第42話 ダイナミックエントリー
「だぁああ! くそったれぇがぁ! 夏野! もうダメだ! そのまま行ってしまえ! あたしがフォローしてやる! ダメだったら骨ぐらい拾ってやるから心配すんな! 玉砕覚悟で突っ込めや!」
「レイさん! ちょっと不安な気持ちにさせる発言は謹んでくれ!」
椅子の影に隠れていたレイさんが俺に発破をかける。
とはいえ彼女にはポルターガイストや金縛りのチカラがある。あれでトカゲ頭の動きを止めてやればこの状態でもどうにかなるはずだ。予想しなかった事態だが、このまま行くしかない。
「ちくしょおおお!! なんとかなれー!!」
半ばヤケクソ気味になりながら俺はトカゲ頭に迫った。
「なにっ!? 乱心か!? こうなったらこの女のガキを盾に……!」
そんな俺のなりふり構わない特攻にトカゲ頭はかなり慌てた様子だった。咄嗟に腕の中にいる凛を盾にしようとした時——。
「へっ、させるかよ!! この腐れアリゲーターがよォ!!」
レイさんがトカゲ頭へと手を向けて、体の自由を奪いにかかった。
「なっ、なにぃ……!?」
そうしてトカゲ頭はレイさんのアシストである金縛りを受け、ピタリと動きを止めてしまった。トカゲ頭の全身からイヤな汗が滲み出る。
「さすがだぜ! レイさん!」
「おうよ!」
レイさんのここぞとばかりのナイスフォロー。なんて頼もしい相棒なのだろうか。トカゲ頭は絶対絶滅のピンチである。
「く、くそ……な……なんだ? 体のうごきがに、にぶいぞ。ち……ちがう。動きがにぶいのではない。う……動けんッ! ば、ばかな……」
それにしてもスター◯ラチナの時止めを喰らった時みたいなデ◯オ様のようなセリフを吐くんじゃないよ。
「どりゃああああ!!」
威勢のいいかけ声をあげ、俺は木刀を振り下ろしにかかった。
「うぉおおおお!? やめろぉおお!!」
トカゲ頭の絶叫が響く。
「ぎゃああああああああああああああああああーーッ!?」
負けじと凛の大絶叫が響く。
「やってやるゥウーーッ!!」
DX丹波凛ブレードがトカゲ頭の脳天をとらえるその間際だった。
「ちょっ、ちょっとお待ちください! どうかお引き下りを!」
外の方では何やら騒がしかった。
この乱痴気騒ぎのせいで夏野達には気付かなかったことだが、治安維持隊の連中を押しのけて店内に押し入ろうとする者がいた。
その人物は治安維持隊の者達の首根っこを掴んでは投げ、掴んでは投げて後方に退かし、最後には店の扉を蹴破って現れるのだった。
「ゥ——って、え?」
ドガンッ、と大きな物音を立てて扉が吹き飛ぶ。そのいきなりの衝撃に驚いた俺はすんでのところで動きが止まってしまった。
驚くのも無理はない。
なぜなら、そこに現れたのはマスターだったのだから。




