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レッサーパンダに転生した楓

かわいいレッサーパンダ楓

その可愛さは勇者そのもの!?


「うわああああっ!!」


目が覚めると、私——もといボクはふわふわとした感触の中にいた。毛むくじゃらの手を見て驚愕する。


「な、なんだこれ……!?」


慌てて跳び起きると、背の低い草原の上で自分の姿を確認した。茶色と白の柔らかな毛皮、太くて短い足、丸い耳——


「れ、レッサーパンダ…………?」


頭の中で「ステータスオープン!」と念じると、光るウィンドウが現れた。


**名前:カエデ**

**種族:レッサーパンダ**

**職業:勇者**

**レベル:5**

**特技:聖なる威嚇・回復の葉っぱ**


「なんで勇者がレッサーパンダなのよぉぉぉ!」


頭を抱えて悲鳴を上げていると、遠くから声が聞こえた。


「おーい、勇者様ー!」


振り返ると、赤髪の女性剣士と青いローブの魔法使い、それに巨大な斧を持ったドワーフが近づいてくる。


「これが……新しい勇者?」剣士が首を傾げる。

「かわいい〜!」魔法使いが顔をほころばせる。

「まあ、見た目はどうあれ、力を確かめてみるまでわからん」ドワーフが腕を組む。


「ちょ、ちょっと待って!私は確かに『伝説の勇者』として転生したはずなのに……こんな……」


突然、地面が揺れ始め、周囲の木々がざわめきだす。巨大な影が私たちを覆った。


「うさぎだ!」ドワーフが叫ぶ。



見上げると、身長三メートルはある巨大な白うさぎが立ちはだかっていた!


「うさぎ相手に苦戦してる場合じゃないわ!」剣士が飛びかかる。「この辺り一帯が魔物化してるんだ。早く討伐しないと大変なことになる!」


ボクは震えながらも必死に記憶を掘り起こし、ゲームで学んだ「勇者スキル」を思い出す。


「そうだ、聖なる威嚇だ!」


小さな前足を頭上に掲げ威嚇のポースを取ると、全身から淡い光が溢れ出した。予想以上の効果に驚く。巨大ウサギはその場で固まり、目をまんまるにしてこちらを見つめている。


「今だ!みんな攻撃して!」


仲間たちの攻撃が始まった瞬間、ボクは尻尾を振る動作が「回復の葉っぱ」だと気づく。素早く尻尾を振ると、緑色の光の粒子が舞い上がり、パーティメンバーの傷を癒していく。


「すごい……!」魔法使いが感嘆の声を上げる。「このサイズであの能力量……本物の勇者ね!」


激しい戦いの末、巨大ウサギは倒れ込んだ。


「ありがとう、小さなお方!」剣士が跪いて敬意を示す。「あなたこそ真の勇者です!」


しかし彼女の表情には「かわいいから」という副音声が聞こえてくるようだった。


「でも……私はどうやって魔王と戦えばいいんだろう……」


そう呟いた時、

ガサッ……


後ろの茂みから不穏な音が響いた。


「まさか!」


全員が振り向くと、緑色の小鬼たちが群れを成して現れていた。


「ゴブリンだ!」剣士が剣を構える。


ギュイー!ギュイー!


十数匹のゴブリンが鋭い爪と牙を剥き出しにし、武器を振りかざしながら突進してきた。


「まずいわ!」


剣士が迎撃するも、小さな敵たちは素早い動きで翻弄する。


「くそっ……数が多いぞ!」


ドワーフも斧を振り回すが、ゴブリンたちは巧みに回避し、四方八方から襲いかかる。


「楓様!安全な場所へ!」魔法使いが叫ぶ。


だがボクは動かなかった。むしろ逆に小さな体を低く沈め、四本足で大地を掴む。


「みんな、ちょっとだけ時間を稼いで!」


焦る彼らに向かって、ボクは全力で尻尾を振り始めた。回復の葉っぱが風に乗って舞い踊る。


「これは何のつもりだ?」ドワーフが問いかける間もなく—


ひらひらと降る緑の粒子がゴブリンたちの頭上に積もると、彼らは突然動きを止めた。回復能力が彼らにも作用し、痛みを和らげてしまったのだ。


「あ……効果が出ちゃった!」


ボクが慌てる横で、ゴブリンたちは混乱していた。あるものは頭をかき、あるものは首を捻っている。


「チャンスよ!」魔法使いが詠唱を始める。


「みんな!私の『聖なる威嚇』で決めるわ!」


ボクは立ち上がり、胸を張った。そして—


「グギャーオーーン!!」


猫のような可愛らしい咆哮が森に響き渡った。次の瞬間、全身から眩い光が放たれ、ゴブリンたちを包み込む。


ギュィ!?ギュイー!!?


恐怖におののいたゴブリンたちは、我先にと逃げ出した。


「え……効いた……?」


剣士が呆然とする中、ボクは力尽きて座り込む。


「すごかったよ、小さなお方!」ドワーフが肩を叩く。


「回復→混乱→威嚇……なんて戦術だ!」


魔法使いが目を輝かせた。


「やっぱり君こそ本当の勇者だ!」剣士が笑顔を浮かべる。


小さなボディから溢れる大きな可能性を感じつつ、ボクは思う。


「この姿でも、やれることがあるんだ……」


夕日に照らされるレッサーパンダの勇者楓は、小さな背中に大きな責任を背負い、新たな冒険へと歩み出すのだった。


夜の帳が下り始めた森の中、私たち一行は焚き火を囲んでいた。


「改めて自己紹介させてくれ」ドワーフのハルバードが岩のような拳を打ち合わせる。「俺は鍛冶師のゴドフだ。山脈の向こうで生まれ育った」


「私は弓使いのリリアナ」銀髪のエルフが優雅に一礼する。「森の民として、植物を扱う魔法には少しだけ自信があるわ」


「僕は旅商人のアルフレッド」細身の青年が鞄から小さな箱を取り出した。「各地を回ってるうちに魔道具も扱うようになったんだ」


最後に残った一人、赤髪の女性が一歩前に出た。


「私は騎士団長のセレスティア・ヴァルキュリア」凛とした声が闇に溶け込む。「元王国近衛隊だったけど……今は……」


言葉を切った彼女は焚き火の炎を凝視していた。過去になにかあったのだろうか。


「さて、勇者様」アルフレッドが小箱を開けて見せてきた。「これは私の最新作『能力測定水晶』です。触れてみてください」


透明な球体を差し出されたボクは躊躇なく前足を伸ばした。すると水晶が七色に輝き、空中に文字が浮かび上がる。


**楓 (カエデ)**

**種族:レッサーパンダ**

**クラス:愛玩神獣 (Aesthetic Beast)**


「……愛玩……神獣?」


一同が固まった瞬間、さらに詳細な情報が表示された。


**固有技能**

・聖なる威嚇

 → 攻撃対象を30%確率で無害化、または魅了状態にする

・回復の葉っぱ

 → 敵味方問わず体力と精神を回復させる結界


「なんて威力だ……!」ゴドフが唸る。

「これほど強力な『癒し』を持つ生物は初めて見るわ」リリアナが息を呑む。


「でも問題は……」アルフレッドが懸念を口にする。「どうやって攻撃すればいいのか」


誰も答えられず静寂が訪れたとき、ボクは突然閃いた。


「そうだ!試したいことがあるんだけど……協力してくれる?」


翌朝、日が昇るとともに私たちは再び行動を開始した。目的地は「迷宮の谷」—かつて英雄たちが挑んだ試練の地だ。


「ここは罠が多くて危険だよ?」アルフレッドが注意を促す。

「わかっている」セレスティアが剣を抜く。「でも君の力を証明するために必要な場所だ」


石造りの通路に足を踏み入れると、早速仕掛けられた落とし穴が現れた。しかし—


「よっと!」


ボクは小さな体で器用に避け、壁の隙間に前足を掛ける。驚くべきことに、体重が軽いため罠が作動しないのだ。


「すごい……」リリアナが目を見張る。

「これならどこまでも行けるかも!」アルフレッドが興奮気味に言う。


だがその喜びも束の間、洞窟奥から不気味な音が響いてきた。


ゴロゴロ……ズシン……


「何かいるぞ!」セレスティアが身構える。

「みんな、私の後ろに隠れて!」ゴドフが巨体で盾となる。


現れたのは、巨大な二足歩行のオークだった。洞窟全体を揺るがすような声で叫ぶ。


「また……侵入者か!」


ゴブリンとは比べものにならない迫力に全員が息を呑んだ。だがボクは臆することなく前に出た。


「聖なる威嚇!」


全身から放たれる光がオークを包む。しかし効果は限定的で、巨体が少し怯んだだけで反撃に出た。


「くっ……!やはり弱い魔物にしか通用しないか……」


オークの棍棒が振り下ろされようとした瞬間—


「今だ!回復の葉っぱ!」


ボクは全身全霊で尻尾を振った。緑の粒子がオークを包み込む。


「ぐぅっ……なん……だこれは……!」


オークの筋肉が緩み、力が抜け落ちていく。そこへセレスティアが斬り込み、ゴドフの斧が止めを刺した。


「やった!」リリアナが歓声を上げる。

「まさに『戦う癒し』だな」ゴドフが満足げに笑う。


「ありがとう、みんな。だけど……」ボクはオークの残骸に近づく。「まだ終わっていない気がする」


予感は的中した。洞窟奥深くからさらなる震動が伝わり、古代の遺物と思われる祭壇が露わになった。


そこに刻まれた碑文は謎めいた警告を告げていた。


**"心優しき者よ、真の勇者となれ"

"ただし、代償を忘るべからず"**


「代償……?」

アルフレッドが不安げに呟く。


その時、祭壇の中心にある水晶が激しく輝き、異空間への扉が開かれた。漆黒の渦から漏れ出る邪悪な気配が、パーティー全員を緊張させた。


「行くしかないね」ボクは決意を固める。「どんな代償だって乗り越えてみせる!」


小さくても強い決意を胸に、レッサーパンダ勇者楓は仲間と共に未知なる闇へと足を踏み入れるのであった。

「代償はスキルを使えば使うほど可愛くなること……敵味方問わず魅了すること……?」


ボクは呆然と祭壇の刻印を見つめた。アルフレッドが恐る恐る声をかける。


「つまり……君の力が強くなればなるほど……」


「……もっと可愛くなっちゃうってこと!?」


楓の叫びが洞窟に響き渡った瞬間、床が揺れ、天井から結晶が落下してきた。


「伏せろ!」セレスティアが盾を広げる。


轟音とともに砂埃が収まると、目の前に虹色の扉が現れていた。


「これが試練の間への入口か……」ゴドフが眉を寄せる。


「どうしよう……怖いよ……」リリアナが小声で呟く。


「行くしかないよ!」ボクは決意を新たにした。「どんな姿になっても勇者だからね!」


---


扉の向こう側は幻想的な光景が広がっていた。空には七つの月が浮かび、地面は透き通る結晶で覆われている。花々からは虹色の光が滴るように零れ落ちていた。


「美しい……けど不思議な場所ね」リリアナが溜息をつく。


突然、草むらが揺れ、何かが飛び出してきた。


「ピヨピヨ!」


ピンク色の小さなドラゴンがボクに向かって飛んできた。


「かわいい~!」アルフレッドが声を上げる。


だが次の瞬間、ボクの「回復の葉っぱ」が無意識に発動し、ドラゴンの周りに緑のオーラが広がった。すると—


「わあっ!?」


ドラゴンの瞳がトロンとなり、舌を出してボクの方へ歩いてきた。


「グルルル……ピヨ〜♡」


「や、やばい……魅了状態だ!」


急いで仲間を見ると、なんと全員の目がハートマークになっている!


「楓ちゃん……最高……」ゴドフがぼそりと言う。

「守りたい……永遠に……」セレスティアが剣を落とす。

「抱きしめたい……」リリアナが頬を染める。

「撫でてあげたい……」アルフレッドが膝をつく。


「ちょっと待ってぇぇぇ!」


慌てて聖なる威嚇を使うと、仲間たちは正気に戻った。しかしスキルを使ったことで体が一層ふわふわになり、毛並みが更に艶やかになっている。


「これが代償……可愛さが増していく……」セレスティアが冷静に分析する。


その時、空間全体が暗転し、低い声が響き渡った。


《真の勇者は己を受け入れ、力を制御する者なり》


周囲の風景が歪み、巨大な水晶玉が浮かび上がった。


《試練の第一段階を開始する—汝の魅了能力を抑えよ》


水晶から黒い煙が噴出し、次々と魔物を形作っていく。巨大ネズミ、スライム、スケルトン……あらゆる種類の怪物たちが押し寄せてきた。


「来るわ!」リリアナが矢を番える。


「みんな、私が前線に出る!」ボクは決意を固めた。「でも絶対にスキルを使わない!自分で戦ってみせる!」

「無理だ!」ゴドフが遮る。「あの数だぞ!」


「それでも……」ボクは両前足を広げた。「可愛いだけじゃないって証明してみせる!」


---


魔物の群れが一斉に襲いかかる中、ボクは必死に跳ね回った。回復能力を使っていないのに、なぜか敵の攻撃はすべてスローモーションのように見える。


(なぜ……?)


次の瞬間、理解した。この小さくて軽い身体こそが最大の武器なのだ。魔物の爪や牙を紙一重で避けながら、ボクは素早く反撃する。牙を立て、引っ掻き、尻尾で打ち据える。


「すごい……」リリアナが驚嘆の声を上げる。

「あれは野生の本能か?」セレスティアが目を見張る。


しかし戦いの最中、巨大スライムの粘液が顔に飛び散った。反射的に目を閉じた瞬間、無意識に「回復の葉っぱ」が発動してしまう。


「しまった!」


緑の光がスライムを包み込み、その動きが鈍くなった。ところが同時に、ボクの体がさらに小さくなり、毛が一層柔らかく膨らんでいった。


「あぁ……可愛さが限界突破してる……」アルフレッドが目を細める。


魔物たちが一斉に魅了され、戦闘不能になった瞬間、水晶玉から拍手が響いた。


《よく頑張った。だが試練は続く》


水晶が砕け散り、中から美しい翼を持つ少女が現れた。長い銀髪をなびかせた彼女は微笑んでいる。


「私は守護者シエル」少女は両手を広げる。「汝の潜在能力を見せてくれ」


次の瞬間、空から無数の剣が降り注いできた!


「伏せろ!」セレスティアが叫ぶ。


だがボクは避けなかった。むしろ両前足を高く掲げ、全身から光を放つ。聖なる威嚇と回復の葉っぱが同時に発動し、剣の雨が途中で停止した。


「な、何……!?」シエルが驚愕の表情を浮かべる。


宙に浮かぶ剣たちは光の粒子となって消えていく。同時に、ボクの体が元に戻り、ふわふわの毛並みは健在ながらも、以前より落ち着いた印象になった。


「代償は受け入れる。でもコントロールする」ボクは真っ直ぐに守護者を見つめる。「可愛さも含めて、これが私の強さだから」


シエルの瞳に涙が光った。


「認めましょう。あなたこそ真の愛玩神獣……いや、魅了の勇者」彼女は指を鳴らした。「この試練を乗り越えた褒美に一つの贈り物を授けます」


彼女が差し出した小さな木製の笛は不思議な温もりを持っていた。


「『魅了抑制の笛』です。吹けばスキルの暴走を抑えられます。そして吹かない時は……存分にその魅力を振るうがよい」


シエルの姿が霞むように消えていくと同時に、空間が元に戻り始めた。


「帰るわよ!」セレスティアがボクを抱き上げる。

「もう離さない!」リリアナが抱きしめる。

「お疲れさま!」アルフレッドが頭を撫でる。

「立派だったぞ!」ゴドフが大きな手で撫でる。


洞窟の出口に辿り着くと、夕陽が差し込んでいた。小さくてかわいいレッサーパンダ勇者は、仲間たちに囲まれながら大きく伸びをする。


「これからも精進するぞ~!」




ご購読ありがとうございます

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