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三題話 年齢差、宇宙人、七並べ

作者: 一塚 樹

「今日学校の屋上で天体観測をしようと思います!」


バンと机を勢いよく叩いてそう宣言する一人の少女。

彼女、葵は幼馴染でいつもテンションが異様に高い。たとえどんな時でもテンションが異常なまでに高いので実はこいつ宇宙人なんじゃないかと疑っている。


「いつものことだけど唐突だね。機材の準備とか学校側の許可とか取ってるの?」

「機材はうちにあったはずだし、許可取らなくったってなんとくなるって。」


笑いながら言っているが、許可取らずにやって見つかったら大問題だぞ。


「まーいいんじゃない。どうにかなるって。」

「琴音さんあなた一応は生徒会長でしょう。止めてくださいよ。」

「んなの名目上だけだって。あんなめんどくさいことやってらんないっての。」


全くこの人は…まぁもともと止めるなんて期待してないけどね。ん?そういえば夕歌ちゃんの姿が見えないけど、どうしたんだろう?

きょろきょろと周りを見渡してみてもその姿は見当たらない。


「どこ行ったんだろう。」

「誰がー?」

「夕歌ちゃん。姿が見えないからさ。」

「ほんとだ、どこいったんだろ?」


葵と二人で探すがなかなか見つからない。


「あ?夕歌ならそこにいるじゃん。」


琴音さんが指をさす方向。その方向にはさっきまで葵にばしばし叩かれた机があるだけで、夕歌ちゃんの姿は見えない。


「ちげぇよ。その下、机の下だよ。」


ゆっくりと近づいて行って机の下を覗き込んでみると、そこに縮こまって一人何かをやっている夕歌ちゃんの姿があった。

相変わらずこの子は狭いとこが好きなんだな。なんか猫みたいだ。


「夕歌ちゃん。なにやってるの?」

「ん、七並べ。やる?」


ゆっくりとこっちを向いて、無表情のままで僕に向かって言ってくる。

んーまるで人形のように可愛い子なんだけどね、基本的に無表情だからほんとに人形なんじゃないかと疑っちゃうよ。


「僕はいいよ。」

「そっか…残念。」


できるだけ傷つけないように優しく言うと、ほんとに僅かな変化だが寂しそうな表情になった。

夕歌ちゃんにそんな表情をされると罪悪感がやばいことになるんだけど…いやまぁほとんど表情変わってないけどさ!


「さて、じゃあ反対意見はないみたいだし夜9時くらいにここに集合ね!」

「あのさ、ここに集合ってかなり大変だと思うんだけど。」

「フフフ。それくらいの事は軽くこなしてもらわないと、ここでは生きていくことはできないのさ。」


不敵な笑みを浮かべなんかわけのわからないことを言っている。さすが宇宙人。人類が理解できるレベルをはるかに超えている。


「失礼なこといわないで。私は宇宙人じゃないってなんども言ってるでしょ。」


うっわ、ナチュラルに心読まれたよマジ怖いんだがこの宇宙人。


「うるさい奴はほっておいて、みんなちゃんと来てね遅れたら屋上までの荷物持ちだよー」


いや、うるさい奴って僕一言も話したつもりはないのだけれども…


「ん、わかった。」

「遅れようが、遅れまいが荷物持ちなんて誰がやるかきまってんだろうがよ。」


机の下からでてきた夕歌が小さくコクリとうなずき、琴音は荷物持ちをやる気満々のようだ。


「じゃあかいさーん。また夜にねー!」


そしてみんな教室から出て行ってしまった。あれ?僕置いてけぼり?


「あおいー!置いてくなって!!」


どうせまた夜に来るんだしと鍵は閉めずにしておいて、先に行った葵を追いかけて行った。


そして夜。なんだかんだいいながら僕も着てしまった。教室までたどり着くのはなかなか大変だったがどうにかたどり着くことに成功した。

まったく家が近いんだから葵も一緒にくればいいのに、あいつ先に行ってやがったからな。


「到着しましたーっと」


そんなことをいいながら扉をあけると以外にも全員揃っていた。僕が一番最後だったのか。


「お、やっと来たか。」

「おそいよー。」

「いや、まだ時間になってないけど。」


時計の針がさしているのは8時40分ごろだ。だいぶ早く着いたほうなのではないだろうか。


「そんなことはいいんだよ。ほら一番最後にきたんだからもってけよ。」


琴音から望遠鏡やら何やらいろいろと押し付けられる。

あ、昼間言ってたのは僕に持たせるって意味でしたかー。わかってたけどね。


「落とさないようにね。」

「はいはい。」


琴音と葵が並んで先に行ってしまう。そして夕歌と言えば、相変わらずの無表情だが軽く首をかしげて。大丈夫?と瞳が告げてくる。


「大丈夫だよ。一緒に行こうか夕歌ちゃん。」


ついつい頭をなでてしまう。そうすると夕歌ちゃんは少し表情が柔らかくなる。

それにしてもこの子同い年なんだよな。身長もかなり小さいし、そうとは思えない。琴音さんと並んだりしたらかなりの年齢差があるように見えてしまうよ。


「ついたー。」


へとへとになりながら屋上までたとりついた。夕歌ちゃんが応援していてくれなかったらきっとたどり着けなかっただろう。


「なに入ってんだこれ、異様に重たいぞ。」

「ひみつー。」

「なんだよそれ。」


荷物を受け取った葵はあっという間に望遠鏡の準備を終えてしまう。その手際のよさに見とれてしまうほどだ。


「慣れてんのな。その準備。」

「まぁね。たまに家のテラスとかからみてたりもするしね。」

「好きなんか。」

「うん!」


なんか楽しそうに話してるな。

僕はいまだにへたり込んだままで、横で心配してくれている夕歌ちゃんからジュースを受け取って休んでいる。


「僕はほっといて、あっちで一緒に星みてきていいよ。」


フルフルと夕歌ちゃんは首を振る。ほんと優しいな夕歌ちゃんは。


「じゃあ一緒に行くか。」


立ち上がり、手をつないで一緒に葵と琴音さんのとこまで行く。

僕らの姿をみて琴音さんはにやにやと笑っているが、葵がなんだが寂しそうな表情をしている。

どうしたんだあいつ?あぁそうか。そうゆうことか。


「どうした葵。自分の星が恋しくなったか?」

「どうしてそうなるのよ!バカ!!!」


あれ?ちがったのか。と笑う。ぺしっと手を叩かれた。叩かれたほうを見ると怒りの色を浮かばせた瞳で夕歌ちゃんが僕を見上げている。

ちょっとからかっただけなのにそこまで起こらないでくれよ。


「冗談だって。落ちつけよ葵。」

「うっさいばか。ちかよるな。」


完全拒否モードだ。どうしたものかと困っていると、琴音さんが近づいてきてアドバイスしてあげるよ。と言ってきた。

そして、僕はふてくされて望遠鏡をのぞいてる葵に後ろから抱きつく。


「ひゃぁ!」


顔を真っ赤にして可愛らしい悲鳴を上げる。


「なななな、なにすんのよ。」

「ごめんな葵。僕が悪かった許してくれ。」


暴れだされる前にそう耳元で囁いた。

もはや湯気が出てきそうなほど赤く染まった葵はわかった!わかったから!はやくはなれて!!と言ってきた。

そこまで強く拒否されるとさすがにショックを受けるのだけども。


「な、言った通りだろ?」

「さすが琴音さんですね。けどあそこまで拒否されると僕はかなしいですよ。」

「ち、違うから!別に嫌だったわけじゃないんだよ?かと言ってそうされるのがいいってわけでもないからねっ」

「あーおーいー素直になれよー」


あー琴音さんに葵が飲みこまれていくー。まぁほっといて僕も星を眺めてみようかな。なんか助けてーみたいな声が聞こえるけどきっと幻聴だろう。


望遠鏡をのぞきこんでみるが正直よくわからない。僕はこのまま普通に星を眺めるほうが好きだな。

ごろんと寝転がり星を眺めていると何かに視界を遮られた。


「これ、飲む?」


葵がジュースを片手に僕の横に立っていた。


「うん、もらうよ。」


身体を起こしてジュースを受け取ると、葵も座って二人で星を眺めていた。


「ねぇ、また一緒に見に行こうよ。」

「そうだな。たまにはこうゆうのも悪くないな。」


正直面倒だとはおもうし、疲れるけど悪くない。


「お二人さんいいムードですね。」


突然声をかけられ振り向くとニヤニヤ顔の琴音さんとその服の裾を引っ張って止めようとしている夕歌ちゃんの姿があった。


「なっ琴音!そんなことないから!」

「あ、邪魔しちゃったね。ごめーん。」


再び二人の追いかけっこが始まった。僕はやれやれとため息をつく。


そして次の日、学校に侵入したことがばれこっぴどく叱られる4人の姿があったとかなかったとか。



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