表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】声優女子、恋人を救うためVRゲームにログインする  作者: BIRD


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/50

第31話:暴風のフェイオ

「四天王の出没から皆予測していたとは思うが、遂に魔王が出現した。今後は魔族との戦いに備えてほしい」


 天界の神殿。

 大広間にルウの声が響く。

 魔王の出現は魔物の増加と狂暴化に繋がる。

 魔界から魔族が出てきて、人間や天使を襲うこともある。

 他にも大気や土壌や水質の汚染、疫病の流行など、人界は深刻な状況になるの。


「それから、行方不明のサキ・ジブリエルが堕天して魔界側についたとの報告も入った。よってサキの捜索は打ち切りとする」

「サキ様……どうして……」


 天使長ルウ・シフェルは四大天使と配下の天使たちを集めて、サキの堕天と捜索打ち切りを告げた。

 サキ配下の天使たちが、悲痛な声を漏らす。

 その理由を知る私は、胸の奥にズキッとした痛みを感じる。


 これは、罪悪感なのかな?

 でも、私はサキの恋人にはなれない。


「水の大天使が持つ浄化の力は水だけでなく、水が染み込む大地や、気化した水が広がる大気も清める役割を担っていた。その力が失われた中での魔王出現は、これまで以上に人界の危機となるだろう。そのため、私は神の許可のもと、浄化の力を持つ大天使を誕生させた」

「「「?!」」」


 ルウの告知に、初耳らしい上位~下位の天使たちが目を丸くする。

 大天使たちは事前に報せを受けていたので、驚いてはいなかった。

 私も、それが誰のことか知っている。

 ルウが左手で空中に円を描くと、そこから光が生まれて人の形をとり、まるでルウの双子のような青年が現れた。


 プラチナブロンドにサファイヤブルーの瞳、細面で目鼻立ちのハッキリした美しい顔立ちに、細身の長身。

 これで髪の色が銀色なら、ルウと見分けがつかないね。


「彼はケイ・ルミエル。見ての通り私の分身であり、光の大天使として魔王討伐に参加する者だ」


 ルウは天使たちにケイを紹介した。

 天使たちは初めて会う相手だけれど、ルウの分身と言われた上にそっくりな容姿もあって、みんなすぐに存在を受け入れた。

 一方、サキ直属の部下だった天使たちは、慕っていた大天使が堕天したことを哀しみ、身を寄せ合って涙している。


「ケイにはサキに代わり、浄化の役割を担ってもらう。水の大天使ジブリエル配下であった者たちは、今後は光の大天使ルミエル配下として活動してほしい」

「……畏まりました」


 天使長から命じられた彼等は、頷くしかなかった。

 悲しそうな彼等を見て、また胸が痛む。

 彼等はいずれ魔王の姿を見て、それが誰であるか気付くよね。

 そのときの精神的ショックを和らげる術を、私は知らない。


 私の気持ちは一向に晴れない。

 晴れるわけがない。

 サキの堕天の原因が、私のせいだなんて。



   ◇◆◇◆◇



 神殿での告知の後。

 私はファーの部隊に加わり、魔物討伐に出た。


「ヒロ、魔王戦では、君がサキにとどめを刺してあげて」

「……?!」


 並んで飛翔しながら、ファーは言う。

 その言葉に驚いた私はすぐには応えられず、黙ってファーの顔を見つめた。


 ファーは私がフェイオに捕まる前に、堕天使になったサキと会話した者。

 短いやりとりの中で、何を悟ったの?

 どう答えていいか考えていた私は、発動中の危険感知スキルで自分を狙う魔法に気付いた。


 回避スキル:空蝉の術


 直後、身代わりにした魔物が竜巻に捕らえられた。

 討伐ついでに捕まえて袋に詰めておいた吸血コウモリが、竜巻の中から出られずパタパタ飛び回っている。

 回避後の私とファーが視線を向けた先には、風の四天王がいた。


「おや、気付いたか。ボクもちょっとは存在感が出てきたかな?」

「そんな何回も捕まらないよ」


 黒髪を風になびかせて、クスクス笑うのはフェイオ。

 私はまた水滴石穿すいてきせきせんを食らっては敵わないので、盾は構えず回避に備える。


「魔王陛下が君を御所望でね。来てもらわないとボクが怒られるんだよ」

「用がある時は自分で行く。あんたが怒られるかどうかなんて気にしない」


 これまでの四天王たちと違い、フェイオは大天使を殺すことよりも、私の拉致を優先しているみたいだ。

 フェイオに拉致を命じるサキは、また私に「殺してくれ」と懇願するつもりなの?

 命じられたフェイオは、魔王の本心を知らないのかな。


「大天使たちに同伴されたら困るからね。半殺しにしてでも君だけを連れて帰るよ」

「させるか!」


 まるで瞬間移動のように、瞬時にフェイオが移動する。

 フェイオが使ったのは、風スキルの【縮地】に似たスキルだね。

 しかしファーが見抜いていて、移動先に矢を放った。

 フェイオは紙一重でそれを躱す。

 その間に私はフェイオから距離をとり、スキルを発動した。


 絆スキル:大地の波動(改)


 それは、本来はウリと私、2人分の全ステータスを上昇させるスキル。

 単独で使えば、ダブル掛けとなり、上昇値は通常の2倍になる。


「そんなに避けなくてもいいのに」

「脱がされてたまるか!」

「今日は脱がせたりしないよ。攫うだけだよ」

「寄るな変態っ!」


 再び縮地で迫るフェイオ。

 私は全力で回避に徹する。

 前回とは違って、フェイオは何故か水属性スキルを使ってこない。

 私が警戒しているから使わないのか、それとも今は使えないのか。

 私はフェイオの動きを見切って躱しながら、次のスキルを発動した。

 右手の甲に、炎の紋章が浮かび上がる。


 絆スキル:浄化の炎龍(改・単体)


 煌めく光の粒子を纏う炎の龍が、フェイオに襲い掛かった。

 単体版は、範囲版よりもかなり小さく、動きが素早い。


「うぁっ! 熱っ!」


 フェイオが慌てて逃げて、服を燃やす火を叩いて消している。

 彼が直撃を避けるのは想定内。

 私は彼の縮地パターンを知っている。

 逃げた先は、次のスキルの射程内だ。


 絆スキル:光の裁き(改・単体)


「うわぁぁぁ!」


 雷の直撃を受けたフェイオが、光に飲まれながら身悶える。


【光の裁き】は、大天使となったケイとの絆スキルだ。

 本来は存在しないスキルで、その攻撃力と浄化力は【浄化の炎龍】を追い抜いて全スキル中トップとなっている。

 魔族にとって致命的なダメージとなる光属性攻撃は、四天王でも耐えられないものだった。

 純粋で強烈な光による攻撃に、フェイオの身体は白い灰となり、風に散って消え去っていく。


「失敗か。使えない奴め」


 ふいに、背後から声がする。

 私は振り返る前から、それが誰か分かっていた。


「……サキ……」

「その名をもつ天使はもういない。私は魔界の王シャイターン」


 呟くファーに、サキと呼ばれていた者は言う。

 その者は、長い黒髪と切れ長の黒い瞳をもつ青年。

 顔立ちはサキに似ているけれど、感情を捨てたように無表情だった。

 その背中には、大きな6対の黒い翼がある。


「勇者よ、戦う覚悟ができたら城まで来るがいい。私は逃げも隠れもしない」


 シャイターンと名乗る魔王はそう言うと、その場から忽然と消えた。


 サキのコアAIは、魔王として戦う覚悟をしたの?

 浄化を担う大天使として人々から慕われた過去を捨てて、人界を蝕む悪魔になるつもりなの?


 私とファーはサキの変化に戸惑いつつも、フェイオ討伐成功報告のため天界へ帰還した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ