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光の奔走  作者: 如月あい
四章 光の策略
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歪みの始まり

夜の暗い室内のわずかな灯の中で、黒髪の女性は何度も読み返した手紙を読んでいた。

 黄ばんだ紙が一枚、そして、少しだけ新しい紙が一枚、計二枚が、その手の中にはあった。

 黄ばんだ紙の方を、女性は手に取る。





親愛なるシェリア・リエーソンへ


 こういうとき、僕は何から書き始めるべきなのだろうね? いやはや、十二年も生きていながら、僕は私用で手紙を書くなんて初めてなんだ。

しかし、そこは伯爵家に育ったものとして、君が読むのに苦にならない程度の文章を書けるのだと宣言しておこう。安心してこの先をよんでくれ。

 前置きが長くなってしまった。

 いや、もしかすると短いのかもしれない。

 僕が今日、わざわざ君に手紙を書いたのは、言うまでもない。

 

 僕は君に恋をしてしまったらしいのだ。


 学業ではいつも首位を保ち、武道においても君は優秀な生徒だ。

そして、また、僕も、君に学業こそ劣るが優秀ではある。そして、リエーソン家より、我がホーンテッド家の方が力もある。

 さらに君のその美しさ。シネラリアの女神という呼び名が何よりも相応しい君は、僕の相手に何一つ不足などないのだ。

 ホーンテッドに及ばないと言え、リエーソンは素晴らしい家だ。何より爵位も互いに見合い、僕たちは素晴らしいパートナーとなるだろう。

 そう、互いが互いに相応しい。

 それに加えて、愛情も伴うとなれば、これ以上のことはないではないか?

 君は何を取ってみても僕に相応しい。

 そして僕は君を求めている。

 返事はまた手紙で書いてくれればいい。

 君の生真面目さからして、こういう話は卒業の後でいいと言うかもしれない。

 しかし、婚約と言う形だけは、卒業前に整えておいても僕は一向にかまわないと思っているんだよ。

 ホーンテッドとリエーソンの繁栄のためにも、僕たちの婚約には意義がある。

 賢くて聡明な君は、迷うことなく僕の手をとるだろう。

 しかし僕は待つとしよう。

 世の恋人には、そういう段階を踏むことが、必要とされるらしいから。

 返事はすぐにでもしてくれると嬉しい。

 僕は家に話を通して、婚約を発表する準備をしなければならないのだ。そのためには、どうしても早い返事が欲しい。

 君の心の準備を悠長には待ってはいられない事情がこちらにはある。

 なに、もちろん君には手間をかけない。

 これは男の仕事だろう。なにより、この僕が惚れたんだ。

 僕が準備をしてしかるべきだと、当然思っているよ。

 僕の書きたいことは以上だ。

 では、早い対応を願っている。



                 君の未来の夫 ダンテ・ホーンテッドより




 手紙を読み終え、ルフレは深いため息をつく。

 ダンテ・ホーンテッド、今となってはダンテ・ルミエハだが、彼は学生時代、本気でこの手紙をシェリア・リエーソン、つまり後のシェリア・ヴェントスに送ったらしい。

 この手紙を受けとり、読んだとき、ルフレはすべての糸がつながったことには素直に喜べた。

 しかし、この手紙は紛れもなく本物であるならば、どうして、今があるのか、どうしてこうなってしまったのか、ルフレには理解しがたい。

 そして、もう一枚の新しい方の紙には、短く、懐かしい文字がそこにあった。


 

 小さな大人  ルフレへ

 

 この手紙は答えであり、動機であると私は思う。

 この手紙が届いたとき、私と話ができる状態なら、私のところに来て。

 私は完璧な答えと証拠をあなたのために用意してるわ。

 

この手紙が届いたとき、私がもう、いなかったなら……。

 考えなさい。あなたの瞳の色は、何色かしら?

                 

            あなたの保護者でありたい レイラ・ストケシアより 

 


 いまだにルフレには謎だった。

 この手紙が送られてきたのは、ルフレが十七歳になる歳のこと。

 レイラ・ストケシアが死んだのは、ルフレが十五歳の時だ。

 そうなると、このレイラからあてられた手紙は、誰が送ったと言うのだろうか。

 そして、どうやってレイラがこの手紙を手に入れたのか、その方法も良くわからない。

 ただ、一つ、確実なことは、筆跡を照らし合わせてみたところ、間違いなく、この手紙を書いたのが、ダンテ・ルミエハ、あるいはダンテ・ホーンテッドであるということだ。

 この手紙が確かであることさえ証明できれば、ルフレにとっては、他は確かにどうでも良いことであったし、計画に差しさわりもない。

 ただ、レイラがすでに身の危険を感じてまで、調べてくれたことに対する誠意の見せ方が、嘘を織り交ぜて、真相を明らかにすることで良いのか、ルフレにはまだ、迷いがある。

 ―――ごめん。お姉ちゃん。それでも、私は、あの人を守りたいの。

 すべてを守るためには、計画を実行するしかない。

 そのための四年間。

「ごめん、デュエル……」

 首元にあるジャスパーをそっと、握り締める。

 それから、腰のベルトにあるラピスラズリに触れた。

「私は……選んだわ。すべてを解決するために、この道を」


四章がようやく幕開けです


正直言って、この章、最初読んだとき、

名前を見てもぱっと誰のことかわかんなかったかもしれないですね……。



さて、一つ、謎が解けました。

そして、これからは一気に謎が解けていきます。

ルフレとデュエルが見出した真実、そして、彼らが選ぶ道とは?


まだもう少し、二人の物語にお付き合いいただけると幸いです。

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