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光の奔走  作者: 如月あい
序章 幼き二人の絆
15/109

十一歳の二人④

流血表現があります。

苦手な方はご遠慮ください。

「離しなさいよっ!」

「おいおい嬢ちゃん、もうあきらめな? おとなしくしないとそろそろ黙らせることになるぞ?」

 賊は二人。

 レンティは、ロイが思っているよりは冷静だった。

 茶髪の女性、レイラを抑えている男と、それよりレンティ側に立っている男の二人。

 レンティは身を隠すことなく走っているが、手前の男はレンティに背を向けているし、なにより二人ともレイラに気を取られている。

「うっさいわねっ! やれるもんならやってみなさいよ! あんたたち私を売りとばす気なんでしょう! 大事な商品に傷つけて困るのはあんたたちでしょうがっ」

 レイラは意図的に、だろうが、かなり大声を出している。

 それも途切れることなく。

 レンティの足音は、それにかき消され届かない。

「ああ?よくわかってんじゃねーか。だけどな、見つかっちまったら終わりなんだよ。黙らねえなら、多少商品価値をさげるかもしれねえな」

「おい、そろそろ抑えるだけじゃなくて気を失わせたほうがいいんじゃねえのか」

「はんっ。どうせ土地勘もないくせに。あんたたち最初は道に迷ったとかいって喧嘩してたじゃないっ」

「なんだと! 黙って聞いてればっ」

 まだ、レンティには気づかれていない。

 男二人は逆上して冷静さを失っている。

 あと数秒で男にたどり着く、というところまできたところで、レンティはできるかぎり高い声で叫んだ。

「レイラお姉ちゃんに何してるのっ!」

 突如聞こえた声に、手前にいた男が振り向いて、それが子供で、しかも女だと認識し、思いっきり下品な笑みを浮かべる。

「おお。今日はなんてついてる日な―――」

 男が最後までに言い終えるまでに、レンティは服の下にあるナイフを鞘ごと掴みながら、思いっきり男に突進する。

 走ってきた勢いと、自分の全体重を乗せて、男のみぞおちに鞘のついたままのナイフを打ち込む。

「―――かはっ」

 いくら十一歳といえど、男が油断していて、まったく力をいれていなかったことと、的確に急所をねらったたことで、男はよろめいてしりもちを付いた。

 レンティ自身は、男の体が後ろに倒れる寸前に、男の太ももを自分の右足で蹴り、その反動で後ろに倒れこむ。

「このがきっ」

 レイラを拘束していた男が、レイラを離した。

 それと同時にレイラは動き、レンティがしりもちをつかせた男の顔にヒールの靴で思いっきり蹴りを入れた。

 男は川の方へ横倒しになり、意識を手放す。

 それを目の端で追いながら、レンティは、レイラを拘束していた男が、レンティにつかみかかろうと近づいた瞬間、地面の砂と石をいっぺんに男の顔面にむかって投げつけた。

「うわっ」

 そして目に砂が入って男がひるんだすきに、今度は鞘をとりはらって、男の太ももにナイフを突き刺す。

 鮮血がレンティの手を染める。

 赤、赤、赤。

 それにもひるまずレンティは一瞬で、立ち上がり、レンティの行動に驚いた様子のレイラの腕をつかむ。

「逃げようっ!」

 レイラもレンティの声に我にかえり、二人で森の奥の方、ルミエハ邸がある方へ走り出そうとした。

「おいっ何してる!」

 ―――嘘っ! 三人だったの!?

 森から、二人の前に立ちはだかるように現れた男は、剣をすでに抜いている。

 騒動を聞きつけて戻ってきたらしい。

「ちょうどよかった、そいつを捕まえてくれっ!」 

 太ももを刺された男が、安堵した様子で叫ぶ。

 レイラがレンティの腕をつかみ直し、自分の体に寄せる。

 女二人がかかっても、すでにこちらを警戒して、刃物を持っている男に勝つのは厳しい。

 冷や汗がレンティの頬を伝う。

「俺の仲間を何してくれてんだ? この餓鬼がっ」

 怒気をまき散らした男が剣を振り上げる。


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