第7話 俺…異世界から来たって言ったら、笑う?
「まぁまぁ、うるさくしたのは謝るよ。今度は静かな曲調のを……っていうか、幽霊さんは何であんなとこにいたんだ? もともと自分の部屋だったのか?」
俺は適当に幽霊を宥め、ふとした疑問を投げかけてみた。
「いいや、自分の部屋じゃねぇよ。あそこは元々、酒場もある宿屋でな。あたしはなぁ、仕事あがりで飲みまくってたら帰れなくなってあそこに泊まったんだ。そしたらよぉ……不幸なことにな」
「(まさか、悪漢に襲われて……?)」
そんな予想をして勝手に同情の気持ちが湧いた俺だったが、幽霊さんの語る内容は違った。
「備え付けてあった目覚まし時計のアラームの音にびっくりして心臓が止まっちまった。つまり、ショック死だ」
「…………」
相当に間抜けな死因で笑いそうになったが、俺の方も似たようなものだったので黙っておいた。あんたも俺と似た者かよ。
「あたしゃ、あの製品を作った会社をゆるさねぇ。音量調節バグってんだろ。何で目覚まし時計で永眠させられなくちゃなんねぇんだよ。逆だろ」
ああ、だから「呪ってやるぅ」とか言ってたんだな、と俺はひとり納得する。
「お酒のせいで体も冷えてたんじゃねぇの?」
「酒なくして生きてられっかよ。適度に依存できるもんがある方が人生救われんだよ。お前にゃわからんだろうがな、クソガキ」
やたら口汚い幽霊さんである。
「でも、あの部屋いまは俺が使ってるんだよね。幽霊さんには悪いけど」
「ったく、しゃーねぇな。まぁ同居人いても問題ねぇか。とりあえず、あたしゃこの姿のまま過ごすから部屋に連れ戻せよ。他に居場所ねぇんだからな」
「え? 連れ帰らないとダメなの?」
「おい! まさか、置いて行くつもりじゃねぇだろな? いきなりやって来てあたしのことを追い出したままにするつもりか? いいから連れて帰れ。それから、このあたしのボディを真っ白になるまで洗濯しろ。それでチャラにしてやっからよ!」
「なんて強情な……」
幽霊さんのボディは捨てられたぬいぐるみ、そのボディは泥だらけである。確かに洗ってやった方がいいかもしれない。
「ところで、お前さぁ……この世界の人間じゃねぇだろ? どっか違うところから来たんだろ?」
「なぜわかる?」
「いやさぁ、この世界の人間には手の甲に刻印があんだろ? でも、お前にはないじゃん。それに世間知らずにもほどがあるしな。ケケ、さては異世界人ってヤツだな? たまーにいるんだよ、お前みたいなヤツがさ」
「むむっ、なんと!」
何というか洞察力か。というよりも異世界人は珍しくないのだろうか。俺みたいに勝手に連れて来られる被害者的な者が他にもいるとでも言うのだろうか。
「あたしはな、生前はギルドの受付嬢だったんだぜ? それなりに評判の良い美人だったさぁ。毎日のよーに口説かれてたし、アッシーくんやメッシーくんも何人かキープしてたくらいだからな。そりゃもうブイブイ言わせてたんだぜー?」
「(だから、言葉遣いが微妙に古いんだって……)」
「でな、お前みたいな歳若くて調子こいたガキが来る時あんだよ。決まってチートみてぇな能力持ってる生意気なツラしたガキンチョで、同年代くらいの女侍らせてヘラヘラとイキがってやがんだ。仕事柄見分けがつくようになったよ。お前もその類い……っつーより、なんか……うん、パッとしねぇなお前。なんなんだ? お前?」
「こっちが聞きてぇよ。なんで異世界に来たのに特別な力もねぇんだよ。俺が何したってんだ? もうちょっと俺に優しい甘々な設定でも良かっただろ」
「さあ、日頃の行いでも悪かったんじゃねぇの?」
幽霊さんは他人事のように言っていた。




