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異世界の放浪者と  作者: 天音時雨
第二章 白狐と少年
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第二十二話 手合わせと説教

第二章、開始です!

「……んー…」


目が覚めると、見慣れた天井が見えた。

…あー、そうか。


俺、あのまま疲れて寝たんだ。


確か…一度起きてユウサリにリヒトの輪廻は修正したのかと聞いて……



「………ふぅ。」


そう言えばあの時の戦い、かなり強引な方法だったよなぁ……


俺の能力故に出来たとはいえ……いつも無茶すんなとユウサリから言われて……


(…ヤベェ、バレたらユウサリの説教確定だ!)


アイツに説教されるのも嫌だ。しかも長いときたもんだ。


…誤魔化す。どうにかして誤魔化そう。


そう謎の決心をしつつ寝返りを打つと、フランと目が合った。



「おはよ。」


「…お、おう。」




フランは何故かほぼ無表情で俺をガン見してくる…。たまにやるんだよな、コイツ。


「はーー…。ま、頼んではみるか。」


「何を?」


独り言のつもりだったがフランに聞こえたらしく、首を傾げる。


「模擬戦だよ。」







「…てな訳だ。一つ手合せしてくれ。」


「は……はぁ…」


俺が模擬戦をしたいとユウサリに言うと、何故か少し嫌そうにしていた。けど、一応頷いた。


「文句あんのかユウサリ」


「別に、そういう訳ではないですが……正直あまりやりたくないんですけど。」


「マジかよ…。お前しかいねぇんだよ!相手が!つかさっき頷いただろ!」


俺がそう言って詰め寄ればユウサリは一歩下がる。


「私以外にもいるじゃないですか……蒼夜とか。」


「あのなぁ……一応頷いただろ…。じゃなくて、前に戦ったヤツと戦法が近いのはお前だけなんだよ!」


ピクリ、とユウサリが反応した。

まだ嫌そうな表情をしているが…さっきよりはマシになった。


「…と言いますと?」


「術を使えるし、そこから槍を作るくらいは出来るだろ?」


「まあ…出来ますが。」


「つまり、条件に合っているのがお前なんだよ!お前しかいねぇって言ってるだろうが!」


そこまで言ってみた…が……何故かユウサリが俯いている。


「え。ちょ、どうした」


俺が顔を覗き込もうとした瞬間、頬を引っ張られた。


は…ハメられた!!



「ふぉい!ゆうひゃり!」


「くくっ……その顔で怒っても怖くないです。…それに、人に頼むのにあんな態度は駄目ですよ?」


笑いを堪えながら言うお前も言えねぇぞ?…なんて思っていたが…まぁ…その通りだけど。


「………。」


俺が黙るとユウサリは手を離した。


思わずため息を吐く。


「お願い……します。」


「はい。わかりました」


困ったように笑いながらユウサリは頷いた。




―――闘技場



ユウサリの転移魔法で闘技場に到着。


…このすり鉢状の闘技場は、かつてこの世界に人間がいた頃の名残らしい。



闘技場には特殊な結界と魔法が掛かっていてそれが、ここで戦う者は傷一つ付けずに済む、というものだ。

あと武器は普段使っている物ではなく、念じてそれを実体化させた武器を使うことになっている。その武器を使えば、攻撃は当たるが傷を付けることは完全になくなるらしい。

まぁ、念じれば普段使っている武器にさせることも容易いことだが。


今、この闘技場を使う者はなかなかいないらしいが……掛けられた魔法は劣化とかはしていないから大丈夫だろう。



で……。


「なんでリット達もいるんだ!?」



そう。何故か観客席側にリット、レディア、蒼夜、フラン、カイルの姿があった。



てか何気にカイルまでいるのかよ!


「いやー…ちょっと気になっただけだからさー。いいじゃん?」


リットは笑いながらそう言う。


…まあ、別にいいけどよ……。


下手に負けられねぇじゃん…。いや、負ける気はないけどさ。



フィールドに立つと俺とは反対側の位置にユウサリが立つ。


「相手がどんな戦い方をしたのかはフランから聞きました!」


「おー。そりゃいい!じゃあ……」


普段使っている刀を想像しながら念じると、術式が現れ、刀の形になる。

それを手に取り確認する。…うん。感覚も同じだ。


ユウサリを見ると既に実体化させた短剣を構えていた。


「始めるか!」

「始めましょう!」


そう同時に声を上げた。


刀を抜刀し、地面を蹴り上げる。


ユウサリは光を槍の形に変えて放つ。…属性こそ違うが、やり方は同じだ。


その槍を刀で払い、刀を振り上げてユウサリの上を取る。


「―――スキだらけですよッ!」


刀を振り上げていたせいでがら空きになった上半身に炎の球が当り、吹き飛ばされる。

闘技場に掛けられた魔法のおかげで痛くはないが、衝撃は感じる。


飛ばされながらも空中で体勢を整え、刀に魔力込める。


「《天ノ刃》!」


幾つもの光の刃がユウサリに向かっていく。


が、ヤツは後方に跳んで回避した。


……ユウサリって見かけによらず、素早いんだよな…。そこが厄介なんだよな、こういう手合わせの時とか!←


「冷気よ、大地を包み込まん《アイシクル》!」


着地したとたん、地面が凍りつき、そこから鋭い氷の刃が幾つも飛び出し、俺に迫ってくる。

あの時ヤツが使った術と同じだ。この前は横に跳んで逃げたが……今回は逃げない。


一度刀を握り直す。

そして一気に横に切り払った。同時に衝撃波が生まれる。


「《光波一閃》!」


放たれた衝撃波は氷の刃を砕き、その先…つまりユウサリがいる所までに達した。


「っ!」


今度は対処出来なかったらしく、そのまま吹き飛ばされる。

…まあ、多分反撃がすぐに来ると思うけどな。


なら……


「潰えることを知らぬ負の闇よ、今此処に刃となりて彼の者を葬り去らん!《ナイトメア・インヴェイジョン》!!」


あの時と同じ様に術式を展開し、魔方陣に魔力を込め、俺を中心に闇が広がる。


「命の煌めき、今此処に焔となりて彼の者を浄化せん!《セイクリット・バーン》!!」


ユウサリの詠唱、そして銀色の炎が俺の術の闇とぶつかり合い、火花を散らす。


そのスキに跳躍し、刀を構える。


「っ!」


が、ユウサリも同じ様に跳び、短剣を構えていた。


これは…ハメられた、か!?


咄嗟に刀を横薙ぎに払うが、ユウサリは身を屈めて避ける。

かと思えば、視界から姿が消えた。


「しまっ…!」


「《俊斬》!」


転移魔法で俺の背後を取り、短剣を降り下ろす。辛うじて刀で受けるが、その一撃はかなり重い。

危うく刀を取り落としそうになったが、何とか持ち堪える。…だが、体のバランスを崩してしまった。



ユウサリを見ると、詠唱を開始しようとしているところだった。


マズイ、このままだと……


いや…!


「与えるのは風の「《飛燕旋空刃》!」…なっ!?」


うまく詠唱を中断できた。そのまま至近距離で回転斬りのように動かしながら上へ飛び上がる。

そして落下する勢いを利用して水平斬りを放つ。


「っ!」


当然、詠唱中だったということもあり、無防備だったユウサリに見事当たる。


「スキだらけだぜ、ユウサリ!」


即座に距離を取り、刀をヤツに向ける。

で、ユウサリは少しよろけたが何とか立ち直り、苦笑しながら短剣を構える。


「まったく……詠唱中断狙いとは…。少し予想外ですよ。比較的短めのを使おうとしたのに……」


「詠唱したりする所が魔術師系の最大の弱点だろーが。…即発魔法だったら別の話だけどよ。」


…確かにユウサリは魔術師だ。だが、それと同じくらい短剣の扱いも上手い。魔術師とは思えない程の物理攻撃もアイツはこなす。

まあ…原因は例の五百年前のアレの名残なんだろうけど。



まあいい…今は戦いに集中しねぇとな!



お互い武器を構え、距離を取ったまま睨み合いが続く。




……いや、違う…!



(いかづち)よ、鎖となり我が意思に従え!《チェーン・ライトニング》!」


「そうだろうと思ったぜ!《光波一閃》!」


鎖の形をした雷が複数俺に向かって来るのを衝撃波で振り払う。もう一発放ち、それが地面に当たり、砂煙がたつ。距離は離れているが…一応視界封じ成功だ。



…と思っていたら。


「!」


砂煙の中から雷の鎖が数本飛び出てきた。


一瞬反応が遅れ、後方に回避しようとしたが、一つの鎖が左の足首を捕らえた。同時に電撃も食らう。…まあ、闘技場の魔法もあって感覚だけだが。



(畜生…やるじゃねぇか…!)


やられっぱなしとか俺の性分じゃねぇ!鎖は切らせてもらう!



「風よ、矢となり降り注げ《ウィンド・アロー》!!」


空から風の矢が降り注ぎ、鎖を断ち切る。



そのまま空中に移動し、刀に魔力を込める。


「《天ノ刃》!」


下にいるユウサリに向かって無数の光の刃を放つ。これなら……



「残念、そっちにはいませんよ。」



すぐ後ろから声が聞こえる。振り向くと転移魔法で移動したのか、ユウサリがいた。



「うげ……!」


ユウサリはにこりと笑う。


「まあ、なかなかの戦法でしたよ。視界を封じて上から攻撃する。でもあれでは欠点がありますよ?」


そう言いながらユウサリは短剣を降り下ろす。刀で受け止めるが、相変わらず一撃が重い……!俺、一応怪力持ちなんだけど!←

怪力なかったら多分…押し負けてる。


「あれでは……貴女側も相手の姿を確認できなくなってしまう。お互いの姿が見えなくなるならば見える所に移動する……それは横か上に。でもって確実に相手を倒そうとするならば下にいる相手を上から攻撃する。しかもかなりの広範囲を攻撃できる技か魔法で。」


ガキン!と刀と短剣がぶつかり合う。


「…ったく!そこまで読めてんのかよ!」


「ええ。なんとなくですけども。…でもフランの話によれば、その相手…余程の力の持ち主。恐らくこれくらいのことはしてくるのでは?」


「……確かに言えてるな。」


「そう言う訳で……」


ユウサリは笑う。だが…目は笑っていない。


なんか…嫌な予感が…!


「吹っ飛んでもらいますよ!! 風よ怒れ!《テンペスト》!」


「な……あっ!?」


短剣を突き出したかと思えば、その先端には術式が!見えない風の刃と竜巻が直撃する。


「くっ……!《光波一「《チェーン・ライトニング》!」な…!?」


技を出す前に刀に雷の鎖が巻き付く。そして電撃。

…これ…闘技場の魔法がなかったらヤバいんじゃね?←


竜巻は地上に向かって落ちていく。…あー…これは…


「《襲蒼墜斬》!」


蒼い軌跡を描きながらその一撃を叩き込まれ、一気に地面に落ちた。


…これ…闘技場で戦って正解だわ、うん←


…で、仰向けの状態で倒れている俺に馬乗りになるようにしながら、ユウサリは短剣を俺の首に突き付けた。

そしてニッコリと笑う。


「私の勝ちでいいですよね?時雨」


「…あーー…ムカつく。つか降りろ、今すぐ!」


「貴女が負けを認めたら、退きますよ。」


…負け、ねぇ……


思わず口角を上げる。それに気づいたのかユウサリは怪訝そうに首を傾げる。


「何故……笑うのです?」


「…本気でそう思っているのか?ユウサリ」


「それはどういう――――」


そこまで言い掛けてユウサリはハッとしたように顔を上げた。


その視線の先……つまり空。

そこから無数の光の刃が降ってくるのが見えた。


「しまった…!」


「逃がさねぇよ!《シャドウホールド》!」


ユウサリの影に向かって魔力を結晶化させた刃を放つ。瞬間、ユウサリの動きは止まる。


「じゃあなっ…と!」


《天ノ刃》の範囲外の所まで一気に走り、《マジックウォール》を張る。


直後、刃が落ちる音が響き渡り、砂煙がたった。



「……俺の勝ちだ、ユウサリ!」


砂煙が晴れると、ユウサリは倒れていた。…まあ、動き封じて《天ノ刃》直撃だからな…。まあ、傷は付いていないだろうから大丈夫だろう。


…で思った通り、ユウサリはうー…と唸りながら起き上がった。


「…完全に油断してました…。」


「ははは!どうだ!」



…空中から《天ノ刃》を放った時、時間差で落下するようにとわざと上に留めさせて置いた。うまいタイミングで落下してきたからよかったぜ……


「…本当、流石ですよ。」


「…お前もなかなかだったぜ、ユウサリ。」


「それはどうも。…でもあの時、倒れたままでとどめ刺されたらどうするつもりなんですか?」


ユウサリがそう問いかける。


「そんなの……俺の不老不死の能力使って何とかするんだよ。この間だって死んだと思わせておいて攻撃したし。」


そこまで言ってハッとした。…ヤバい、言っちまった…!


恐る恐るユウサリを見ると、ニコニコと笑っていた。


「へぇ……この間って…フランと貴女が行った時のことですよね?…能力、使ったんですか。」


恐ろしい程にこやかに言うユウサリ。……キレてるよ…コイツ…!!


「ま、まあなー…ははは…」


頼む、見逃してくれ!と念じながらそう言う。


…が、祈りは虚しく、ユウサリは俺の肩をがっしりと掴んだ。そしてニッコリと笑いかける。


「時雨、このあとは説教です。」


「うあああああああああ……マジかよ…!」


手合わせには勝てたが…説教とか……ある意味負けじゃないかあああ…!


「あー……しぐ、ドンマイ!」


リットがグッと親指を立てながら言うが……なんとも言えない気分だ。


「げ…解せぬ……」


俺は思わずそう呟いた。



…因みに説教から解放されたのは三時間後であった。

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