天然ふんわり少女の歓喜
小高い丘の上で、少年少女は、お弁当を完食し、太陽の日差しのもと、のんびりとくつろいで座っていた。
「あーあ」
ファリーナがため息をつく。
レオは少し驚いて、隣をみた。
琥珀色の瞳は、レオを見ることなく、ただ、遠くをみつめている。
「来年の今頃は、もう、お互いに学校に行っちゃってるんだね」
レオの疑問にこたえるかのようにファリーナは言葉をつないだ。
来年の今ごろ、五の月の終わりごろは、学校にも馴染みきった後だろう。
シュトレリッツ王国では、軍の養成学校も、商家のための学校も、文官の養成学校も、総合学校もすべて、一の月の一日目が始まりである。
軍人と文官の採用が、一の月一日目からであることから、そうなっているのだと思われる。
「そうだな。俺は寮生だから、この時期は帰ってこれないし」
三の月の建国祭を真ん中として、七日間の休日と、七の月と八の月の二か月間の休暇、十二の月の一か月の休暇以外は、学校の寮で過ごすことになる。
「レオはトランカ総合学校でしょ? 四年も通うの?」
「そうだな。まあ、がんばれば三年で卒業できるみたいだけど」
「そうなの? それじゃ、私と同じだね」
商家の娘のファリーナは、当然のごとく、商業の学校に通う。商業の学校は、飛び級なしで、三年だ。
「がんばれば、な。いろいろ知りたいことあるから、結局四年かかるかも知れないけど」
「四年も離れ離れかあ……。寂しいね」
「そうだな」
ファリーナののんびりした口調に乗せられて、思わずそのまま肯定したら、ファリーナがその琥珀色の瞳をこぼれんばかりに見開いてこちらを見ていた。
それを見て、レオは自分の顔が赤くなるのを自覚して、思わずそっぽを向く。
「本当?本当に、さみしいって思ってくれる?」
赤くなった顔を見られたくなくて顔をそむけているというのに、ファリーナは、下から覗き込むようにしてレオの表情をうかがう。
「嘘ついてどうするんだよ」
「わあ。嬉しいな。レオがそんなこと、言ってくれるの」
極力そっけなく返事をしたのに、ファリーナは、目をきらきらさせて、とても嬉しそうににっこりとほほ笑んだ。
その顔が、あまりにも愛らしくて、わずかの間見惚れていたら、今度は彼女の顔が寄ってきて、大丈夫かと心配されてしまった。
思わずレオはのけぞって、大丈夫と視線をそらしながら言う。
心臓の音がうるさい。
だが、今日はただ話をするために、ここに来たわけではないのだ。
その目的を、思い出し、レオはズボンのポケットに手を入れ、目的のものをひっぱりだす。
「それは?」
「……やるよ。明後日は、旅行でここにいないんだろ?」
レオがポケットからとりだし、ファリーナに突き付けたのは、いくつかの色の糸を丁寧に編みこんでつくってあるブレスレットだった。
そんなに高価なものではない。
ただ、その模様が、案外きれいで、ファリーナが好きそうかな、と思ったのだ。
「ちょっと早いけど……誕生日おめでと」
照れを隠せず、そっぽ向いてつぶやいた。
甘い香りがレオを取り囲む。
「ありがとうっ! レオ」
気づいたら、ファリーナに抱きしめられていた。
突然のことに全く反応できないレオを置いて、ファリーナはその態勢で話し続ける。
「明日からここにいないから、今年の誕生日プレゼントはないのかもって思ってたから、もらえたの、すっごく嬉しいよ」
とても感激しているファリーナをよそに、レオは完全に思考が停止していた。
「あ……えと、ファリーナが、毎年くれるから、返さないわけにはいかないだろ」
どうにかしどろもどろ言葉を返すと、ファリーナは、離れるどころか、もっときつく抱きついてくる。
「レオのそういうところ、好きだなあ」
特に含みもなくさらりと言ってのけたファリーナに、レオは耳まで真っ赤になってしまった。
「あれ? 真っ赤だけど……どうしたの?」
きょとんとして、少しだけ離れたファリーナに、先ほどから翻弄されまくっているレオは、ようやく一言だけ返した。
「バカやろ」
ロイとレンティにはない甘さですね。
ってか、主役二人なんかより
よっぽど恋愛小説っぽい。うん。
いちおう、私的には、レオとファリーナはダブルで、一部鈍いとこがあるっていう
イメージです。
ファリーナは、今作では珍しく、理知的でも打算的でもないかわいい女の子。




