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夜更かし先生  作者: HATI


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第36話 看病

 学校に行って自分の席に座る。

 それから周りを観察すると、昨日までとは明らかに雰囲気が異なっていた。


 昨日まではなんというか、浮ついていてどこか皆注意散漫だったのに今は困惑している人が多い。


 原因はやはりスキルブーストの件だろう。

 架空のモノではなかった。だが、期待していたような効果はなく、後遺症まであるという。


 見つけさえすれば無条件で能力が強くなるなんて能天気なことを考える者もいただろう。

 それが現実に引き戻されたのだ。

 困惑してもおかしくない。


 まあこれは時間が解決するだろう。

 姫川の周辺には以前にも増して人が集まっていた。

 スキルブーストへの期待がそのまま姫川に対する期待へとなってしまったようだ。

 あれでは朝の挨拶も難しいな。

 姫川もさすがに苦笑しているのが見えた。


 郡衙はどうでもよさそうに外を眺めている。

 他人に頼ることを嫌うあいつのことだ。

 スキルブーストも興味がなかったのだろう。


 隣を見ると、橘内の姿がなかった。

 珍しい。学校内ではほとんど寝ているがあいつは遅刻も欠席もしない。

 HRまで結局姿を表さず、担任がき体調不良で欠席と告げた。

 ……覚えている限り初めてかもしれない。


 担任からは改めて噂に踊らされて迂闊なことはしないようにと念押しされた。

 ジズの発表を疑う者は教師にはいないだろう。そんなことをしたら明日から無職だ。


 やや騒がしいものの、その日は過ぎていった。


 今日は夜にパトロールの仕事がある。

 早めに帰宅して仮眠したいなぁと思って下校のため席を立つと担任に呼び止められた。

 なんともタイミングが悪い……。


「橘内と仲が良いだろ? これを届けてくれないか?」


 担任の用事は何枚かのプリントを届けて欲しいとのことだった。

 正直言って明日にでも登校するだろうし、その時にでも渡せばいいと思うのだが。


「橘内は今週いっぱいは出席できないみたいだ。詳しくは話さなかったが……様子を見るついでにな。頼むよ」


 本来はあんたの仕事だろと言いたかったが、教師が激務なのは知っている。

 橘内の家に行っていたら仕事次第では帰宅は真夜中になるだろうな。

 それなら仲のいいやつに押し付けたいというわけだ。


 体よく利用されているのを感じたが、あの健康優良児が今週丸々休むなんてただごとではない。

 仲のいいクラスメイトとしては放っておけないのも確かだ。


「分かりました。引き受けるのは構いませんが、住所は知りませんよ」


 引き受けると言った瞬間ホッとしてのを見逃さなかった。

 嬉々として住所を伝えられる。

 確か彼女は一人暮らしだったはずだ。

 あんまりよくないのでは? と思いつつやると言って以上はプリントを預かり教わって住所へと向かう。


 橘内の住所は学校からかなり近い場所にあった。

 徒歩でも通える距離だな。

 おそらく通学時間も睡眠に充てるために学校近辺を選んだのではないだろうか。

 橘内らしいといえばらしい。


 一応妹に見舞いで遅くなると連絡しておく。

 なるべく手短に終わらせて仮眠したい。


 途中でコンビニに寄る。

 体調不良とのことで、しかも一人暮らしだ。

 下手したら家に食べ物がない可能性もある。


 レトルトのお粥とミネラルウォーター。それからゼリーとプリンを購入した。

 妹が風邪をひいた時はいつもこれだ。

 なんだかんだで世話になってるしこれくらいは差し入れしよう。


 橘内の家に到着した。

 少し古いマンションだ。うちと似たような感じだ。

 チャイムを押して何回かノックするが、反応がない。

 携帯端末からメッセージを送ってみると、鍵が解除される音がした。


「カズヤ……?」


 わずかに開かれたドアから姿を現したのは、顔を真っ赤にしている橘内だった。

 一目で熱があるのが分かる。


「大丈夫……じゃなさそうだな。上がってもいいか?」

「え。うん、いいけど」


 歯切れが悪いものの家主の許可が出た。

 というか意識がはっきりとしてない感じがする。

 いつもはどれだけ眠そうにしていてもぼんやりとはしないのだが、今はちょっとふわふわしているようだ。


「じゃあお言葉に甘えて、お邪魔します」


 部屋に入り、靴を脱いであがる。

 玄関からはアロマの香りがした。


「腹減ってるか?」

「……ん、少し減ったかも」

「じゃあ準備するからその間寝ておけよ。ほら」


 ミネラルウォーターとゼリーを渡す。

 水分補給には持ってこいだろう。


 橘内は素直に言うことを聞くと、ふらふらとベッドに向かい座ってミネラルウォーターをちびちび飲み始めた。


 うーん、素直すぎて調子が狂うな。

 というか弱ってる橘内が普通に可愛い。

 普段は太々しい態度だが、橘内はかなりの美少女だ。ギャップもあってか戸惑ってしまう。


 レトルトのお粥を温めて皿に移す。

 風邪薬は……常備しているようだな。

 一緒に持っていこう。


 お盆に乗せて持っていくと、橘内が座ったまま寝息を立てていた。

 汗のせいでパジャマが肌に張りついている。

 これでは身体が冷えてしまうな。


 とりあえず橘内を起こす。


「食べられそうか?」

「うん……」


 返事はあるが動きがおぼつかない。

 妹の看病で慣れていることもあり、食べさせることにした。

 食欲はあるようで、スプーンでゆっくりとお粥を口元に運ぶと口にする。

 ちゃんと全部食べてくれた。


 プリンも完食し、薬をミネラルウォーターで流し込ませた。

 これでよくなるはず。


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