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第35話 二人の死因

「ねえ、ところでさ。聞いておきたいんだけど、あんたってどうしてこの世界に来たわけ? どういう経緯?」


 運がいいことに、俺が提供しようと思っていた話題を凛の方から出された。


 凜はポテトを摘みながら何となくといった感じで話しかける。


「ああ、それはだな……」


 俺は事の経緯を凛にすべて話すことにした。別に隠すほどのことでもないし、同じ転移者である凛となら秘密を共有しておいても問題ないと思ったからだ。


 そうして、俺は凜に異世界転移の話をしたら、ヤツはおもむろに噴き出して俺のことをバカにしだすのだった。


「ぶっはっはっは! えー? タンスの角に足をぶつけたショックで死んだー? なにそれ!? めちゃくちゃダサすぎでしょ! あはははは! あー! お腹痛い! 夏野ってホントにバカね! 夏野のバカっ! うふふ!」


 といった感じでニコニコと機嫌良さそうに、そして楽しそうに凜は笑っていた。


「おいおい……ひとの死因をバカにするなよ。こっちは死んでしまってナーバスな気持ちだったんだぜ?」


「そんなマヌケな死に方するヤツ、世界中のどこを探したっていないわよ! あははは! ひー、苦し! 私を笑い死にさせるつもり? あ、ていうかもう死んでるっけ? じゃあ、カンケ―ないわね! あひゃひゃひゃひゃ!」


「…………」


 遠慮なく大声で笑う凛である。周りのお客さんから少々迷惑そうに見られ、俺はどうしようもなく肩身が狭い思いをさせられた。


「おい、打楽器女」


「『おい、打楽器女』じゃないわよ。打楽器ってなによ。私をそんな変な名前で呼ばないでよね。ふつーにみんなと同じように凛って呼びなさいよ」


「ん……そうだな」


「わかれば、よろしい」


 呼び方を訂正させられた。俺は改めて言い直す。


「なぁ、俺からも聞くけどよ。凜はどうしてこの世界に?」


「あー、それ? あんたも気になるの?」


 訊き返されることは想定していなかったのだろう。


 凜は口につけたグラスをトレーに置くと、口をもごもごとさせていた。


「こいつもショック死かな?」


 レイさんはそんなことを俺にこっそり言っていた。


「……つまらないことよ。ただの交通事故だから」


「交通事故?」


 予想が外れ、レイさんは肩を竦めていた。


「まぁ……なんていうか、ちょっとフラフラしてた。色々あって疲れてたんだと思う。私の不注意だから。誰も悪くないわよ」


「…………」


 そう告げると、凜は少しばかり元気がなさそうに俯いていた。


 話しにくいことだったのかもしれない。凜のことを想うのなら、あまり深堀りしてはならないだろう。

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