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異世界の放浪者と  作者: 天音時雨
第二章 白狐と少年
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第二十四話 和と洋が交じり合う街

今回はカイルのターン。

異世界到着です!

ふわり、と着地すると同時に冷気が体を包んだ。


「うわ…寒っ……」


時雨が言っていた通り、この世界の季節は冬だ。周りを見渡せば、一面銀世界。


「…で、どこに行くのさ。」


「そうだな……あの時計塔が見える街にしようかとは思ってる。」


それに気配も…と何か呟いていたけど、すぐに「何でもない」と言われた。


「んじゃ、行くぞ。カイル、フラン」


僕が頷き、フランが「はーい」と返事をすると街に向かって歩き出した。




――トリスタニア



周りは山に囲まれ、時計塔が象徴的な街、トリスタニア。


建物は洋風の物が目立つが、和風の建物もあった。


…レディアが言っていた「和と洋が交ざる街」ってこの事だったんだね……。


街をぐるりと見渡しながらそう考えていると、山の方に視線が留まる。


「……鳥居?」


確かに山の中腹辺りに鳥居と社らしき建物が見えた。

一体何が祀られているんだろう……?


僕自身、かつては神社で過ごしていた事もあり気になる。


「…山の方に行ってみたいのか?」


「えっ!?いや、僕は別に……」


「いいよ、行ってきても」


あっさりと時雨が言い、僕は一瞬理解できず、ポカンとしてしまった。


「…え、いいの……?」


僕が聞き返すと彼女は頷き、「いいよ」と答える。


「俺も調べたい事があるし……お前も調べたい事があるなら行ってこい。…フランはどうする?」


時雨がフランを見ると、フランは考えるような素振りをし、一度僕を見た。


「わたしもカイルと一緒に行く!」


「わかった。じゃあ五時に時計塔に集合な。」


「はーい!」


「わかった」


そう返事をし、僕らは山の方に、時雨は街の方に向かって行った。




山はそこまで高くない。比較的楽に山道を歩いていた。


道は一応人が通っていた跡があり、神社に繋がっているのがわかった。


「……こんな山の中に…一体何の社なんだろ…」


会ってみるのが少し楽しみだ。足取りも軽くなり、歩くペースも速まる。


「ちょ……待ってよカイルー…」


後ろからフランの声が聞こえ、振り返ってみると、かなり後ろの方にいた。


「何やってんのさ…遅いよ、フラン!」


「カイルが速いんだよー!何かピョンピョン跳ぶし!」


あれ…無意識に跳んでた?龍神故に身体能力が高いと言われている。そのせいで脚力も高く、一蹴りで空を翔る事も容易い。

…因みに人に蹴れば確実に骨折するレベルだ。←

勿論腕力もあるけど……それはさておき。


「…まったく…わかったよ。」


フランが来るのを待つ。数分して彼女は漸く僕に追い着いた。


「もー…ペース合わせてよー!」


「むぅ……わかったよ…。」



まあ…置いていくのは酷いしね…。ペースは合わせた方がいいか。


フランのペースに合わせながら再び山道を歩きはじめる。







…が、そのペースは段々落ちてきた。


「…フラン、大丈夫?」


「………大丈夫っ」


強気に返事をするが、少しフラつきながら歩いている。あまり大丈夫には見えない。


「ちょっと休む?」


僕がそう聞くとフランは頷き、近くの木の根本に座り込んだ。僕もその隣に座る。



数分してフラン自ら立ち上がり「行こう」と言い出した。…大丈夫なのかな。



――数十分後…



僕の勘は当たり、フランは数分置きに休む事を繰り返していた。


…かえってペースが落ちる…。

とはいえ、フラン本人は辛そうだし…。

なら…背負っていくか。そう思いつき、フランの前に出て背を向けながら少ししゃがむ。


「フラン、乗って。」


「え…?」


「…疲れてるんでしょ?ホラ。」


「いいの…?」


戸惑いがちに聞くフランに対し、僕は頷いた。

少ししてすぐに彼女が乗る。


「よし…っと。じゃ、しっかり掴まってて。」


「え?」


立ち上がりながらフランに向かって言う。きょとんとしながらもフランは腕に力を込めた。

…これなら。


「せーのっ」



たんっ!



フランを背負いながら僕は跳躍し、木の枝から枝へと跳びながら進んでいた。


「え、ちょ……えええええ!?」



そしてすぐにフランが驚きの悲鳴をあげた。


「え、えっ!?なんで跳んで――――」


「うん?楽だし、上から見るのが面白いから。」


率直に思っている事を言うと、フランは「えー…」と半ば呆れたような声を出した。



…しかし数分後、フランもはしゃぎ出したのは言うまでもない。




「………」


「…はしゃぎ過ぎだよ。」


フランはこくりと頷き、また座り込んでいた。…今度ははしゃぎ過ぎて疲れたとか。

かと思えば「うー…」と唸りがら呟いた。


「……お腹すいた…」


「…え。何で?君は精霊だろ…?」



僕ら神々や精霊達は人間と違い、食事を取るという事はあまり必要ない。

食事を取っても取らなくてもあまり変わらないから。

まあ…かつて人間がいた頃の名残り、或いはクセで食事を取るというのはあったみたいだけど…。そういえば…元人間だった時雨とユウサリはいつも取っているみたいだったな……。


そう考えていると、フランが首を傾げた。


「あれ?時雨から聞いてなかった…?異世界に来たときは出来る限り"人間に近い体質"に変えておくべきなんだって…。だから、能力自体は変えなくても人間らしく振る舞えるようにはしておかなきゃ駄目なんだって。」


「……何だよ、それ…」


あれ…そういえばルーシェ様も言っていたような……?


「カイルはやってないの?」


「う……うん。」


「ふーん……ってマズイよ、それ!」


「わ…わかってるよ!」


というかフランに言われるまで気づかなかった…早めに調整しないと…

そう思った時、誰かがこちらに歩いて来る気配を感じた。


「ねえ、どうしたの?二人共座り込んで…」


そんな声がして顔をあげると、白いコートとオレンジのマフラーを巻いた少年が心配そうにこちらを見ていた。


「え……」


少年は白い髪で毛先は紫で、長い髪をポニーテールの様に纏めている。

茶色の瞳が真っ直ぐに僕達を捉えた。


「もしかして、迷った?君達は…兄妹?」


首を傾げながら少年はそう問いかけてきた。


……別に迷った訳じゃない。それに…何で兄妹?

何となくフランを見てみる。フランは金髪だが、毛先が桃色にもなっている。

で、僕も同じく金髪で…毛先は赤。確かに似ているといえば似ているけど…目の色が違うし……


…いやこの際、話を合わせてしまった方がいいかも。



「ああ、そうだよ。」


「おわー……やっぱり?でも、どうしてこんな山の中にいるの?」


「えっと……街に入った時、山の方に鳥居が見えて……神社でもあるのかなって…気になったから来たんだ。」


嘘は言っていない。これだけは本当に思ったことを話しただけだ。


少年を窺うように恐る恐る見てみると、僕と視線が合い、にっこりと笑った。


「そうなんだ!俺も今からその神社の人に用があって行こうとしてた所なんだ。よかったら一緒に行こうよ!」


とても嬉しそうに少年は言う。

…さっきの話し方だと、この人は神社の人と面識があるみたいだ。

何だか利用するみたいで気が進まないけど……一緒に言った方がいいかな。

それに、道についても詳しいみたいだ。なら…一緒に行くか。


「うん。僕も行きたい。」


「よっしゃぁ!じゃあ案内するね!」


そう言うと、感激したように少年は僕の手を握り、ブンブンと上下に振る。…ちょっと、勢いが良すぎて腕が痛いんだけど…←



「ほら立って!日が暮れちゃうよ〜」


「わわっ……ちょ」


待って、と言う間も無く少年に腕を引かれる。が、フランは空腹のせいか足元が覚束ない。

少年もそれに気づいたらしく、首を傾げた。


「どうしたの?」


「お腹すいて…力が入らない……」


か細い声でフランが言うと、少年は困ったようにうーんと唸り始めた。が、すぐに頷き、フランを背負った。


「これなら問題なーい!えっと…君は大丈夫なんだね?」


「ん? ああ…僕は平気だよ。あと、僕は海瑠っていうんだ。そっちはフランシア。」


名乗ってない事に気づき、少年も笑いながら名乗った。


「俺はクロウ!よくクロって呼ばれるんだー! よろしくね!カイル、ランシア!」


「ランシア…?」


「うん!フランシアだからランシア!駄目だったかな?」


フランは首を横に振り「大丈夫だよ」と答えた。


「ただ…その呼び方は初めてかなぁ…」


確かに「フラン」と呼ばれるのが殆どだしな…。でも、フランはどこか嬉しそうに見えた。


「そうなの? まあ自己紹介も済んだし…行こうか、神社に!」


おーっ!と意気込み、フランとクロウは楽しそうに拳を突き上げた。



…で、神社に行く道中、色々と話をしていた。


クロウはハーフエルフの孤児で、孤児院で暮らしているという事、今から行く神社には友達がいる事などなど…


因みにクロウの耳は長くはないが、人間の耳と違って尖っている。

この街には種族に対する差別は殆どないらしい。理由として、元々様々な種族が住んでいる故にそうなったんだとか。


「でねー…っと、見えてきたよ!」


話の途中だったが神社が見えてきたのか、クロウが指差す。


確かに神社が見えた。…狛犬の代わりにあるのは……狐?


となると…この神社は稲荷神社ってことかな?


「ランシアはお腹すいたんだよねー…頼めばきっとくれるはず…!」


ラストスパートっ!と言いながらクロウは一気に駆け上がる。慌てて後を追い、追い付く。


追い付いた時には…クロウは神社ではなく、近くにあった小屋の扉の前に立っていた。


トントン、とクロウが戸を叩くと、戸が開いた。














「何の用かしら?」










中から出てきたのは、雪のような白と毛先は淡い桃色といった長い髪を持ち、空色の瞳と狐のような同じく白い耳と尾が生えた着物の少女だった。


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