あの星の話
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ
おまじないのようにくり返す夏の大三角。
夜空を見上げ、夏の大三角はわかっても、どれがデネブで、どれがアルタイルで、どれがベガなのか、皆目、見当も…
それでも言い続ける。
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ…
デニスがいなくなって、もう三年が経とうとしている。
デニスは、理由を言わずにいなくなった。
喧嘩をしたわけでも、予兆があったわけでもない。
「ちょっとそこまで」くらいの軽さで二人の前から姿を消して、それっきりだ。
正義ってヤツを振りかざされちゃったらしい。
そういった噂が立った。
口先だけの冷めた正義ってヤツに、打ちのめられてしまったんだ。
かわいそうなデニス。
真実は、誰にもわからない。
あの日、三人並んで芝生に寝転び、勝手に星を分け合った。
どれがデネブで、どれがアルタイルで、どれがベガなのかわかんないんなら、俺たちの名前つけちゃっても問題ねえよなあ、と言ったのはデニスだった。
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ
デニス、アストン、ベッキー
三角形の頂点がひとつ欠けたまま、夜風が、アストンとベッキーのあいだを吹き抜ける。二人が見つめる先に、けれど、求める姿はない。
しかし、名前を呼び続ける限り、あの夏に結んだ三人の星座は消えることはない。
いなくなった理由は、もういい。見上げればそこに、あいつが居る。ただそれだけで…
デニス、アストン、ベッキー
デニス、アストン、ベッキー
デニス、アストン、ベッキー
アストンとベッキーは、やがてより添うようにして家族になった。
生まれた男の子には「デミオ」と名付けた。
デニスはいない。しかし、新しい命のなかで、静かに、そして温かく、輝き続けている。三人の星座は、形を変えながら、次の世代へと受け継がれていく。
「おやすみ、デミオ。また明日、あの星の話を聞かせてあげるよ」
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ
デネブ、アルタイル、ベガ
デニス、アストン、ベッキー
デニス、アストン、ベッキー
デニス、アストン、ベッキー
デミオ、アストン、ベッキー
デミオ、アストン、ベッキー
デミオ、アストン、ベッキー




