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夜更かし先生  作者: HATI


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第25話 リカという女

「こんな場所に隠れてたんだ。思ったより探すのに時間がかかっちゃった」

「お前はたしか……人質にいたな。何の用だ」


 咄嗟にジェスターは能力を使用し、鉄化する。

 相性のせいで磁力使いに後れを取ったが、ジェスターは自分の能力に自信を持っていた。


 鉄化はほとんどの能力を無効化することができる。

 そして鉄の拳で殴れば大抵は一発で終わりだ。

 もう一人の男はこそこそと逃げようとしたが、リカが投げつけたヒールが頭に当たり気絶する。


「手間かけさせないでー。夜更かしは乙女の敵だからさー」

「質問に答えろ。そもそもどうやってここを知った? ここはバレてない隠れ家だったはず」

「どうやってって。人海戦術。めちゃくちゃお金かかったんだから。でもあんたのせいで先生が危うく怪我するところだったじゃん。落とし前付けさせないとね」

「ガキが、俺を舐めてんのか?」


 ジェスターは大きく拳を振りかぶり、リカに向かって振り下ろす。

 リカの能力をジェスターは知らないが、どんなものでももろとも叩き潰せばいい。

 磁力使いなどそういるものではない。


 ただのサイコキネシスならば重量で押し込める。

 だが、その拳はリカへは届かなかった。


「自信満々なだけあって、便利な能力だね。自分を変化させるってだけでも珍しいのに鉄ならある程度対応力もあるってわけか。でも喧嘩を売る相手を間違えたよ」

「くそ、なんだ? 何かに阻まれているようなこの感覚は。どれだけ重くしても進まん」

「先生って本当に優しいよね。見ず知らずの親子を助けるために飛び出したんだよ? 本当にカッコよかったなぁ。録画しておけばよかった。ああして私を体の芯から熱くさせてくれるのは先生だけ」


 うっとりとした表情でリカは身体を抱きしめる。

 その様子は明らかに欲情していた。


「変態め」

「はは。犯罪者に言われたくない。そういえば私が何者かって聞いたよね。冥土の土産に教えてあげる」


 リカはバッグからバッジを取り出すと胸の部分に取り付けた。


「そのロゴは……三大企業の一つジズのものか」

「そ。私はそのCEOなんだ。親から強制されて本当にだるいから殆ど出席してないけどね。そもそも学生だし。ありえなくない? でもあの日はどうしても出席しなくちゃいけなくてさ。式典に出たらあんたらがきたってわけ」

「お前がCEOだと? お前のようなガキが三大企業のトップだというのか」

「そう。よろしくー。ちなみに私が協会にはなるべく時間を稼げっていう指示を実は出してたんだよね。ほら、ああいう状況だと先生に甘え放題だし。いい機会だからちょっと気弱な振りをしたら甲斐甲斐しく世話を焼いてくれてさ。あれはあれで良かったかも」

「道理で人質の価値に対して動きが鈍かったわけか。連絡手段は……」

「企業秘密。能力で通信妨害してたみたいだけど、それくらい突破する手段はいくらでもあるの。別に特別珍しい能力でもないしね。もしかしてあの程度で上手くいくと思ってた? ちょっと舐め過ぎかな」

「俺をどうするつもりだ」

「決まってるでしょ。壁越えをやろうとしたものは誰であっても死刑だよ。まあ先生を危ない目に合わせた時点で論外だけど」

「待て。交渉しよう。俺の背後にいる人間を知りたくはないか? 企業にとっては目の上のたんこぶだろう。悪くない情報のはずだ」


 ジェスターはあくまで冷静を装い、リカに提案を持ちかける。

 利用価値はあるはずだ、とジェスターは内心考えていた。

 最悪協会の保安部隊に鞍替えしてもいい。

 内部の情報を探るのも悪くない。


「舐めんなっていったはずだけど。考えが透けてるのが分からない?」


 リカはその提案を蹴った。

 そもそもリカの結論は決まっている。

 長々と話をしたのは、今日の火照りを冷ますためのクールダウンに過ぎない。


「私たちが本気を出せばいつでも潰せる連中のことをいちいち気にかけると思うわけ? それでも生かしてる理由はあんたらがガス抜きに丁度いいからだよ」

「ガス抜き……だと?」

「そっ。知ってる? 人間って本能的に自由になりたがる性質があるんだって。どれだけ完璧に隠蔽しても閉じ込められたことを本能で理解するらしいよ。凄いよね。一度自由を求めた人間は簡単には止まらない。都市内の人間が一斉にそうなったらとんでもないことになる。そうでしょ?」

「だから壁越えをする連中を放置しているというのか!?」

「適度にコントロールしてね。大半はたいしたことがないかあんたみたいにビジネスだったりするし。金だけ出して自分は動かない連中も多い。もし本当に実現しそうなやつが現れたら……希望通り壁の外へ連れて行ってあげるけど。下手に妨害して被害が出たらいやだし」

「壁の外には企業以外誰も出たことはないんじゃなかったのか?」

「そんなわけないじゃん。超強い能力者が本気でやろうと思えば壁を壊すことも可能なんだから。幸いビッグデータのお陰で事前に防げてるけど。外に出ていった人たちが戻ってこないのか疑問? それが答えだよ」

「企業ってのは一体何なんだ。いや、この都市は一体……」

「もっと早く壁の外なんかよりそこに疑問を持つべきだったよね。まあ、もう遅いんだけど」

「よ、よせ」


 リカの能力でジェスターの体がゆっくりとひしゃげていく。

 鉄塊が無惨にも強引に丸められていった。


「頑丈だね。さすがはレアスキル。どこまで圧縮できるかな?」


 口は既に内側になってしまいジェスターは喋れない。


「こうなったら能力を解いたら即死だね。安心しなよ。頑丈だし殺すのは止めてあげる。その代わり一生研究室送りだけど」


 手のひらサイズになったジェスターをポケットに入れると、ヒールを回収し気絶した男を無視して工場の外に出る。

 それからすぐに指示をすると、黒服の男たちが気絶した男を運び出した。


 リカは満月に向かって手を突き出す。

 そして月をその手にするかのように手を閉じた。


「ああ、先生。いつ私を欲しいって言ってくれるんだろう。いっそ私から言った方が良いのかな? ダメダメ。告白は男の人からって決まってるんだから」


 妖艶な笑顔を見ているのは満月だけだった。



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