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「ふむ。」
「ふむ。じゃねぇよ!どーするの!?これいきなり手詰まりなんじゃない?」
「まぁ、ちょっと今の段階では結論だせんわ・・・」
「そんな・・」
「まぁ、お主の魔力の量なら、まだまだポーションは作れそうじゃし、修行すれば、もっと良いアイテムも作れるじゃろうし、町の外での狩りでも良い素材が捕れるようになるかもしれんし、そう焦らなくともよかろう。」
「だって、そんな悠長なこと言ってたら間に合わなくなるっ!」
晴日は泣きそうだった。
「間に合わないとはどういうことじゃ?」
いよいよここで、晴日は堰を切ったように一気に事のなりゆきを話し始めた。
「なるほどのぉ、あんたまたずいぶんとやっかいなヤツに目をつけられたもんじゃなぁ。」
「そのことは、ちょっと感じてる。」
「はるきゃんゴメン。」
「あんたが謝る必要ないでしょ!」
晴日がキッとマーツを睨む。マーツが尻尾を丸めて縮こまる。
「まぁまぁ、確かに200万ドランっていうのは途方もない金額じゃし、流石にわしもそれを建て替えるようなお人好しじゃないでな。ただ、あんたはちょっと面白い資質があるでな。まぁ、いろいろと試行錯誤してみぃ。ワシはワシで、あんたのマナの事。この途方もないドルポーションの在庫の販売など、いろいろやってみるわい。」
「ありがとうミーツさん。」
「まぁ、ワシも商売でやってるんでな、お礼を言われるほどの事は、なんもしてないわい。とりあえず、着替えの服は安物にしといたから、上下セットで1000ドランで良いよ。」
「え?今朝渡されたこの着替えの服って、、、、」
「ばっかもん!世の中にタダのご好意なんてもんが、そうそうあると思いなさんな!」
「は、はい・・・」
「まぁ、そうは言うても、あんたも充分にここのお得意さん並の儲けをうちに落としてくれそうな感じじゃし、とりあえず、ポーションも作れなくては困るじゃろうから、特別にウチの妖精を一人お主に付かせてやろう」
「え?本当ですか?」
「うむ。ちなみに妖精は、妖精の国で本当に信用を得るような人物でなければ、連れてくることも、一緒にこうやって働くことも出来んからな。本当に後世まで感謝しろよ。」
「おい、ユージンや。」
「なんだいミーツ婆」
奥からユージンが汗まみれで出てきた。
「なんだい、もう仕事始めてたのかい?」
「ああ、昨日は大仕事したんで、おかげでその残務がたっぷりだよ。」
「そうかい、どうだい、良い仕事になりそうかい?」
「ああ、ドルポーションってのは新しい仕事で、他の妖精も喜んでたし、生成時に出るポー粕も、また、変わったのが出てきてな。俺達妖精にとっても、新しい展開が生まれてきそうだよ。」
「へー、それはまた面白そうだねぇ。妖精の国に売れそうかね?」
「ああ、ちょっとまだ特性は掴みきれてないけど、切り口しだいではいい商売になりそうだよ。」
「よしよし、それじゃ、この嬢ちゃんに借りを作るって意味でも、ローカズを呼んできな。」
「え?ローカズですかい?でも、あいつは・・」
「いいから、呼んできなって言ってんだよ!」
「へい!」
そういうと、ユージンは奥に入っていった。
まもなく奥から引きづられるように一人の小人が出てきたのだった。
小人の年齢っていうのは、ちょっと分かりにくいが、少なくともユージンの倍は年老いた小人だ。
「ミーツ婆連れてきたぜ。」
「うむ。さぁ、嬢ちゃん、このローカズを連れていきな。」
「ありがとうございます。ローカズさんよろしくおねがいします。」
「・・・・・くぅ」
ペコっと軽くローカズが頭を下げる。なんだかユージンと比べると覇気も元気もなく、顔色も悪い。
「ミーツさん、なんだかローカズさん顔色も悪いし、外に連れだして大丈夫なんでしょうか?もしかして、病気なんじゃないですか?」
「うむ、病気と言えば、病気なのかもしれんな。でも安心せい、身体はどこも悪くないわい。ローカズこの嬢ちゃんと一緒にいってくれるな?」
「どーでもいいよ」
ぼそっとローカズがつぶやく。
・・・・・
軽い沈黙が店に流れた。
「まぁ、とにかく、こいつを連れて、町の外に行きな。いいね、くれぐれも街中で商売はするんじゃないよ、商売敵は一気に私の敵だからね。エリアは決めて、ルールは守ってだ。」
「ミーツさんいろいろとありがとうございます。」
「うむ。」
「それじゃ、行ってきます。って、その前に、先程買ったエーテル改。7本余ってる分を売却したいのですが・・?」
「うむ。いいぞよ。1本250ドランで、7本だから1750ドランじゃな。」
「え?これさっき1000ドランで買ったんですが?」
「うむ。もうお主が手に触った時点で中古品じゃ。何かそれ以上言うことはあるか?勉強になったじゃろう、これがビジネスっちゅうもんじゃ。本来なら授業料を1万ドランほど欲しいところじゃぞ。」
「いえ、凄くいろいろと勉強になりましたっ!」
ドンッと支払いを済ます。
「うむ。ちょっとトゲのあるお礼じゃが、大事なお客様じゃからな、流しておくよ。本当にありがとうございました。」
深々と頭を下げた、満面の笑みのミーツ婆に見送られて、店を出る。
「いやー凄いお婆さんだったねー」
マーツが開口一番に話しだす。
「私もびっくりした。あの人何歳なんだろう、凄い商売好きみたいだけど、稼いだお金使う時間まだ残ってるのかなぁ?」
「いやいや、それはるきゃん超失礼だから・・」
「あはあは、ごめん、冗談冗談。でも、凄いね、まさか、このぼろっちぃ着替えに値段ついてるとは思わなかったわ・・・廃品だと思ってた。」
「きっと、廃品だよ。需要と供給ってやつで、需要があるところには、廃品でも値段つけて売るってところは、ミーツ婆根性だね。」
「本当に商売好きなんだろうね。エーテル改だって、買ってすぐに売ったのに、半値どころか、四分の一に価格がなってたもんね。本当に、なすすべなしでした・・・」
「まぁ、しょうがないよね。いろいろ教えてもらった授業料1万ドラン取られなかっただけでも良しとしようよ。」
「そうやって、なんか得した気分にさせるように、ああいう言葉を織りまぜてきてるのかなぁなんて、どんどんと疑念の輪が広がっていくね。最後にあの満面の笑みと「本当にありがとうございました。」って頭を下げられちゃたら、もう何も言えないよね。」
「うん。本当に凄い気迫みたいなもの感じたよ。」
そうやって話しながら、歩き、20mも進んだだろうか、町の外へ向うため、角を曲がろうとする時に、ちらっとミーツ婆の店を振り返ると、わざわざ膝が悪いのか、膝に手を当て不恰好なお辞儀をして見送るミーツ婆の姿が目に入った。まさか、店の外に出てきて、後ろから見送られてるなんて思わなかった、晴日もマーツも、一瞬動きが
止まってしまった。
「まさか、さっきまでの会話全部聴かれちゃったんじゃ。。。?」
マーツが青い顔でひっそりとつぶやく。
「あんなに遠くで?まさか、聴こえるわけ、ないよ・・」
言いながら大きく息を吸い込み
「ミーツさぁぁんありがとぉーまたねぇー」
大きな声で別れの言葉を言って手を降った。
ミーツ婆も手を振り返してくる。
そして、心の中に、念話のようにミーツ婆の声が響いたのだった。
(もちろん聴こえておるよ。ワシは魔女じゃ。道中気を付けてなぁ。)
びっしょりを冷や汗をかき、マーツと晴日は町の外へと向かった。
その間、マーツの頭の上に乗っているローカズは終始無言であった。
途中経過報告
晴日の所持ドラン。
+ ポーション15万ドラン
- エーテル改1万ドラン
- 服2000ドラン
+ エーテル改 1750ドラン
合計 139,750ドラン
目標ドラン2,000,000ドランまであと
1,860,250ドラン