同族すら裏切っているのよ?挙げ句の果てには、その同族にも手を挙げているじゃない。」
「それはお前らがあの信仰を理解しないからだ。」
「そんなの、理解する気も出ないわ」
かぶりを振り、刀の切っ先ををカズハに向ける。鈴の目は冷たく―――何処か悲しそうに見えた。
「り、鈴…!」
涙目でクロウが彼女の名を呼ぶ。振り返りはしなかったが、代わりに尻尾を揺らした。まるで、安心しろと言うように。
「…アンタ、仲間いないわね?」
「……それがなんだ?」
「いえ、別に。…勘違いか……にしても、アンタは哀れね」
「俺が?哀れ?」
何を言っているんだと言う様にカズハは嘲笑する。相変わらず鈴は冷たい視線を送り続ける。
「ええ、とっても哀れよ。惨めなくらいに」
「抜かしたことを…っ!」
カズハの手に炎が浮かぶ。…狐火だ。それを鈴に向かって放つ。だが彼女はそれを刀で両断し、狐火は呆気なく散る。
その様子を見て、カズハの表情に明らかな動揺と焦りが浮かび上がる。
「…私達一族を敵に回したこと、後悔しなさい」
吐き捨てるように言い、鈴は刀の切っ先をカズハに向けた。
◆
――廃墟の広間らしき所
広間に入った瞬間、俺へ何かの視線が突き刺さる。…獲物を狙う、狼のような視線だ。
「…何なんだか。」
眼前に迫る、黒い蜥蜴の魔物を睨みながら刀で切り払う。
その一撃で蜥蜴は怯む。…コイツ、思ったより弱いのか?
(…いや、確かに"弱い"が…これは……)
その姿を見ていると、変な感覚がする。何というか、恐怖心と言った負の感情が、心を掻き立てる。
多分、普通の人間が見たら、正気を保っていられない。そして、まともに動けなくなった獲物を喰らう…そういうヤツなんだろう。
だが、俺にはそういうのに耐性がある。だからそれ以上感じることはなかった。
(というか、何でこんなヤツがここにいるんだ?)
この黒蜥蜴…クレイズリザードは本来、深い洞窟など暗く静かな所にしかいないハズ。生息数は少ない物の、かなり厄介な部類だ。
なんせ、見ただけで発狂しかねないという魔物だ。強さはさほどでもないが、精神を害してくると言う所がかなり面倒だ。
そんなヤツが、どうしてこんな所にいる?近くには街があるし、この廃墟を住み処にするには明るすぎるし、賑やかすぎる。かなり悪条件なのに……
尾を振り回し、周囲を破壊しながら迫ってくるそれを跳躍し、そのまま空中で回転しながら切りつけてかわす。
そんなに硬くない鱗を切り裂かれ、蜥蜴が悲鳴の様な咆哮を上げる。その咆哮もまた、恐怖心を掻き立てるようなものだが、問題ない。
不思議と冷静に現状を分析しながら戦っていた。
悪条件な場所にいる、本来いない魔物。…どう考えても何者かが連れてきた、或いは召喚したとしか思い付かない。
だが、何のために?
魔物は光が苦手で、辛うじて夜ならまともに動けるが、本来は洞窟などから出ることはない。
そんなヤツが、街を襲えるのか?…賭博師でも「襲えるハズがない」と言って賭けることすらしないぐらいだろう。
なら……ここに迷い込んだヤツを喰らうとでも言うのか?
その線が近いような気がする。だが同時に遠いようにも思えた。
目の前に街があるのに、わざわざ廃墟に行くなんて、なかなかないだろう。…まあ、この廃墟に宝とかがあるならまた違ったかもしれないが、そんな噂などない。
それに…僅かに漂う魔力から察するに、コイツはつい先程くらいに召喚されたものだ。
…ここには俺以外の人間やフラン達がいる。さっきの白狐もそうだ。
まさか、あいつらを拐った犯人が……?
「グギャアアアアアアアア!!」
蜥蜴が咆哮を上げながらこちらに迫ってくる。口を開け、暗い中でも濡れた牙がギラギラしているのが見えた。
…このまま俺を喰らうつもりなのだろう。
「随分ナメられたモンだな!!」
跳躍し、魔物の頭上を取り、刀の切っ先を向ける。落下する勢いを使い、蜥蜴の眉間に突き立てた。
刃は深々と突き刺さり、魔物は動きを止めた。
「――《バーン・ブラスト》!」
刺した所から魔力を注ぎ、魔物の体に術式を書き込む。粗方書き込み、刀を引き抜きながらまた跳躍する。
直後、術が発動し、魔物の体が爆発した。
術式はざっくりとしか書いていなかったが、術そのものの威力は大きかったため蜥蜴の上半分を吹き飛ばした。
爆風を受けないように《マジックウォール》を展開していたのでダメージは受けなかった。…それより。
「…変だな」
偶然着地した先に、入り口の崩れた部屋が見えた。…だが、妙な違和感を感じる。
近づいてみると、その違和感がわかった。…最近使われた跡があったのだ。
(こんな場所にか…?)
部屋に入ってみると、机やベッドなどの生活に必要最低限な物しか置いてなかった。それに、どれも比較的綺麗で壊れていない。…まぁ、さっきの戦いで入り口付近にあった物は壊れていたが。
何か残っていないかと探してみる。だが、机の引き出しには何も入っていなかった。
(…ハズレか)
早く見つけなければいけないのに、俺は何をしている。
部屋から出ようとした時、何かを蹴った。見るとそれは日記だった。
「……日記?」
なんとなく気になって、読んでみる。これも最近書かれたみたいだが……
「…………」
読み終え、日記を閉じて机に置く。
「……まったく…面倒だな」
思わずそう呟いた。
◆
しばらくの間、上の方から音が聞こえてきたが収まった。何だか…戦っているような感じだったけど……。もしかしたらここは地下なのかもしれない。
…僕達の前には、カズハと戦う鈴の姿があった。現状を見る限り、鈴の方が優勢だ。とはいえ、こうして何も出来ないということに歯痒さも覚える。…まぁ、この頭痛がどうにかしないと、この間の時みたいに気絶してもしまうかもしれない。フランは自分の術で少しずつ回復していた。
「鈴……」
心配そうな表情で鈴を……いや、戦っている二人を見つめるクロウ。その表情は複雑で、俯きかけていた。
「はッ!!」
鈴の刀がカズハの剣を弾き飛ばした。剣はカズハの遥か後ろに飛び、音を立てて転がった。
「…!このっ」
だが、大きく隙を作ってしまい、そこにカズハが護符を放つ。
「っ!」
護符は爆発し、それをもろに受けて後ろに飛ばされる。だが、すぐに立ち上がって体当たりをかました。今度はカズハが飛ばされ、壁に打ち付けられる。
「がっ…!」
呻き声を上げて、うずくまる。鈴は彼を冷たく見下しながら刀を突きつけた。
「せ、先生」
「……」
思わず、といったようにクロウが声を上げた。カズハは荒い呼吸を繰り返していたが、僅かに彼を見た…ような気がした。
「何か言い残すことは?」
鈴もまた、クロウを一瞥する。カズハは俯いたままだ。
が、急に顔を上げて乾いた笑みを浮かべていた。それは、諦めたようで…何処か満足しているようにも見える。
「…あるさ。たんまりとな。」
「なら、言いなさい。…変なことしたらそのまま斬るから」
そう言うと鈴は刀を少しだけ離した。それを見て、カズハが一つ息を吐く。
「……逆に聞こう。白狐、お前は俺に聞きたいことはないか?」
「…ある、わね。特に、何故裏切ったか。何故仲間はいないのか…とか。」
鈴が身動ぎ僅かに表情を強張らせる。ふぅ、と息を吐き、カズハは何かを思い出す様に目を細めた。
「裏切った…か。まあ、そうなるだろうな。俺達は確かに裏切ったな……あんなモノの方が良いと思えたんだ。」
「あんなモノ……?アンタは崇拝していたんじゃ」
「もうやめたさ。」
キッパリと言い捨てた。そのことに鈴の目が見開かれるが、彼は構わず続ける。
「嘘だったんだよ。教祖だったヤツは…俺達の信仰の力を吸い上げる為に…偽の神を崇めさせた。けど、あの日…全部嘘だと教祖を騙ったヤツは言った」
そう語るカズハは笑っていた。自らを嘲るように。
「当然俺達は怒ったさ。そいつを叩こうとも思った。けど…出来なかった!」
「…どうして?」
急に声を荒らげ、頭を抱える。まるで、何かに怯えるように。
「偽の神…その化け物が仲間達を喰らったんだ!ソイツをまともに見たら正気でいられなくなる…そんな化け物だ!動けなくなった仲間は皆ソイツに喰われて死んだ…!」
「……!」
その言葉を聞いて、この場にいた全員が息を呑む。
「俺達は用済みなんだとよ…だから、全員化け物の餌になれって……。けど、俺は逃げた。逃げ出したんだ。…俺には…あの孤児院があったからな……」
「…変なヤツを崇拝しながらも、クロウ達を…?」
思わずそう言うと、彼は頷いた。
「いずれは…例の崇拝をさせる為に利用しようと思ったがな……結局やめた。…どのみち、無理みたいだしな…」
鈴とクロウを見て、溜め息を吐きながら笑う。
「…行き場のない孤児達がいるんだ。放っておけないだろ……」
「変な所はしっかりしてるのね。」
鈴が言えばカズハはそれを鼻で笑った。
「逃げる直前、護符で小さな亜空間を作って…化け物を封印した。少しの間だけ、何も出来ないように…な。」
けどそれはもう限界みたいだ、と言う。
「さっきも上から音がしただろう……今は術が解けて再召喚された状態だ。アイツは、俺を探している!仲間達みたいに喰われる…!けど、化け物なんかに殺されたくない…、そう思ったんだよ、俺は…」
「……だから、こんなことをしたの?」
静かに鈴が言えば、小さく頷き返した。
「…一日分の効果の《ダウナーミアズマ》を街にかける。クロウは白狐と仲が良いみたいだしな…お前の場所を突き止めて荒らし、クロウ達を拐う。そうすれば、お前は来るだろう?」
「アンタ、まさか」
「…随分と手の込んだ自殺シナリオだな。」
鈴が言いかけた言葉を別の声が紡ぐ。…この声は……
「時雨…!」
「…予想外といえば、もう一人のイレギュラーが入ったことだけどな……」
カズハが時雨を見ながら言う。時雨は何故か鈴と見つめ合っていたが……お互い何だか微妙な表情をしていた。
「アンタの目的は同族に殺して貰うこと、なんだな?」
「ああ。…あんな化け物に喰い殺されるよりは断然マシだからな」
「て言うか、何で詳しいのよ、アンタ…」
「日記を読んだからな」
取ってくる、と言って彼女の後ろにあった階段へ向かう。少しして時雨は日記を手にして戻ってきた。それを鈴に手渡す。
「…容赦ねぇな、お前」
「けど、真実を知るのには丁度言いんじゃないのか?」
「ハッ…違いねぇ。」
時雨の態度にカズハは笑う。日記を読んでいる鈴の表情がだんだん険しくなる。
「…アンタ、本当に」
「ああ、本気さ。…早く殺してくれ…ヤツが、来る前に」
「り、鈴…!先生も…や、やめて!」
カズハ達のやり取りにとうとうクロウが仲介に入った。彼が入ってきたことに二人は目を丸くした。
「クロウ…わかってるの?こいつに…こいつ自身が死ぬための“舞台”にアナタ達は利用されたのよ?」
「わかってるよ!…いや、本当はよくわからない気もするけど……でも、でも!」
これだけはわかる!と叫ぶ。
「先生は死んじゃだめだよ…!!」
「……クロウ、どうして」
「俺達には…まだ先生が必要だから…。先生も、行き場がないのはわかるよ。でも……俺達だって、孤児院しか帰る場所がないんだ。みんながいて、先生がいる…そんな場所が…!」
泣きながらクロウが叫ぶように言う。その様子を静かに二人は見ていた。そんな二人の表情は、暗い。
「鈴の一族の敵だったのもわかる、でも…っ……怖い目に遭って、一人になって…それでも、俺達の所に戻って来て……!」
「………」
「先生は…本当は優しいヒトだと思うよ…!」
声を絞り出すようにクロウが言う。
…違うんじゃないのか、と一瞬思った。けど、ずっと回復に専念していたフランが口を開いた。
「まぁ…そこそこは優しいんじゃないのかな?わたしと戦ってた時、ほとんど結界と符術しかしてこなかったし……。」
あの傷、結界をぶち破ろうとして何度も弾き返されて出来たものだから、とフランが言う。…言われてみれば、僕の時もそうだ。…自分自身が弱っていたのもあるから、ダメージが大きかったのかもしれないけど。
「それに…本当に殺しに掛かってくるのと比べたら…殺気がなかったもん」
「……だろうな。あの時の殺気もイマイチ足りん。」
フランの言葉に時雨が頷く。…一体この二人はどんな戦いを経験してきたの?と疑問に思う。僕もカズハも何とも言えない表情をしていた。
「アンタら…一体なにをしてきたのよ……。はぁ…」
鈴も同じような表情をし、溜め息を吐く。そしてカズハとクロウを見る。
「……どうするの?」
彼女の言葉に頷き、クロウはカズハの元に駆け寄った。
「…先生。あの時…殴っちゃったけど……ごめんなさい。そして、帰ろう…?」
「……無理だ、クロウ。もう俺には時間がない…」
「化け物のことか?それだったら俺が―――」
時雨が何か言いかけた時、天井が崩れ落ちた。幸い、落ちてきた所には誰もいなかった。だけど、瞬時にカズハの表情が凍りつく。
「ヤツだ…!」
砂埃が立つ向こうに、大きな影が見える。それだけでもわかる、嫌悪感。いけない、此奴は――――
「クロウ、白狐!お前らは逃げろ!絶対にアイツを見るな!!」
「なっ…!?」
「せ、先生…!」
カズハの怒鳴り声と共に、二人が突き飛ばされる。その後、僕達も突き飛ばされた。目の前には、木製の扉。…ここから逃げろということなのか。
「アンタこそ下がれッ!!」
今度は時雨の怒号。思わず振り返ると、カズハが倒れ込む所だった。その先には、上半分がない魔物がいた。…正しくは、失った上半分をどろりとした黒い液体状の何かがその部分を補うような形をしている"魔物だったモノ"だ。
「っう…」
嫌悪感が更に増す。でも、ヤツに向かっていく時雨の姿に目を離せなかった。
「とんでもねぇ物を残しっていったんだな、こりゃ!」
悪態を吐きながら時雨は術式を展開される。一瞬にして複雑な魔法陣が幾つも現れ、"魔物だったモノ"を取り囲む。
「命ず、負に溺れし彼の者を正に、光へと導かん。《ポースフォス・カタルシス》!!」
詠唱、術の発動。"魔物だったモノ"が光の糸に巻かれていき、あっという間に繭のようになる。次の瞬間、その足元から光の柱が立ち上る。音もなく現れた光の中で、繭に包まれた"魔物だったモノ"を解かすようにして消滅させた。
「………」
呆気にとられて、その場から動けなかった。
何だ、今のは。浄化…させた?
確かにさっきのは「不浄の塊」といってもいいくらいのモノだった。けど、それを造作も無く時雨は……
――…霜月時雨。闇を光に変える神で"異世界の放浪者"だ。
闇を光に変える、換える。
(あれが……)
彼女の神としての“役割”。
「…ふぅ、なんとかなったか。」
「お、お前……」
一体何をした、と言いたげなカズハに対し、時雨は不敵な笑みを浮かべた。
「世の中知らない方が良い時もあるぜ?…ま、これだけは知っておけ。“お前は助かった”ってことをよ」
「……その方が、いいかも、な…」
動揺しながらも、これまでのことを思い出したのか、素直に彼は頷いた。
「先生!先生!!」
扉の向こうからクロウの声がする。その前にはフランが扉を押さえていた。もういいだろう、と思ったのだろう。そこから離れると、勢いよくクロウが飛び出て来た。勢い余ってそのまま派手に転ぶ。
「クロウ!?」
「いったた……」
「おいおい…大丈夫か?」
そんな彼にカズハが近づき、手を差し伸べる。その手を、カズハを交互に見て、クロウは涙を浮かべた。
「先生…!助かったんだ…!!」
「…ああ。時雨だっけな。…ありがとうな」
「…フン。別にいいさ。それより…今後はどうするんだ?」
時雨が鈴に向かって言う。彼女は「私は鈴よ、時雨。」と返してから、クロウを宥めるカズハを見た。その視線に気づき、彼の表情が強張る。
「…まさかこんなことになっていたとは、誰も思わないでしょうね。だから、日記にもあったように白狐と黒狐についての本に書いてあったことを…否定したかったの?」
「………。」
無言。それは肯定を示していた。
「…私が証人になるわ。それでも、アナタがしたことはそうそう許される訳でもないけど…。」
「本気か?」
「ええ。…でなければ、他に死んだ仲間達も哀れでしょう?…ちゃんと過ちには気づいたのだから。」
「で、出来る限り俺も手伝うよ!先生!!」
「…お前ら……。ありがとう、な」
困ったように、けれど、どこか嬉しそうな表情をしながらカズハは笑った。
◆
荷物をまとめ、街から出る。
別れ際、クロウに泣かれたけど…「離れていても、ずっと友達だよ!」と言われて、嬉しいような悲しいような気がした。
カズハも「先生」の姿で見送ってくれた。その隣に鈴の姿もあった。…僕達のことをなんとなく察した彼女だ。別れの意味も理解しているみたいだった。
…彼らの「今後」も気になるけど…これ以上は介入してはいけない。ヒトとしても、神としても。きっと、出来るのは見守ることだけだ。
「あ~…色々あって…わたし疲れたよ…」
「うん。よくわかるよ…フラン」
街から離れ、降り立った場所に辿り着く。
「まぁ…本当に大変だったからな…」
どこか疲れた表情をした時雨が呟くように言う。彼女を見て、言わなきゃいけないことがある、と感じる。
「ねぇ、時雨」
「なんだ?カイル」
「…カズハと戦っていた時、その目を見た時のことなんだけど……。」
あの時、感じた本能的な嫌悪感。あれは…
「あれは……“絶望しきって死に向かう”ヒトの目だった。」
「どうして、そう思おう?」
「…なんとなく、かな。…それを見て、僕は本能的に厭悪したのは…まだ人間を理解していないからかな」
「……そう、だな」
何かを思い出すような目をしながら、マフラーに手を当てる時雨。そういえば、いつの間に着けたのだろうか。
「…嫌悪や厭悪も一つの解釈かもしれん。…だが、それを……俺や輪廻や運命を司るアイツから見たら…多分“哀れ”と思うんだろうな。それが同情かもしれないが、少なくとも…な。」
「……まだまだ一方的にしか見れていないのかなぁ」
「かもな。」
「…ねぇ、難しい話は戻ってからでもいいでしょ…?」
わたし疲れちゃった、とへたり込むフラン。確かに、全員疲れているのは同じだ。…早く帰った方が良いのかも。
「そう、だな。…帰るぞ、お前ら」
そう言って、時雨が術式を展開させる。
この世界で、色んなことを学んだとは思う。けれど、まだまだダメだ。もっと、学ばないといけない。
…そんなことを思いながら、世界を後にした。
これにて二章終了になります。
つぎは…三章だ…!←




