第39話 頼りない治安維持隊
トカゲ頭は引き続き、外にいる治安維持隊と口論をしていた。
「立てこもりをやめろー! 人質を解放しなさい! これ以上、罪を重ねるなー!」
「やかましい! テメェらが大人しく消えたら解放してやるよ!」
どうやら説得に難儀しているようだ。トカゲ頭は降伏する気がない。
「くそっ、本官では奴の説得ができそうもありません! ここは上官殿にお任せするしか……! お願いします上官殿!」
「ん? え? あ、おっ、おお……そうだな……!」
いままで拡声器片手に必死に呼びかけていた治安維持隊のひとりだったが、自分では役不足と判断し隣に立つ上官に任せることにした。
件の上官は偉そうに腕を組んでただ見ているだけだったが、急に部下から後を頼まれ、慌てた風だった。
「えーと、おい貴様……! あー、えーっと、なんていうかあれだぞ! そんなことしちゃ、ダメだろう! なんていうか、その……ダメだろう! な? みんな、困っているからな? やめた方がいいと……おじさんは、思うぞ?」
説得下手である。まるで不器用な父親が思春期の娘を叱りつけるようなたどたどしさだ。よくそんなので維持部隊に入れたものである。
「おいおい、そんなんじゃ説得できねぇよ。代われ」
と、彼の同僚らしき男が横入りすると拡声器を奪って代わりを引き受けることに。何だかコントみたいな流れである。
「たてもこ……じゃなかった。たてま……ゔゔん! おい、たてこもり犯!」
「なんだテメェ!」
「悪いがさっき噛んだせいで何を言うか忘れてしまった! 忘れてくれ!」
「しゃしゃり出んな! 引っ込んでろバカヤロー!」
見るからに治安維持隊の連中は頼りなかった。先ほどからずっとこのようにグダグダな有様である。
「うーん、なんかこのままじゃ一日経っても解放されそうにないな。どうするよ?」
「わからん。でも、取り敢えず拘束でも解いてほしいかな」
レイさんだけは縛られていないので彼女に縄を解いてもらうよう頼んだ。
「おい、貴様! 何をモゾモゾしている! ジッとしていろといっただろうが!」
トカゲ頭は俺がクネクネ体を揺らしているのを見て怒鳴りつけるのだった。
「あ、すんません。ちょっとケツが痒くて……」
「なんだと!? 貴様ぁ……さては痔だな!?」
「いや、ちが……っ! そういうわけでは……」
トカゲ頭が大声でそんなことを言うのだから周りの人質達から憐れみの眼を向けられてしまった。
「え? じゃあ、ギョウ虫……?」
「いいから人質は黙ってろよぉおおお!!」
凛はさっきまでずっと大人しかったが、ここぞとばかりに余計なことを呟いていたので俺はたまらずキレてしまった。




