第十四話 灰色の青年
今回は長いです。
そして流血表現と残酷な描写に注意。
「さてと…」
例の神殿近くに到着。そしてすぐに街へ向かった。
「時雨っ…!」
「ついてこい、フラン!」
レディアの予言めいた言葉もあり嫌な予感がする。
フランの腕を掴み俺は走り出した。
◆
街の中は妙な感じがした。なんて言うか…重苦しいって感じ。暗雲が立ちこめているのもあるのか、街の中の人達の活気とかも前に来た時より薄れている気がした。
「…なんだか…暗いね。」
「ああ。」
どこに向かうべきか。なんとなくだが…リリアの所…そんな気がした。
…ぶっちゃけ、リリアの家…アルバニア家の屋敷がどこにあるのかなんて知らん。←
まあ、その辺の通行人とかに聞けばいいだろ…
「―…ッ!?」
ぞわっと悪寒がした。…しかも…かなりヤバそうな…
「時雨…?」
「…こっちだ。」
「え?でもそっちは路地…」
戸惑うフランの腕を引き、路地に入り俺が身を屈めるとフランも同じように屈んだ。
「フラン、結界を張ってくれ。」
「え…いいけど…?」
まだ戸惑いつつも赤い術式…"禁術の結界"を展開させ、俺とフランを結界が包む。
その直後。
…ゴオォッ!!
暴風が吹き、街道にあったもの全てを吹っ飛ばした。
…同時に、赤い液体も飛び散る。
「……!」
ただの暴風じゃない…これは…"鎌鼬"か!?
「…わりとあっさりだったね。もう大丈夫そうだよ」
「みたいだな。結界は張り続けてくれよ?」
「りょーかいっ」
結界を張ったまま路地から出ると…そこは酷い有り様だった。
先程の"鎌鼬"によって負傷した人々。バラバラにされてしまった看板や商品、屋台の残骸。
それだけならまだいいほうだ。
「うっ……」
鉄のような匂いが鼻をつき、視界に何か丸いものが見えた。
…その丸いものは元々人間だったものだった。目を見開き驚いた表情のままでそれは転がっていた。
…なんであんな所にブーツがあるんだ?よく見ればそれは切断された人の足だった。身体がバラバラに切り裂かれ、原形を留めているのはまだしも…頭が割れ、中身が飛び出しているものもあった。
「……っ」
思わず口元を手で押さえる。フランも目をぎゅっと閉じて僅かに震えていた。
そして同時にあることを思い出す。
血が滴る短剣
返り血に汚れた白衣
光を宿さない瞳…そして狂った笑顔
周りには原形を留めない肉塊となった人々
狂った…夕陽色
まるで…あの時の光景と似ていた。
「…時雨、大丈夫?」
「っあ…ああ。まあ…気分はあまりよくないがな…」
グロいといえばそうだが…その一言で終わらせていいのかわからないくらい惨状だ。
でも…さっきの"鎌鼬"が何処から来たのか…気配の大元の場所が特定できた。
「…行くか。」
転移魔法の術式を展開させ、気配がした所に俺らは転移した。
―――――
転移先・何処かの庭
「よっと。」
「ここは…庭?」
「…みたいだな」
ただ…広さはかなりある。辺りを見渡すと屋敷のような建物が見えた。それと…兵士達の姿。何かを探しているような感じだが…さっきの"鎌鼬"のせいか?
そう考えていると、後ろの方から誰かが叫んでいるのが聞こえた。
「おい!ここで何をしているんだ!?」
「ん?」
振り返ると一人の兵士がこちらに向かってきていたところだった。
お互いの姿が見えるまで近づいてくると兵士が「おや?」と声をあげた。
「シグレさんかい?」
「そうだが……ってアンタだったのか。」
声を掛けてきたのはあの時の兵団長…アルフだ。
「また会えるなんて…ん?そこの娘は?」
「あー…コイツはフランシア。俺の相棒みたいなヤツさ」
「あっ…相棒…!!」
いきなりフランが目を輝かせて俺を見つめてくる。…いや…なんでこんなに期待している感じなんだ?←
すぐにはっとしたのか背筋をピンと伸ばし、アルフを見た。
「はい!そうなのです!わたしは時雨の相棒のフランシアです!」
…心なしか口調変わってないか?しかも興奮ぎみだし。
「そうなのかい?」
「そうなのです!!」
本当…何なんだか。←
「あー…盛り上がってるところ悪いが…アルフさんよ、ここってアルバニア家の屋敷か?」
「その通り。この間の犯人が侵入したとの情報が入ったんだ。」
あまり浮かない表情でアルフが答える。…なんとなくそんな気はしていたがな。
「あの"鎌鼬"も犯人のせい?」
「おそらくそうだと思われてる。」
「凶悪犯ってレベルじゃ収まりそうになさそうなヤツだな…」
俺がそう言うとアルフは苦笑しながら頷いた。
さらにアルフに訊こうとした時
「きゃあああああああああああああっ!!」
甲高い女性の悲鳴が屋敷から響いた。
同時に、ビリビリと強い魔力が放たれる。
「い…今のは!?」
「まずいっ!」
アルフがそう言うと屋敷に向かって走り出す。
一度フランと向き合うと頷き、その後に続いた。
―――――
アルバニア家・屋敷の中
「なっ…これはっ!?」
屋敷の中に入るとすぐに執事やメイド、兵士達がそこらじゅうに倒れていた。負傷はしているが…生きているみたいだ。
「…一体何のために…!」
悔しそうにアルフが顔を歪める。すぐにフランがその先を駆ける。
「こっち!」
「だそうだぜ?アルフ団長」
仲間達の状態を診ていたようだが致命傷を負ったものはいないらしく俺を見て頷き、フランがいった方に走り出す。
やっぱりその先も人が倒れている。しかも…奥に行くほどその数は増えている感じ。
ってことは…犯人はそこにいるのか…?
俺達は倒れている人々を踏まないように注意を払いながら廊下を進んだ。
◆
進んで行くと何故か"人"の数が減っていた。…いや、正確には…街の中の時の様な惨状だった。まあ、街よりは犠牲者は少ないが…さっきまでいたところと比べると負傷者だけでは収まりそうにない。
やがてある部屋の前にたどり着いた。同時に、一人のメイドが廊下に向かって倒れ込む。
「っ…う……」
そのメイドを見てアルフの顔がみるみるこわばっていく。
「…アーシャ!?」
「……兄…様…?」
アルフは彼女に駆け寄り、そして抱き寄せて傷の様子を見る。
「…酷い……っ…一体誰が…!!」
その傷は脇腹にあり、まるで鋭い牙で抉られたようになっていた。あれじゃ…普通の治癒術じゃ治すことは難しいだろう。
でも…一体誰が…
「オレだよ。」
部屋の方から何処かで聞いたことのある声がした。
その声がした方……部屋の中を見ると一人の青年が窓を背にぐったりと気絶しているリリアを抱えて立っていた。
「…ッ!?お前は…」
俺が言い終わる前にソイツはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ああ、アンタらには用はないから。じゃあな。」
それだけ言うとリリアを抱えたまま窓からヒラリと飛び降りてしまった。
「逃げられちゃったよ!時雨、追わないと!!」
フランが俺を揺さぶる。でもそんなことは気にもとめなかった。
なんでかって…さっきの青年が気になったからだ。
濃い灰色の髪と赤い瞳、灰色系の服。色が違うのを除けば……リヒトと同じだ。
声は…異世界のリヒトに会った時に聞いたのと同じだったから…恐らく彼と同じなんだろう。
でも…何のためにリリアを、そして街を襲ったのか?
「アーシャ!?しっかりしろ!」
アルフの悲鳴に近い声に我に返った。振り返るとアーシャはぐったりしていて…しかも顔色も血の気が引いて青白くなってしまっている。…これはまずいな…
踵を返して二人の所に向かいながら俺はコートのポケットを探る。小さな瓶を探り当て、それを取り出した。
瓶の中身はぼんやりと淡い光を放つ液体のような物だ。…"神の癒し"…神々が作り出す事ができる霊薬。あらゆる傷を癒し、全ての病を治す事が出来る薬だ。ただ、一度に大量に作ることは難しく、滅多に使うことはない。
(まあ…今回はヤバいだろうし…使っていいだろ)
そもそも、俺は回復能力が異常に高いから使わないがな。
「アルフ、後ろを向いていてくれないか?」
「あ、ああ。」
戸惑いながらもアルフは頷き、後ろを向いた。
「んじゃ…ちょっと失礼。傷口を見るからさ…」
そう言いながらアーシャの服をたくしあげ、傷口を見る。…やはり酷いな。脇腹を抉るような傷痕。それに、思ったより深い傷だ。
瓶の蓋を開け、一滴だけ傷口に落とす。雫が傷に触れた瞬間、アーシャが顔を歪める。
「……つぅっ…」
僅かに開いている口にも一滴落とした。…少量でも効果はかなりあるからな。だいたいこれくらいだろう。
すぐに効果は出始め、深い傷はみるみる塞がっていく。
服を戻し、アルフに「もういいぞ」と声を掛ける。
「…治療はおわったのかい?」
「ああ、もう大丈夫だ。」
アルフは少し心配そうにアーシャを見つめていた。すると、彼女はぼんやりと薄目を開いた。
「アーシャ!」
「……兄様…?……シグレさん…?」
「ああ。一体、何があったんだ?」
そう訊くと、アーシャは表情を曇らせながら呟いた。
「……いきなり、窓から青年が入ってきたんです……対抗…しようとしたら…隙をつかれて…」
「…成る程…」
俺が頷くと、アーシャはコートの袖を掴み、涙を溢しながら言った。
「……お願い…です………リア…様を…助けて下さい…!!」
「……!…わかった。必ず、助けてみせる。」
そう言って立ち上がり、アルフが止めるのを気にせず、俺とフランは屋敷の外へ出た。
向かうのは…青年が行ったと思われる場所……
恐らく…神殿だ。
―――――
「……さて、役者はあと一人。」
灰色の青年が空を仰いだ。そして、腕の中で気絶しているリリアを見る。
「…ちゃんと会わせてあげるよ。……ヤツが死にゆく様をね…!」
そう言って、彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
またもや…無理矢理感が…←
そして…急展開。果たしてどうなる!?←




