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【完結】声優女子、恋人を救うためVRゲームにログインする  作者: BIRD


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第36話:レアンカルナシオン

 息絶えた魔王は黒い塵と化して消え去る……

 ……筈だった。


 もう、何が起こるか予想がつかない。

 もう、私が知っている台本情報なんて参考にならない。


(……消滅……しない?)


 私は腕の中で息を引き取った魔王サキを見つめて疑問に思う。

 魔王の亡骸は消えなかった。

 満足そうに微笑んで逝った死に顔は美しく、邪悪さなんてこれっぽっちもない。


(どこか見晴らしのいい丘の上に、埋葬してあげようかな……)


 そう思いながら、もう二度と開くことのない瞼にキスをする。

 その直後、腕の中の遺体が変化し始めた。


「お、おいヒロ、何を……?」

「わ、私、何かやらかした?!」


 サキの死に黙祷を捧げていたケイが、困惑気味に問う。

 慌てる私の腕の中で、遺体は変化を続ける。


 大人の身体から、小柄で華奢な子供の身体に。

 成人女性のような顔立ちから、あどけなさの残る少女のような顔に。

 夜空より暗い漆黒の髪は、南国の海のような明るい青色に。

 地面に広がっていた血だまりや、サキと私の身体に付いた血が消えていく。


「堕天が……解除された……?」


 ファーが呆然としながら呟く。

 変身が終わり、私の腕の中でグッタリしているのは、水色の髪の子供だった。

 

「もしかして、今なら治癒の力が効くかも?」

 

 淡い期待を寄せて、私はもう一度サキと唇を重ねて治癒の力を送り込んでみた。

 仮死状態なら、光の力を注いだら蘇生できる筈だけど。

 今の彼は完全に息絶えていて、治癒の力は及ばなかった。


「サキ、闇から抜け出せたんだね」


 優しい声に振り向くと、ファーが隣に来ていた。

 ミカとウリも歩み寄ってきて、天使の姿に戻ったサキを見つめる。


「ヒロ、サキを天界へ連れて帰ろう。神様にその魂をお届けして、輪廻の流れに還してもらうんだ」

「サキは転生できるの?」


 穏やかな声で言うウリを見上げて、私は問いかけた。


【天使と珈琲を】には、転生システムというのがある。

 これはシナリオ途中で死んでしまった攻略対象の救済措置で、そのキャラの好感度と記憶がリセットされる代わりに、似た容姿の別キャラとして生まれ変わるというものだった。


「その姿に変わったということは、負の感情が消えて魂が清らかになり、生まれ変われるってことさ」


 ミカも穏やかに言う。

 生まれ変われば、サキは過去を全て忘れる。

 みんなと過ごした記憶は無くなる。

 私に関する記憶も全て消える。

 でも、今の彼にとっては、それは救いだと思う。


「じゃあ、みんなで帰るか、天界へ」

「うん」


 ケイに軽く肩を叩かれて、私は振り向いて頷く。

 私は子供になったサキを抱えて翼を広げる。

 空へ飛び立つ私に、大天使たちが続いた。



   ◇◆◇◆◇



 天界の神殿・神の間。

 きっと全て視ていたであろう神様は、サキを抱いて入ってきた私を見て優しく微笑んだ。


「勇者よ、御苦労であった。水の大天使ジブリエルは転生させる故、安心するがいい」

「はい。ありがとうございます」


 私が差し出す亡骸を受け取った神様は、愛し子を抱く聖母のような慈愛に満ちた微笑みを浮かべる。

 神様が口付けると、サキの身体は光の玉に変わり、私を慕うように周囲を何度か回った後、神様の背後に立つ大木へと吸い込まれていった。


 瑞々しい緑の葉を付けた大木の、あちこちに光が煌めいている。

 その大木の名は、生命のセフィロト

 天使たちは皆、そこから生まれる。


 輪廻転生レアンカルナシオン

 サキの転生者は、再び水の大天使として生まれてくるだろう。

 記憶は無くても、その魂に水の大天使となる役割が刻まれているから。


 サキ、どうか来世は幸せに。

 忘れられてしまうのは寂しいけれど。

 サキが苦しい思いをするくらいなら、全て忘れてくれた方がいい。

 来世では愛し合える人に出会って、幸せになってほしい。


 生命の樹を見上げて、私はそんなことを思っていた。

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