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第27話 夏野と異世界への扉

『みんなー、パパがすき焼きするからおいで、だってさ! みんなの分も用意してるみたい!』


 電話を終えたセツナはスマホをポケットにしまいながらケセランパサラン天使どもにそう呼びかけていた。


『すき焼き!? マジか!? いくいく!! すぐに行くぜぇ!!』


『おや……すき焼きとは豪勢な。ご厚意に甘えてお邪魔させていただきましょうか』


『わぁ……嬉しい』


『ゼロファイブ、A5ランクのお肉がいーい!』


 一気に賑やかになる一同達。


『こうしちゃいられないね! じゃあ解散、ってことで! みんなー、お疲れさまー!』


 セツナは両手をパンパン、と叩いてケセランパサランどもを真っ白な部屋から続々と退出させていった。何処に通じてるのかわからない部屋の出入口からひとりひとりと出て行く。


『おーい、ゼロワン姉様もはやく起きろよー。置いて行くぞー』


『……うぅん? あ、終わったんだ……長かったね』


 未だハンモックに揺られていた『01』はアイマスクをずらして部屋の状況を見る。寝ぼけた顔のまま立ち上がると、のそのそと妹達がいる方へと向かっていった。


『あ……おい、ちょっ、ちょっと待って……!』


 俺は皆が出て行くのを見て焦った。


『ごめんねー。ママ達を待たせるわけにはいかないから取り敢えずお開きでいいかな? 夏野くん、そこの扉を出たら異世界に通じるから後は何とかがんばってね。適当な時にまた様子見にいくから~』


『は? お……おい! あんた……女神なんだろ? 俺のスキルは?』


『また今度になるかな。何がいいかもわからないし。取り敢えず先に夏野くんだけを転移させておくね』


 セツナは両手を合わせて申し訳なさそうにしていた。


『そんな身勝手な……』


『大丈夫、私の知り合いの近くに転移させておくから。それに、あなたより先にあの世界に行ってるひとがいるからその人達に会えば何とかなるよ。というか、会ってもらわないと困るワケだし……二人で協力すれば問題ないと思う! だから心配いらないよ! ……たぶん!』


『…………』


 俺はあまりにも無計画で根拠のないセツナの発言に閉口した。


 こんなにも適当な女神様がいていいのか……。


『とゆーわけで! 二度目の人生がんばってね! それじゃあ、レッツゴー!』


『ちょ……おおい! お願いだから待ってくれ……まだ話が……ていうか、こいつメチャクチャ力強ぇえ!! ほんとに何モンだよ!?』


 俺は扉前までセツナに背中を押される。もちろん必死に抵抗したが、女の子にあるまじきゴリラじみた力の前には成す術もなかった。


『くっそぉお! 諦めてたまるかぁ! スキルを手にするまではぁ!』


 俺はあっという間に扉の中に押し込まれる。ブラックホールのような渦に吸い込まれんと縁にしがみついて抗った。スキルを手にするまでは異世界なんかに行く気はない。


 二度目の人生を薔薇色に飾るにはスキルなしでは有り得ないのだ。


『はい、今度はタンスに足をぶつけたらダメだよ。これ、夏野くんの玄関にあったクロックス持ってきたから渡しておくね。足元注意だよ』


『あ、どうも』

 

 俺はセツナから普段から愛用しているクロックスを手渡され、思わず扉の縁から手を離してしまった。


『しまっ……!』


 我ながら馬鹿としか言いようがないが、不注意により渦に吸い込まれてしまった。


『バイバーイ!』


 そうして俺が最後に見たのは、にこやかに手を振って笑うセツナだった。

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