光が堕ちた時
艶やかな赤のドレスを纏った金髪碧眼の女性は、その夜会で一際目を引いていた。
絶世の美女とはまさにこの人のことだと周囲に言わしめる美しさ。
十七歳の彼女は、ルミエハ次期後継者として、堂々とした振る舞いを見せていた。
彼女のもとへ、トレリでは珍しい、黒髪に黒い瞳の青年が歩いてくる。
彼はなかなかの美形で、女性方にそれなりの人気があった。
「ダンテ・ホーンテッド様、この度の会の参加、真に嬉しく思いますわ」
「ルイス様にそのようなお言葉を頂けるとは、光栄です」
恭しく青年は頭をさげる。
「それで、話、とは?」
「闇の家の噂をご存知ですか?」
声を低くして問うダンテに、ルイスは口の端をつりあげて頷いた。
「まだ子も生まれていないのに、オブスキィト家とヴェントス家のものとで子ども同士の婚約を発表したとか」
「その通りです。おそらくはルミエハ家が強大であることへの危惧ですが……二つの家が婚姻で結ばれるのは好ましくないと思われませんか?」
青年の目が試すように女性を伺う。
「……策があるのですか?」
「はい、私と契約しませんか?」
「契約?」
ダンテの言葉にルイスは眉をひそめた。
「私はルミエハお抱え医師の、乳兄弟でございまして」
「脅す気かしら?」
先ほどまでの威勢のよさが消え、ルイスは少し青ざめている。
しかし、ダンテは首を振る。
「私はレン・ヴェントスに私怨がございます。そして、あなたは、両家の子どもの婚姻は阻止したい」
「……契約とは?」
「婚姻です」
「私とあなたの?」
「はい。我が計画を聞いて頂ければ、納得いただけるかと」
青年は夜会の喧騒の中、流れるように語りだす。
「……なるほど」
全てを聞き終えた女性の頬は上気し、その顔には狂喜さえ窺える。
「契約を結びます」
高らかに宣言した女性は、蠱惑的な笑みを浮かべていた。
終章が遂に開幕です!
あとほんの少しだけ
光の奔走にお付き合いください!




