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第19話 デッドエンド夏野

 あの日は祝日で学校が休みだった。


 俺は休日ということで当然の如く昼まで惰眠を貪っていた。昨晩はゲームをして夜更かししていたから、寝起きはかなりボーッとしていたことだろう。


『あっ、ヤッベ。もう昼前じゃん。腹減ったなぁ~』


 俺はとりあえずご飯でも食べに行こうと起き上がった。


『食卓になんか食えるものあるかな。親父もお袋も祝日だってのに仕事かぁ。でもま、おかげで今日は一日中ダラダラしてても文句言われねぇな』


 寝巻き代わりのジャージ姿のまま、あくびを噛み締め、部屋をのそのそ歩いていたら不幸にもタンスの角に小指をぶつけてしまった。


 そして、体全身に衝撃が走る。まるで電流を流されたみたいに。


 屋内でも土足で過ごすアメリカンスタイルの日常だったならこうはならなかっただろう。だが、ここは日本。俺の足の小指は靴に守られていない。


『あぎぃええええ!!』


 俺はあまりの痛みに絞め殺された怪鳥のような叫びをあげながら絶命した。それが俺の断末魔の叫び。そして、世にも情けない死因である。


 思い出すだけでも泣けてくる話だ。


 もちろん、情けないという理由でだが。


『うっそ……俺、死んだ……? こんなことで?』


 俺の肉体と魂は分離したらしい。


 幽体離脱というヤツだろう。自分の姿を魂の視点から見ることができていた。情けなく白眼を剥いて横たわる俺。なんと間抜けなツラをしていることか。


『ああ、俺はこのまま幽霊として過ごすんだろうなぁ。どう足掻いても肉体に魂が戻らねぇし、完全に終わった……。儚くも短い生涯だったなぁ……』


 横たわる間抜けな死体の側で三角座りする霊体の俺。


 母親はパートに、父親は会社に行っている。ここにいるのは俺だけだ。助けを求めても今更では無駄だろうが、何となく心細いものである。


『まぁ、でも大きな未練があるわけでもないし、振り返れば平凡なりにも幸せだったよなぁ。親父とお袋の顔見たらさっさと成仏でもして——』


『ちょっと待ったあ!!』


 そうしてあるがまま自分の運命を受け入れようとしていたら、唐突に声が聞こえ、後ろから誰かに襟首を掴まれたのだ。


『は? 誰? って、うぉおおおお!?』


 どうやら、俺の背後に知らずうちに不思議な扉が、まぁ『どこ◯もドア』みたいなものが現れていたらしい。異空間に繋がるその扉の先から腕が伸び、力任せに霊体の俺を中へと引きずりこむ。


 腕の主はやたら力が強くて抵抗のしようがなかった。


 俺は成す術もなく、そいつに異空間へと連れ込まれてしまったのだ。


 そう、女神の手によって……。

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