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夜更かし先生  作者: HATI


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第39話 手に負えない

「落ち着いて、橘内さん。興奮したら体に毒よ」


 姫川がそっと橘内の身体を寝かせる。


「ごめん……」


 小さな声で謝られた。

 全く、こんな状態では怒るに怒れない。


「分かった。とりあえず今すぐ救急車は呼ばない」

「うん」


 その言葉に安心したのか、気絶するように意識を失ってしまった。

 こんな状態で止めようとしたのか。

 あの薬は確かに効果が有った。それは確かだが、結局数時間もすると元に戻ってしまったのだ。

 橘内が大量に服用したのはその所為だろう。

 少しの摂取で効果が消えるなら、大量に摂取すればいいとでも考えたか。


 普段は要領が良いくせに、バカなことをしたもんだ。

 それだけ考えが狭まっていたということだろう。


 しかしどうしたものか。

 保健体育や講習で応急処置なんかは学んだことはあるが、重病人の扱いなんて分からない。

 やはり救急車を呼んだ方が……。


「今のままじゃ不衛生だわ。これじゃあ薬の副作用とか関係なく病気になっちゃう。カズヤ君、お湯を用意して。着替えの位置は分かる? シーツも」

「あ、ああ。前来た時になんとなくは」

「じゃあとってきて。早くね」

「分かった」


 姫川に言われるまま風呂の湯沸かし器に電源を入れてお湯を用意する。

 着替えは……洗濯済みのものがまだ残っていた。

 シーツもタンスの引き出しに予備があった。

 言われた通りバケツにお湯をくんで持っていった。


「ありがと。それじゃあ橘内さんを一旦下ろして座らせたらシーツを交換して……彼女を奇麗にするから、ちょっと席を外してね。手持ち無沙汰なら洗濯してあげると良いと思う」

「お、おう」


 今回は女子がいるのでそういうのは全部任せることにした。

 シーツを抱え、脱衣所に移動する。

 副作用で辛かったのか洗濯も滞っていたようで、洗濯カゴには山のように衣類があった。

 姫川の言う通り、今やれることはない。

 とりあえずひたすら洗濯機を回すことにした。


「入ってきていいよ」


 洗濯機が二周目になったところで姫川に言われて寝室に移動する。

 橘内は小さく寝息を立てて眠っていた。

 部屋に入って最初に見たほど生気のなさはそれほど感じられない。


 とりあえず洗濯物を干す。

 いくつか部屋干しになってしまった。


「途中で一度目を覚ましたからプリンとゼリーだけ食べてもらった。あんまり食欲もないみたい」

「よくないよな。このまま家にいても良くなるとは限らないし」


 だからといって入院も嫌だという。

 無理やり入院させてもいいのだが……。


 そんな時、携帯端末に着信が入る。

 相手はリカだった。

 久しぶりだな。何の用事だろう。


 姫川に断って移動し、電話に出る。


「先生、久しぶり。連絡返せなくてごめんねー」

「久しぶり。元気そうだな」


 リカももしかして何かあったのかもと思っていたので、元気な声が聞けてホッとした。

 ただ連絡が付かなかっただけか。


「ほら、先生のおかげでサンプルが手に入ったから伝手を使ったら私も色々とやらなきゃいけなくなっちゃって」

「ジズの声明を見たよ。あんな大企業に伝手があるなんてすごいな。あれのおかげで一気に周りも落ち着いたよ」

「凄いでしょー。まあ知り合いとかいてさ」


 デパートの式典にも呼ばれていたし、親族に大企業の幹部がいるのかもしれないな。

 リカの能力もあるし、彼女の未来は安定しているだろう。

 まあリカがそれを喜ぶかは分からないが。


「私も先生の声が聞きたいし連絡したってわけ。今大丈夫だった?」

「大丈夫だ。クラスメイトの所にいるんだけど……」


 まさかスキルブーストの過剰摂取で寝込んでいるとは言えないか。

 ふと思った。病院だと色々と記録が残るが、企業ならどうにかできないかと。

 ダメで元々だ。

 リカの伝手を頼ってみよう。

 橘内が良くなるならある程度のことは受け入れる。


「なあリカ」

「なに?」


 橘内に起きたことを伝える。

 正直この状態は手に余る。

 治療系の能力があればよかったのだが、知り合いにはいない。


「出処とか分かる?」

「いや、本人が重症でとても聞ける状態じゃないんだ」

「そっか。先生のお願いなら私も無下にはできないけどなぁ」

「どうにか頼めないか?」

「うーん。まあサンプルの研究結果とかあるから普通の病院よりずっと対処もできるけど」


 気乗りしてないのは伝わってきた。


「頼む。俺の友達なんだ」

「そこまで言うなら仕方ない。その代わり貸し一つだからね」

「分かった」


 リカは引き受けてくれた。

 すぐにここにジズのスタッフが来てくれるらしい。

 ただ意識のない橘内を引き渡して終わりでは無責任だ。

 電話を終えたら姫川と共に付き添いとして一緒に行くことにした。


 一体誰が橘内にスキルブーストを渡したんだろう。

 使ったのは橘内だが、こんな過剰に使うなんて普通じゃない。

 もしかしたら薬を渡した奴がそそのかしたのかもしれない。

 とにかく今は橘内の回復が最優先だ。


 ジズのスタッフはすぐに到着する。

 担架に橘内を乗せるとバンに移動させる。

 バンにはジズのマークがあった。

 同行しても問題ないと言われ、俺たちもジズのラボへと移動した。


 素早い対応だ。

 リカが凄いのか、あるいはジズはスキルブーストに関心が高いのか。

 あるいはその両方か。


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