誓い
夕日が、川を朱色に染め上げる。
―――今日もダメかな。
あの日から一週間。
ロイは毎日、オブルミの森に足を運んでいたが、レンティは一度も来ていない。
レンティのショックは、やはり相当大きかったのだろう。
あの三人が、捕えられた話は、両親からも聞かされたから、森に来ても大丈夫だと判断したのだが、レンティは、やはりこの場所に抵抗があるのだろうか。
―――帰ろう。
夕日が沈みかけるまで待って、沈みきるまでには切り上げるのが、ここ一週間の日課だった。
「―――」
帰ろうとしたロイは、かすかな音を聞いた気がして、歩みをとめる。
「ロイっ!」
今度ははっきりと、久しぶりに聞く声に、ロイは慌てて振り返る。
そこには黒髪の少女が立っていた。もともと細かった彼女だが、少しやせた気がする。
それでも、一週間前と違い、深い緑の瞳は、しっかりとロイを見てくれていた。
「レンティ……」
「ロイ……。あのね、聞いてほしいことがあるの」
「……何?」
「私、ツンベルギア、二年で卒業するわ。ロイのお父様と、お母様が、二人でいるために、卒業に三年かけたように、私は、ロイに早く会えるように……」
また、台詞を奪われた。
いつだって、ロイは情けない。
肝心なこと、彼女に先に言わせて。
「俺も、二年で卒業する。……だから、二年後に、会おう。軍の、入隊式で」
レンティの言葉をひきとるようにして、ロイは言う。
レンティがうなずくのを見て、ロイは、一歩、レンティに近づく。
「レンティに誓うよ。強くなって、レンティを守ってみせるって」
深い緑の瞳をしっかりと見つめる。
「私も、誓うわ。自分の力で、守りたいものを守れるようになるって」
レンティが、宣言したあと、彼女の首に、細い銀細工のネックレスをかける。
先端に小さなジャスパーがついている。
「これは……?」
「お守り。俺が、レンティに誓った証」
「でも……」
今にでもつきかえしそうな彼女に、ロイはもう一言付け足す。
「もし、俺が、自分の誓いを達成したら……その時、レンティが
なにかくれればいいよ。そのジャスパーのネックレスみたいに」
一方的にあげるのがだめだというならば、レンティからももらえばいい。
そして、そのためなら、より一層、がんばれるというものだ。
「……分かったわ。誓いを達成したかどうかの判断は、私がしていいのね?」
「ああ」
レンティは、ロイのあげたジャスパーのネックレスを握りしめる。
「ありがとう。嬉しかったわ」
そういって微笑む彼女は、何よりも、きれいで、守りたいと思った。
強く、強く。
これで、序章は完結です!
そして、次からが、やっとでてきたまさかの本編です(笑)
二十一話も書いてしまいましたが、
最初に出てきてまとまった構想は、この後の話なんです。
次の章では二人は十九歳になっています。
成長した二人が、何のために、どう動くのか。
あとしばらくお付き合いいただけると、嬉しい限りです。




