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【完結】声優女子、恋人を救うためVRゲームにログインする  作者: BIRD


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第45話:精密機械人形

 現実世界、広瀬家の庭園。

 東家の椅子に、高校生くらいの女の子が目を閉じて座っている。

 サラサラストレートの髪は自然な栗色、色白の肌もキメ細かくて綺麗。

 睫毛が長く、ハーフっぽい顔立ちも美しく整っている。


「よしいいぞ沙希、目を開けてみな」


 その向かいに膝をついて屈んでいるのは、女の子の兄・コージさん。

 女の子はゆっくりと目を開ける。

 澄んだ紅茶色の瞳が、コージさんを見つめる。

 この日、人格コピーAIの沙希ちゃんは、精密機械人形ナノパペットの身体を手に入れた。


「わ、凄い! 元の私の身体とそっくり!」

「良かったな、沙希……」


 目を開けた沙希ちゃんは、自分の手足を見回したり、置かれた姿見に映る自分を眺めたりして驚いている。

 それを見つめるコージさんは、色んな思いが込み上げたのか目を潤ませた。


「もう、泣かないでよお兄ちゃん。私は高校生までの記憶しかないし、電脳世界に閉じ込められたことなんか知らないよ。お金持ちのオジサンに精密機械人形ナノパペットを買ってもらえてラッキー! くらいにしか思ってないんだから」

「……うん、そうだな」


 沙希ちゃんの人格コピーはジュネスに入る前の状態で、彼女は九条の家に通った記憶を持ってはいない。

 今の彼女はアイドルに憧れる普通の女の子。

 精密機械人形もアイドルになれる時代だから、そのうちどこかのプロダクションに入るかもしれないね。


 電脳犯罪の中でも、他人の身体の自由を奪う行為は殺人と同等に罪が重い。

 複数の人間の意識を電脳世界に封じて昏睡状態に陥らせた九条は、無期懲役を言い渡された。

 彼は資産家であったため、被害者または遺族には九条の資産から慰謝料が支払われている。


 沙希ちゃんに対する犯行も九条は白状しており、神崎家に多額の慰謝料が支払われた。

 その慰謝料で作られたのが生前の沙希ちゃんそっくりの精密機械人形。

 そこへ神崎家のパソコンに保存されている人格コピーAIをインストールして、沙希ちゃんは「復活」した。


「ずっと年を取らずに、若いままでいられるなんて最高じゃない!」

「兄ちゃんは、お前のその前向きな精神が羨ましいよ」


 沙希ちゃんは生身の人間ではなくなったことを嘆くどころか大喜びだ。

 コージさんも悲しみが薄れて苦笑している。


「おめでとう! これからはコージさんと一緒にここへ遊びに来れるね」

「うん! 翔太さんのお料理を食べるのが楽しみ!」


 私が言うと、沙希ちゃんは目をきらきらさせて嬉しそうに答えた。

 精密機械人形は人間と同じように食事ができて、それを活動エネルギーとして使える。

 沙希ちゃんはコージさんから聞いた翔太さんの料理に期待を膨らませていた。


「そうかそうか、それは光栄だ。お祝いに作ったケーキ食うか?」

「食べる! 美味しそう!」


 ニコニコしながら言う翔太さん。

 沙希ちゃんは即答で、東屋のテーブルに置かれたデコレーションケーキに目を輝かせる。

 デコレーションケーキにはチョコペンで『祝♥沙希ちゃん復活』って書いてあるよ。


 今日のホームパーティの主役は沙希ちゃん。

 復活祝いと称して集まったのは、いつものメンバー。

 見た目は女子高生の沙希ちゃんは飲酒できないので、私と同じウーロン茶で乾杯だ。


 切り分けてもらったケーキを、沙希ちゃんは美味しそうにパクパク食べている。

 フワフワの生地に程よい甘さの生クリーム、クリームの上には真っ赤な苺、生地の間にはクリームと黄桃のシロップ漬けが挟まれている。

 いつもながら、翔太さんのケーキは有名店に負けないくらい美味しい。


「どうだ? 美味いか?」

「美味しい! 翔太さん最高! 愛してる!」

「なんなら嫁に来てもいいぞ?」

「それは保護者の許可を得てからだな」


 微笑みながら聞く翔太さんに、ハイテンションで答える沙希ちゃん。

 冗談を言う翔太さんに、コージさんがツッコミを入れた。

 翔太さんと沙希ちゃんとコージさんのそんなやりとりが、これからの定番になりそうだね。


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