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光の奔走  作者: 如月あい
一章 光の失速
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心配するもの、謝罪するもの

「珍しいですね。この組み合わせは」

 目の前の女性が、不思議そうに言う。

 金髪碧眼の少年は、幼い仮面をかぶったままだが、どこか何かを疑うかのようにこちらに目を向けてくる。

「確かにね。でも、考えがあってのことだから」

「わかってます。隊長は、いつでも数歩先のことを考えていますから」

 即座に切り返してくる自分の隊の副隊長に、ルフレは罪悪感を感じた。

「シリヤ……今回の任務のことだけど―――」

「―――ルフレ!」

 シリヤに話しだそうとしたところ、聞きなれた声に遮られる。

「どうしたの?セレス」

「……仕事に行くところなのはわかってるけど、急用だから。十分でいい、ルフレを借りてもいいかしら?」

 セレスはシリヤとジオに確認をとり、二人がうなずくのを見ると、ルフレを引っ張るようにして二人から距離を取る。

 どうしたというのか。

 こんな風に人払いをしてまで話す急用というのに心当たりがない。

「ねえ、ルフレ、何か、無茶してない?」

 碧い瞳がまっすぐにルフレの目を見てくる。

 心配そうな表情が、ルフレの心を波立たせた。

「無茶?いいえ。何も。今日のリーシェン行きだって、日帰りで帰ってこれる距離だし」

 無茶ならいつだってしているが、セレスはルフレの無茶は承知だ。そんなこといまさら聞くわけがない。

 それならば、彼女は、何を考えてここに来たのか。

「諜報部に通せないようなこと、調べてるんでしょ」

 ―――昨日の、見られてたのか。

 情報を受け取るのに、こそこそするより、喫茶店のような明るいところでのほうが、逆に人目につかないし、見つかっても噂にならないだろうと踏んだのだ。

 だが、敏いセレスに見つかったのは誤算だった。

 普通なら、セレスが城下町にいるような時間ではなかったのだ。昼下がりのあの時間は、ユーフェミア王女の庭園にいることが多いのだから。

「黙ってるってことは、間違ってないのね。昨日はユフィに頼まれて、城下町に出てたの。そしたら、偶然あなたを見たわ。ねえ、何について調べてるの? 諜報部でもなく、ルミエハの諜報員でもない人に頼むことなんて……」

 彼女なら、誰にもしゃべらないだろう。

 たとえ、ルフレが黙っていても。

「ごめん。話せない。あなたを巻き込めないわ」

「巻き込めないのは私だけ? デュエル隊長には言ってるの?」

 予想外の反応に、思わずルフレはたじろいだ。

 これはセレス以上にデュエルに話せないことなのだ。話すわけがないし、できれば悟られたくもない。

 ―――どうする? セレスにデュエルに黙っててほしいって言う? でも、そうしたらデュエルが関わってることをばらすことになる。

「もちろんデュエルにも話さないわ。誰にも、例外なく、よ」

 迷った末、そう答えておいた。

「……いいわ。でも、困ったら、頼りなさいよ。なんでも一人でやりすぎだから」

 セレスの顔が、一瞬、泣きそうに見えた。

 ずきりと心臓が痛む。

 心配してくれた親友にこんな顔させるつもりじゃなかった。

「引き留めて悪かったわね」

 そういって離れていくセレスを止めることもできず、謝ることもできないまま、ルフレは静かに目を閉じる。

 何があっても一人で解決しなければならないのだ。

 それは、デュエルが望んだことでもある。

「ごめんね。セレス」

 小さく謝り、待っていたシリヤとジオのところに戻った。

「個人的な話ですか?」

 シリヤの問いかけにうなずく。

 シリヤはそれ以上は問わない。個人的なことに、彼女は必要以上には踏み込まない。

 本当に、優秀な部下だ。彼女は。

 ―――だからこそ、なのよ。許して。

 ルフレは、今日、もう一度ここに帰ってきたときに、彼女に告げる予定のことに、押しつぶされそうだった。


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