突き放してでも
待ちに待った、再会の日。
本当は、伝えたいことが、たくさんある。
それでも、赤銅色の髪と目をした少年は、静かに目を閉じる。
黒髪、深緑の目の少女の首に、かすかに光る銀の鎖。
それを意味することを忘れたわけではない。
それでも、少年は、何かを決めて、彼女を見る。
「はじめまして。デュエル・オブスキィトです。デュエルって呼んでほしい」
できるだけ平静を装って、愛想をよくして、少女に話しかける。
心臓が激しく脈打つ。
いつのまにか、少年は下を向いていた。
少女が言葉を発するまでの間は、永遠と思われるほど、長かった。
「はじめまして。オブスキィトの人ね?ルフレ・ルミエハと言います。私もルフレでいいわ」
少女の言葉に、少年は顔をあげる。
そして、体が一気に冷えていくのを感じた。
黒髪の少女は、微笑んでいたが、その深い緑の目は、影を宿していた。
そして、少女は、一瞬にして闇に飲まれる。
「……ぃ」
赤銅色の青年は、一気に体を起こす。
「夢……」
あと五つ月が過ぎれば、十九になる。
一の月の一日。
毎年、この日は、この夢が多かった。
少女の言葉までは、すべて現実に起きたこと。
しかし、彼女の表情は、あの時怖くて見れなかったから、自分の想像にすぎないのだ。
「もうちょっとだけ……」
自分は彼女をいつまで待たせるのか。
それより、彼女は果たして自分を待っているのか。
それでも青年の思いは、あの時と変わっていなかった。




