閑話2 魔術研究
ユウサリ視点の閑話です。
――ユウサリの屋敷、書斎
「ねぇユウサリ。あの手合わせの時……ぶっちゃけ、アンタもしぐも…本気だしてないっしょ?」
壁に寄り掛かりながらリットが言う。
術式についてまとめていた手を止め、彼女の方を見る。
「理由はー…多分あれかな?今研究している、新しい魔術を考えていて実は睡眠不足だったんでしょ?」
指を立てながらそう答えるリット。
…あながち間違いじゃない。うん…←
「…ええ。」
だから否定せず、私は頷いた。
……時雨がいると、毎晩寝首を掻かれそうになる。彼女がいない間は…まともに寝ることが出来るが、今回はそういかなかった。
その理由がリットが先程言った、「新しい魔術」の研究をしていたからだ。
既存している魔術と精霊召喚術を応用させた魔術をどうにかして使えないかと、この所ずっと睡眠時間を削りながら考えていていた。
実際、術自体は完成したのだが…いざ使ってみると…ともかく酷い。
暴発したり、不発だったり……思うようにいかないのだ。
「術式自体には問題はない……。なのに上手くいかないのですよ……。…制御がかなり難しくて…」
先程まで書いていた術式をリットが覗き見る。ふむふむと頷き、一度私を見ると溜め息を吐いた。
「うーん……相変わらず駄目っぽいねー…?」
「ええ……あと少し、と感じるのですが…なかなか…」
はぁ…と溜め息を吐くと、リットは苦笑する。
「ははは……そりゃ大変だねー…。ならば、時雨やカイルとの手合わせ…疲れているから、とか言って休めばよかったのにー……それとも何なの?ユウサリはマゾなの?」
また壁に寄り掛かりながらリットがそう言う。
…今、癪に障るような事……言われたような…。
「……やっぱマゾなの?ユウサリ」
今度はニヤニヤしながら言うリット。誰が…マゾだって……
即座に詠唱し、リットの方に手を向けた。
その手には、今研究している「新しい魔術」の術式。
その事に気づいたリットはぎょっとし、慌てて逃げ出そうとする。
だが、彼女が逃げ出す前に術は発動した。
いや…確かに発動はしたが……
ドオォォン!!
術は派手に爆発を起こしただけだった。
リットはというと……ギリギリ当たらずに済んだようだ。
「……チッ」
「ちょ、舌打ち!?」
「おっと、私とした事が……声に出てました?」
努めて笑顔を作りながらリットに話し掛ける。…口元が引き攣りそうだ。
彼女は顔を青ざめながら「その反応はないわー…」と小さく呟いた。…私に聞こえないようにしたのだろうか……
残念だが…私は一応ハーフエルフ故に聴力は高い。だからハッキリとその言葉は聞こえた。
「では、どんな反応をしたらいいのですか?」
「って聞こえてるしー!!」
リットは更に青ざめ、数歩後退りする。
…もうこれくらいでいいか…。
「…反省しましたか?」
「………あい。」
半ば放心しながらリットは返事をした。
「ならいいです。」
それだけ言って、書くのを再開する。
それにしても…やはり暴発してしまった……。制御の仕方をまた考え直さなくては…
「もう…何なのさぁ……」と嘆くようにリットが床に座り込んだが、偶然やって来たレディアが相手をしたみたいだ。
「……絶対に、完成させなければ。」
確かに私は既に、必殺技のような大技(魔術)は習得している。(術以外にもあるといえばそうだが…)
…正直、胸騒ぎがする。
レディアの予言といい、六芒星の賢者…ネファルが言っていた魔女の封印のこと。
最近、急に色々起こっている。
私が五百年病んで狂っていた間には…それほど事件などは起きなかったらしい。まあ原因は私がそうなっていたからなのだろうけれど。
それが収まり、この所特になく過ごしていたが……
…多分…かなり大事になる気がする。そういうように私は考えている。
それをまた時雨独りが抱え込んでしまいそうで……
私は何も出来なくて……
そんな風になりたくない。なって欲しくない。
(今度は、私が…――――)
だからこそ、新しい術を作り出すのはその為でもあるのだ。




