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【完結】声優女子、恋人を救うためVRゲームにログインする  作者: BIRD


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第32話:魔王城と戦闘準備

【天使と珈琲を】の魔王城は、メインシナリオ前半では魔界に存在している主不在の城だ。

 その頃は、プレイヤーは魔王城を見ることはできず、近くへ行くこともできない。


 メインシナリオ後半、各攻略対象のイベントが終わり、四天王が全て倒されると、魔王城は魔界から人界へ転移して、人界の生物を蝕む瘴気を放ち始める。

 天使軍は、魔王を倒して魔王城を破壊するために、勇者と共に出撃する。


 それがこのゲームのラスボスイベント。

 それをクリアすれば、攻略対象とのエンディングは近い。


 私がフェイオを倒した後、サキはシャイターンと名乗る魔王として姿を現した。

 同時に、人界には魔王城が現れている。

 シナリオは制作側の設定したものと異なる展開を見せたものの、確実にラスボスイベントに向かっていた。



「魔王城が人界に転移してきました」


 見回りから帰ってきた天使たちが言う。

 フェイオを倒したことで、中ボスイベントは全て完了している。

 その後に待つのは、魔王との闘いだ。


 正規ルートなら、ルウが堕天して魔王となる。

 ルウ攻略ルートなら、インビディアが魔王として登場する。

 私が進む先に待つ魔王は、そのどちらでもなかった。



(私がイレギュラーなシナリオ進行をしてしまったから、出現できないインビディアの代わりにサキが魔王にされちゃったのかな……)


 天界の皆が武器や防具の手入れをする中、私は浮かない顔で盾を磨く。

 フェイオ戦では異空間倉庫に収納したままだったから、汚れてはいないのだけどね。


「ヒロ、死なないからって無茶はするなよ」


 ポンッと頭の上に大きな手が置かれる。

 顔を上げると、ケイが傍らに座っていた。


「回復できると分かっていても、ヒロが怪我をするのは見たくない」


 反対側からも声がして、振り向くとルウが座っている。

 おかげで私は両手に花……じゃなくて、両脇にイケメン状態だよ。


「装備破壊スキルは食らわないようにね。使われる危険を感じたら逃げて」


 魔王戦に参加できないルウは、危なかったら逃げろと何度も言ってくる。

 私が一度仮死状態になって以来、ルウはすっかり心配性になってしまった。

 ケイを大天使にしたのも、自分が行けないからいざというときの救出役を任せたんだろうね。

 私としては、ケイが怪我をしないかとヒヤヒヤするのだけど。

 自分が傷つくよりも、ケイが傷つくことの方が怖い。


「敵は君が不死であることを知ってる。だから仮死状態にして幽閉しようとするかもしれない」

「俺が見張っておくから大丈夫だ」


 ルウの心配が止まらない。

 私が大丈夫って言っても、イマイチ説得力がないみたい。

 一緒に討伐戦に出るケイが言うと、ようやく落ち着いた。


「見張るのはいいけど、庇うのは絶対ダメだからね」


 私はケイの顔を見上げて念押しする。

 ケイにもしものことがあったら、世界の全てが私にとって無意味なものになる。

 私にとって最も恐ろしいのは、ケイを失うことだ。


「ケイは絶対に攻撃を受けないで。私も回避重視で頑張るから」


 私は、もう敵に捕まったりしない。

 装備破壊スキルも、当たらなければどうということはない。


 私はメインシナリオをクリアして、ルウとのエンディングを迎えて、ケイを現実世界に連れ戻す。

 一瞬、脳裏に浮かぶのは、切なく微笑むサキの顔。

 私はそれを心の奥底へ封じ込めた。



   ◇◆◇◆◇




「勇者よ、其方に聖剣を授けよう。神の代行者として、魔王を打ち滅ぼしなさい」


 天界の神殿最奥、神の間。

 私は神様から聖剣を授かった。

 天使メインのこのゲームで、神様が登場する数少ないシーンだ。


 手渡された聖剣は、魔王の命を終わらせる武器。

 柄の部分に白い羽根と金の光が描かれ、刀身は銀色に輝き、天界の文字が刻まれている。


【光は汝と共に在り】


 その剣を受け取った時に、私は覚悟を決めた。

 「シャイターン」と名乗る彼と戦う覚悟を。


 魔王化プログラムが実行されると、元の人格は失われる。

 彼はかつて天使だったことは覚えていても、友情や愛情は感じなくなっている筈。

 堕天後3度目に会ったとき、サキが私を名前ではなく「勇者」と呼んでいたのは、私を敵対者として認識したからなんだろう。



「まさかサキが魔王になっちまうとは……」


 剣の稽古を終えた後、フーッと溜息をついてミカが呟く。

 魔王討伐メンバーの1人である彼は、私と共に近接火力として戦うことになった。


「だが、堕ちてしまったのなら、戦うしかない。俺は攻撃の要だからな」

「私も覚悟はできているよ。迷っていたら勝てる相手じゃないし」

「そうだな。水の力をもつあいつには火力が落ちるが、全力で絆スキルをブッ放してくれ」

「うん」


 前衛の私たちが迷っているわけにはいかない。

 ミカも私も、魔王戦に備えて鍛錬に励んだ。



「サキはもういない。あれはサキの身体を乗っ取った悪魔だ」


 魔王シャイターンを見た後から、ファーはそう言うようになった。

 彼は後方火力として魔王討伐メンバーに加わる。


「次に会ったら迷わず弓を引くからね」


 ファーも躊躇いを捨てた。

 魔王を倒さなければ、人界もサキも救えないと彼は言う。


「魔王がサキのスキルを継承しているとしたら、盾は無意味かな」

水滴石穿すいてきせきせんを食らう前に、攻撃あるのみだね」


 盾スキルは、解除されてしまう可能性が高い。

 私はファーと共に、回避スキルや奇襲スキルの鍛錬も励んだ。



「魔王が装備解除の使い手なら、素手でも使えるスキルが必要だな」


 ウリは冷静に自分の戦い方を研究している。

 彼も魔王討伐メンバーだ。

 素手でも使えるといえば、絆スキルの【大地の波動】があるけど、ウリはそれ以外にも素手で使える身体強化系スキルを持っている。


「ヒロ、油断して脱がされるなよ」

「う、うん」


 ウリと私の間には、水滴石穿を食らって丸裸にされた経験者同士、という変な仲間意識が生まれていた。


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