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アリフェレット異海譚  作者: 水炊き半兵衛
Ep1:北方四国貿易網
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12.反アリフェレット勢力

 何だかんだと色々やっていたらこの世界に来て一年以上が経過している。造船して、東への貿易海路の開拓。これで北方四国の内、三国と貿易をしていることになる。

 マーメイドたちの歌劇も東では人気な様で、チケット以外にもグッズ販売を行って、その利益でアズリア神州の特産品を買っている。

 虎松、兼次鉄鉱、その他色々な嗜好品や贅沢品。今やアリフェレット王国はバルトルード商会の独占状態となっている。

 中小規模の商会は既に傘下に入っており、そのまとめ役はアーシスが受け持っているとシュトラウスから聞いた。


「これで残る懸念はイーギス属国になるんだが、前にも増して、反アリフェレット勢力が厄介だな」


 一触即発、とまでは行かないが、どうにも殺気立っている気がする。

 バルトルード商会の情報網から入ってくる情報によれば、反アリフェレット勢力に属しているのは大半が上流貴族のようだ。王族はアリフェレット恭順派らしいから、いざともなればクーデターくらいはやらかすかも知れん。


「ヴァンパイア、マーメイド、鬼。一応頼れるヤツらはいるんだけどな……」


 おいそれと助けてくれなんて泣きつくわけにもいかない。いざともなれば話は別だが、なるべく借りは作りたくない。


「これでアリフェレット恭順派が倒れたら、真っ先に攻め込んで来るだろうな」


 大昔に勝利したと聞くが、実際のところどうなんだろうなぁ。アリフェレット海戦記でもそれ以上の設定なんて無かったし。

 でもまぁイーギス属国の動きはある程度注意しておくとして。今の問題は、だ。


「それで、兼次鉄鉱の船はどうなの?」

「そっちも苦戦中だ。何にせよ、加工が難しいんだ」


 兼次鉄鉱は水に浮く鉄であり、錆びず、強靭な鉄鉱である。しかし、この時代ではまだ兼次鉄鉱を加工する技術は確立されていないようだ。

 アリフェレット海戦記でも一番目のサプリで東方が実装されて、兼次鉄鉱が船の素材として使用可能になったのはその次に発売されたサプリからだ。

 まずキールが作れない。そしてプランクがくっつかない。木造船と同じように造れないので、今のところ新しい造り方を模索しているとか。

 兼次鉄鉱の船が完成すれば、海戦でも何とかなるだろう。そもそも魔法戦艦を今のところ有しているのはこの国だけと聞くし、量産できればもしかしたら……。


「魔法戦艦を量産した方が早いか?」

「使いこなせる魔法使いが足りないわよ」


 そうなんだよなぁ、魔法戦艦の能力を余すことなく使おうと思えば魔法使いの存在は必要不可欠。

 しかし今のところバルトルード商会に所属する魔法使いはアスパーとレティの二人だけ。そもそもこの時代の魔法使いの評価は如何に強力な魔法が使えるかの一点のみだと言う。

 故に魔法使いは肩身が狭く、世間一般にもそこまで浸透していないのだとか。よくよく考えてみれば魔法使いの需要が高いならアスパーなどとっくに売られていただろうな。


「う~ん、つくづくこっちは価値観が違うなぁ」

「まぁ、東方で魔法使いはほとんどいないって言うしね。仕方が無いんじゃない?」


 そうじゃないんだが、そうとしか言えない。そもそも異世界から来ましたとか言っても新手の冗談かと笑われるか、スルーされるかだろう。

 ともかく、まずは兼次鉄鉱の加工。そしてイーギス属国への対応。この二つの難題が終われば、後は南に目を向けるだけだ。

 未だにアズリア帝国とレストール群国は戦争を繰り返しているらしいが、いつこっちに火種が飛んでくるか分からない。

 注意すべきは北と南。今のうちに対抗するための戦力を整えておかなければ。



 あれから更に数か月。とうとうイーギス属国に変化があった。反アリフェレット勢力がイーギス属国に対して反旗を翻したそうだ。大々的にクーデターデビューを果たし、アリフェレット王国へ宣戦布告をけしかけてきた、

 こちらは何とか兼次鉄鉱の加工の目途が立ち始めたと言うのに、何ともタイミングの悪い話だ。とは言え、イーギスへ内政干渉をするワケにもいかないのでどうにもならなかったのも事実らしいが。

 まともに戦える船はフォアシュピール一隻のみ。対するイーギスの軍勢は百隻を超える大船団と言う。

 ただし、帆船ではなくガレー船……つまりは手漕ぎの船というのがまだ救いか。ガレー船は風向きに左右されにくい代わりに長距離の航海には向いていない。……のはいいんだが、イーギス属国とアリフェレット王国ってそこまで離れてないんだよなぁ。


「イーギスの船団は昨日、出航したらしいわ。狼煙が上がっていたと北の方の港町から連絡があったわ」

「態々狼煙を上げるって、敵は相当バカじゃないか?」

「勝てると思い込んでるんでしょ。こっちにはまともな船が一隻、それも貿易用となれば脅威にも思わないでしょうね」


 反アリフェレット勢力は、アリフェレット王国を過小評価するきらいがある。故の慢心とすればこれ以上にラッキーなことはない。

 魔法戦艦もなく、出航したタイミングも把握しており、慢心と油断がおおいにある。人数的にはこちらが劣勢とは言え、負ける要素はほぼ無い。

 質を上回る量で攻められれば厳しいが、向こうの優秀な人物はみんな恭順派だったので処分されているだろうとはシュトラウスの言葉だ。

 残ったのは能の無いクズ貴族ばかり。丁度いい、南方二国の模擬戦相手として迎えてやろうじゃないか。


「海に関してはバルトルード商会が一任しても?」

「えぇ、もう許可は貰ってあるわ。レンヤ、任せたわよ」


 そう来なくては、と俺はシュトラウスに笑って見せる。

 海戦に関してはそこまで得意ではないが、何も海戦だけが勝利に直結するかと言われればそうではない。

 何事も積み重ねだ。

 ちょっと未来からは外れるかも知れないが……退場願おうかイーギス属国。

 不穏な芽は摘むのみだ。でなければ南には到底敵わないだろう。後顧の憂いなく、南の方へ戦力を集中させるための第一歩だ。



 ふん、所詮は傀儡よ。腑抜けた王にその側近。何をヤツらに媚びへつらう必要があるのか。

 大昔の戦争では負けたかも知れんが、かの無敵艦隊の無い今こそ絶好の好機よ。


「アリフェレットを侮るな!」


 目の前で内臓をぶちまける女王だった肉塊が、口酸っぱくとばした言葉だ。ふざけるなよ小娘。たかだか十六の貴様に、イーギスの大いなる歴史が理解できるものか。

 さらばだセレス・グラド・ニフ・イーギス。最早、骸の貴様に価値は無い。


「オニキス卿、準備が整いました」

「うむ。いよいよだな」


 城に籠っていた恭順派の始末も終わったか。やれやれ、我ら選ばれし貴族に逆らうとはやはり愚物であったようだ。

 愚か、愚か、愚か。このジェラルド・センバー・オニキスに屈していれば命だけは助けてやったものを。全く所詮はクズか。


「では行くぞ! 今より、アリフェレットへ進軍する!!」


 この戦に負けは無い。アリフェレットのクズ共め、このイーギスの選ばれし貴族が粛清してくれるわ。

 狼煙を上げ、我らは南へと下る。目標はただ一つ。アリフェレット国王の首のみよ!

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