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【完結】声優女子、恋人を救うためVRゲームにログインする  作者: BIRD


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第43話:プレ鯖

 現実世界では、ケイの救出から1ヶ月後。

 九条の判決は、余罪調査が20年前までに及び、もう少しかかるみたい。

 被害者はみんな意識を奪われていたので、証言を得るのは難しかった。

 沙希ちゃんの件も遂に九条が自白したので、裁かれるときはいずれくる筈。

 被害者が既に亡くなっているから、九条の言葉と当時の主治医のカルテ以外に情報源はないのだけれど。


 VR恋愛シミュレーションゲーム【天使と珈琲を】は、予約殺到で発売日には手に入らなかった人もいるくらいに売れていた。

 出演声優たちはアニメ化に向けて収録を進めている。

 ケイも私も忙しい日々を送っていた。



「どうして通常プレイでは、こんなに時間がかかるんだ……」


 ケイがボヤきながら指輪を左手薬指に装着して、ベッドに横になる。

 指輪はもちろん、ゲームログインアイテムだ。

 私が持っている指輪とセットになっているペアリングで、メインクエストをクリアすれば、ゲーム世界の限定エリアへ一緒に行ける仕様があるんだよ。


「私のゲーム時間がチート過ぎただけだよ、普通は修行タイム以外は現実世界と時間の流れは同じだからね」


 ケイはゲーム世界にいる【息子】に会いたくて、メインクエストクリアを急いでいるよ。

 でも通常ありえない時間短縮をした私とは、クリアにかかる時間が段違いだった。

 オマケにケイは多忙で、1日にログインできる時間は少ない。

 発売前からプレイし始めて、ケイがメインクエスト中盤まで進む頃には、一般人もゲームを手にしていた。

 廃プレイヤーの中には、仕事を休んで徹夜でゲームを続ける猛者もいて、ケイよりも先にクリアする人が多かった。


(クリアするまで待ってるから、無理せず頑張ってね)


 私はケイに寄り添ってベッドに横になり、その唇にキスをした。

 ログイン中のケイに触れても反応は無いのは分かっているけれど、以前のことがあるので少し不安にもなる。

 でも主人公プレイヤーとしてゲーム世界へ向かうケイは、いつも必ずログアウトしてきてくれた。



「ヒロ、やっとクリアしたぞ!」

「おめでとう! じゃあ息子に会わせてあげるね」


 やがて、ケイは無事にメインクエストを終えた。

 ケイがクリアするまでログインせずに待っていた私は、久しぶりにゲーム世界へ向かう。

 メインクエストをクリア済の私は、この世界では天使長の妻として天界で暮らしている。


「ケイがメインクエストをクリアしたよ」

「そうか。じゃあアビーに合わせてあげなきゃね」

「うん、行ってくるね」


 私は銀髪の赤ん坊を抱いて、移動スキル【転移ワープ】を発動させる。

 フローリングの床に魔法陣が現れて、その横の空中に行き先を選択するためのウインドウが表示された。

 私が今まで行ったことがあるフィールドが、複数表示される中に、【プレ鯖】という選択肢がある。 

 プレ鯖とは「プレイヤー交流サーバー」のことで、メインクエストをクリアしたプレイヤーが行ける場所なの。

 Massively Multiplayer Online(大規模多人数同時参加型オンライン)としてのフィールドで、他プレイヤーたちに会うことができるよ。

 私はそこへ息子アベニアを連れて行き、ケイと会う約束をしていた。


「いってらっしゃい。ゆっくり楽しんでくるといいよ」


 穏やかに微笑むルウの腕の中で、水色の髪の赤ん坊がスヤスヤと眠っている。

 もう1人の息子イスポアは、水の大天使ジブリエルの転生者だ。

 彼はNPCなので、サーバーの移動はできない。

 私とアベニアが出かけるところを見せるのは可哀想なので、ルウに頼んで眠らせてもらったの。

 赤ちゃんだから、見ても分からないよってルウは言うけど。なんとなく、ね。


「お土産買ってくるからね」


 私はルウに口付けした後、イスポアの頬にキスをして言った。

 それから選択ウィンドウの【プレ鯖】をタップして、魔法陣の中央に立つ。

 身体が光に包まれた直後、私は中世ヨーロッパ風の街の中に移動した。


「ヒロ!」


 すぐに誰かに呼びかけられた。

 プレ鯖で私の名前を呼ぶとしたら、もう誰か明らかだね。


「ケイ? ……ちょっ! 容姿選択それ?!」

「どうだ? かわいいだろ?」


 振り返って見た私は吹き出してしまった。

 だって、ケイが選んだ容姿は、猫耳と尻尾が付いた獣人の少年だったから。

 黒髪・黒耳・黒尻尾、かわいいけどケイのイメージが無さ過ぎて笑える!

 私が爆笑していたら、腕の中のアベニアがキョトンとしてケイを見つめる。


「こんにちはアビー、ずっと逢いたかったよ」

「アビー、この人はね、もう1人のパパなのよ」


 ケイが黒い毛並みに覆われた両腕を差し出して微笑む。

 私はその腕に赤ん坊を抱かせてあげた。


「可愛いなぁ、子供の頃のヒロに似てる」

「ケイに拾ってもらった頃の私は、ここまでちっちゃくなかったけどね」


 ケイは我が子にメロメロだ。

 私はケイに拾われた頃を思い出して言う。

 あの日、ケイと出会っていなければ、私は今こうしてここにいなかったろう。

 雪の日に公園で泣いていた私が、凍死せずに生きていられたのはケイのおかげだ。


「いつか、現実世界でも子供ができたらいいな」

「うん。でもその前に、私はウエディングドレスが着たい」


 ゲーム世界の我が子を抱きながら、ケイが優しい笑みを浮かべる。

 現実世界でも子供ができたら嬉しい。

 でもね、私はその前にケイのお嫁さんになりたい。

 ケイとは今でも家族だけど、養父と養女じゃなくて、夫婦になりたいんだよ。

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