第8話 夏野、相棒キャラと化した幽霊さんと買い物に行く
「とにかく今日はもう諦めな。心配せずとも仕事くらい腐るほどあんだろ。ギルドの受付やってたあたしに任せりゃ幾らでも条件の良い仕事見つけてやんよ」
「まぁ、それは助かるけど……」
「明日からまた仕事探せ。とりあえず、あたしのボディをとっとと洗いな。今日稼いだ金でレモン石鹸を買いに行け。それから重曹も忘れんなよ」
「はーい……」
拒否権なんてないんだろうな、と俺は思って幽霊さんの要求には素直に従った。それにこれから長い付き合いになりそうだし仕方ない。
街で買い物する時、俺は幽霊さんことクマのぬいぐるみをずっと肩車していた。
通りすがりの子供には指をさされたり、大人には「男のくせに」と馬鹿にされたりもしたが、俺は気にせず街を闊歩した。
「なんかこうしてると幽霊さん、ひと昔の漫画作品とかにあるマスコットキャラみたいだよな」
「ああ、主人公やヒロインの側に常にいる相棒キャラだろ? いつも肩口に乗ってさぁ、『〇〇くん頑張るッピ⭐︎』だとか『〇〇ちゃん今のうちに変身するんだキュン⭐︎』とか言ったりするヤツ。しまいには技の解説とかし出すヤツな。わかるわかる」
雑貨店を巡りながら俺と幽霊さんは目当ての洗剤を探していた。幽霊さんはこだわりが強いらしく、気に入らないものは拒否するのだ。
「最近ではさ、よく主人公の旅について回るマスコットみたいなキャラって少ないんだよね。それにホラ、一匹狼タイプの主人公の周りを勝手にうろつく……なんて言うか鼻頭に絆創膏貼ってて『へへっ、オイラ〇〇ってんだ! よろしくな!』とか言い出す毒にも薬にもならないクソガキキャラもいないんだよね」
「なんか想像できんのが腹立つな。ああいうの単なるトラブルメーカーだろ。必ず一回は敵に捕まって主人公が助けに行く展開があるヤツな」
「そうそう、そんな感じ……っと、幽霊さんレモン石鹸あったよ。安いしこれでいいよな?」
「まぁ、いいんじゃねぇの。さっさと会計済ませて風呂浴びっぞ。お前も何かケモノくさそーだし、銭湯行けよ、銭湯。くさい男はモテねぇぞ~?」
何軒目かの雑貨店で手頃な石鹸を見つけた。幽霊さんも納得したようで、彼女は次に銭湯に行くように命令するのだった。
「幽霊さん、もしかして俺と一緒に男風呂に入るつもり?」
「あたしが男風呂に行くワケねぇーだろ。勝手に女風呂に行くっての。誰が汚ねぇ野郎どもと混浴なんかするかよ。どさくさに紛れて入ってくるから、テメェは男連中とヨロシクしてな。せいぜいカマ掘られねぇように気をつけるこったな」
やれやれ、今日稼いだ分が残り少ないというのに……。だけど、長引いたホームレス生活の疲れを癒し、明日からまた頑張ろうと気合いを入れることができるのなら、悪くない提案かもしれない。




