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光の奔走  作者: 如月あい
三章 闇の追求
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副隊長の抗議

さまざまな書類が整理されてずらりと並んだ部屋で、男二人はそれぞれ机に向かって作業をしていた。

 一人は、金髪碧眼で、いかにも優しそうな雰囲気の男性。もう一人は金髪碧眼で、どこか不機嫌にも見えるような雰囲気の男性。

「諜報科特殊部隊A系統第五小隊の副隊長シリヤです」

 ノックされるとともに、聞こえたきた女性の声に、男性二人は顔を見合わせてため息をついた。

「どうぞ」

 優しそうな雰囲気の男性が入室を許可し、扉が開いて、女性が入ってくる。

「今日も来ました、異動の件で」

 男性二人が問いかける前に、シリヤが言う。

「……やはり納得できないのですね」

「ええ。ウル科長がそれを承認しようとなさっているのも、私にとっては不可解です」

 ウルと呼ばれた優しげな雰囲気の男性は、その表情を少しだけ引き締めて、シリヤを見る。

「ルフレ隊長からの希望です。こちらも確かに彼女の言い分は納得してはいませんが、それでも彼女が、教育者としての才能があることを承知しています。あなたは十分優秀ですから、他の隊に回して、彼女の隊に他の者を入れるというのも、軍には利益があるのです」

 何度となく繰り返した説明を、ウルは再び言う。

「ですが! 私は直接交渉でルフレ隊長の元にいるんですよ!」

 当然シリヤが納得するはずもなく、すぐさま反論してくる。

 正直言って、ウルにも完全にはルフレの行動の意図が分からなかった。

 ただ、シリヤのこれからの成長のために、ルフレの隊ではない方が良いという申請だったのだ。

 そして、もし異動させるならその先はどこが良いと思うか聞けば、デュエルの名を上げてきたのだった。

「直接交渉で引き抜いたからこそ、シリヤ副隊長の成長を純粋に願って、異動希望を出したのだろう」

「ルフレ隊長の教える範囲を超えたなんて戯言、私は信じませんよ。自分のことは自分で理解しています」

 クロッカスの冷静なフォローにも、シリヤは即座に言い返す。

 そして、こういわれてしまうと、ウルとクロッカスももう何も言い返せないのだ。

 確かにシリヤは優秀な人材になってはいるが、ルフレには及ばない。ルフレと言う人物は、知識も頭の回転も、剣術においても、何においても完璧で、シリヤがそのどれかにでも追いついているとは言い難い。

「とにかく、彼女がなんといっても、科長が認めなければなしになるはずですよね? そんなわけのわからない怪しい理由で異動を認めないでください」

「……承知しかねると何度も言っているだろう?」

 クロッカスがウルのかわりに返答すれば、シリヤがそちらを向き直って宣言する。

「では何度でも言わせていただきますから! 失礼します」

 もう何度目かわからないこのやりとりを繰り返しながら、シリヤは部屋を出て行った。




「はあ……。あんなに異動を嫌がる隊員を見ると、ルフレ・ルミエハの影響力がうかがい知れますね」

 ウルがため息をついてぽつりとつぶやく。

「そうですね。それに、確かにルフレ・ルミエハが何をしようとしているのか、読めないところはあります」

 クロッカスが、そういって、書類を数枚、引き抜いた。

「これを」

 ウルにそれを渡し、ウルは目を通して、目を見開く。

「……なるほど。彼女が」

「ええ。そう思います」

 一つはシリヤの異動に関する申請書類。それはルフレ・ルミエハと名が記されている。

 そして、あとの数枚は、最近取り潰しが決まったエルバスティ家に関する告発文。これは匿名で、名は書かれていない。

 ただ、二つを見比べてみると、字を変えようとした努力は見受けられるものの、どうにも似たような癖がところどころに見受けられる。

「ルミエハの人間なら、内部事情を詳細に調べあげることは簡単でしょう」

 クロッカスがそういって、書類をもう一枚追加する。

「これも……。まったく、あの娘は本当に何をしたいんでしょうか。レイラ・ストケシアの件についても……」

 ウルが思わず口を滑らせてから、はっとしてクロッカスを見る。

「レイラの件に関して、彼女は確かに確信がありそうでしたからね。どこで調べ上げたのか、そしていったい誰なのか、私には分からないのが悔しいですが」

 そういって目を閉じたクロッカスを見て、ウルはため息をつく。

 いまだに失われていないレイラへの愛情。

 しかし、彼は嘘をつくことに決めた。

「そろそろ、動きそうですね。その件に関しても」

 これはウルの勘だったが、最近のルフレの動きを見ている限り、何かをしようとしているのは明らかだろう。

 おそらくシリヤの異動もその延長線上。

「……その時、私に、何ができるのだろう」

 ウルにではなく、自分自身にクロッカスはつぶやく。

 その言葉に、男二人は、きっと何もさせてくれないだろうと、心の中でどこか思っていた。


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